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スタートアップと大企業が組んだ
オープンネイルの“確信”

この記事の要点は…
ネイルチップをモノづくりとして考える

大企業とスタートアップ企業がタッグを組む

事業化を見据えた実証実験が間もなくスタート

爪にフィットする付け心地の良さをアピールポイントに、顧客ごとの爪の形状に合ったチップをカスタムフィットさせる仕組み。それが「オープンネイル」だ。開発から事業化までは、東芝の社内ベンチャー支援制度「Toshiba Startup」を利用して進められてきた。現在はスタートアップ企業の株式会社ミチをパートナーとして実証実験を控える。本格的な商用化に向けてゆっくりと、しかし着実に歩を進めている。大企業とスタートアップ企業が組み、フットワーク軽く進めていくことのメリットとは。

オープンネイルをめぐる対談の後編では、メンバーが現在進行形のプロジェクトを語り合い、指先のチップから始まるオープンイノベーションを活写する。(前編はこちら)

「オープンネイル」で作成したネイルチップ。

「オープンネイル」で作成したネイルチップ。

ものづくりの原点を確かめながらプロジェクトは進む

――前編では「オープンネイル」の革新性、可能性に話が広がりました。後編では事業面のトピックを語り合っていただきましょう。

そもそも、電機メーカーがなぜネイルチップを手掛けることになったのでしょうか。

東芝 千木良康子氏(以下 千木良) 私たちが考える「オープンネイル」はファッション的な装飾アイテムにとどまりません。新しい概念のプロダクトであり、それをユーザーに届ける仕組みです。

東芝 インダストリアルICTソリューション社 中村恭子氏(以下 中村) そうですね。社内でプロジェクトについて語っていると、製造業としての東芝の強みが生かせる切り口に出会うことが多いです。

オープンネイルの仕組みを考えるうえではチップの品質管理や原価のコントロール、3Dプリンターなどハード独特の知見が必要とされてくる。プロジェクトに参加していて、モノづくりだとあらためて感じます。

千木良さんはデザインセンター時代からこのアイデアを温めていたんですね。

千木良 たしかに、原点はそこかもしれませんね。私はデザインセンターでアイロンやオーディオプレーヤーなど、ハードのデザインを担当していました。

その後モノが売れない時代に突入し、仕事内容も新事業・新商品のアイデア出しなど、コンセプトワークに移っていきました。でもデザイナーという職種の枠にとどまったまま提案するだけでは、何度やっても商品にはならなかった。フラストレーションが限界に達し、世の中に新しいプロダクトを出すために、自分自身が一つのアイデアに最後まで寄り添おうという決意に行き着いたんです。

東芝 技術統括部 技術企画室 主務 千木良康子氏

東芝 技術統括部 技術企画室 主務 千木良康子氏

東芝 デザインセンター 寺岡佳子氏(以下 寺岡) 千木良さんがデザインセンターから現在の部署に移った後、このオープンネイルのアイデアを持ち掛けられました。

そこで、もう一人のデザイナーと3人でコンセプトを作り、役割を分担してやってきたという経緯があります。ミチ・中崎さんにもスパイのようにアプローチをかけて……。

株式会社ミチ 代表取締役社長 中崎瞬氏(以下 中崎) ああ、最初は僕が雑貨量販店でやっていたワークショップにこっそりいらしてたんですよね。その後、問い合わせ窓口に千木良さんからのメールが届いて、お会いすることになりましたっけ。

だけど……覚えてます? 僕が「稟議を通してくれるなら、頑張りますけど」と言ったこと。お声掛けをいただいて会議に参加しながら、僕は東芝がネイルチップに取り組むというのが、どうしても信じられなかったから。

そうしたら、時間はかかったけれど本当に稟議を通してくれた。千木良さんの本気を感じて、オープンネイルに本腰を入れていきました。

千木良 やっぱり最初は相当半信半疑だったんですね。・・それはそうですよね。

少し違う角度ですが似たような苦い経験があるんです。私が出張で海外のスタートアップ企業が集まるイベントに参加した時の話です。胸を張ってプレゼンテーションをするスタートアップの姿に触発されて、私も会場にいらしていた著名な方にオープンネイルのアイデアを話して意見を伺おうとしたんです。そしたら逆に怒られたことがあって。

中村 怒られた? どうしてですか。

千木良 ええ、「大手企業は自分たちからは何も出さないのに、一方的に情報を取りに来る」と言われました。思いつきレベルのアイデアだけじゃ価値がない、ということを感じましたね。

悔しくて早く行動しなきゃ、と思って。社内ベンチャー支援制度「Toshiba Startup」に応募したのは、その出張の帰国後です。ミチさんには、試作品を持ってアプローチしましたから信用していただけた感触はありましたね。

中崎 なるほど。僕が参加したのは千木良さんの「本気を感じたから」と言いましたが、確かにその時点で「オープンネイル」のプロトタイプはありました。アイデアだけじゃない、モノを作って走り出しているところに惹かれたのも事実です。

中村 私も、千木良さんから初めてプロジェクトの話を聞いた時、社内公募から事業化を目指す熱意に心を打たれました。同期の女性がこれだけ頑張っているんだから、営業としてぜひ参画したいと思ったんです。

東芝 インダストリアルICTソリューション社 商品統括部 パートナー営業部 営業第二担当 中村恭子氏

東芝 インダストリアルICTソリューション社 商品統括部 パートナー営業部 営業第二担当 中村恭子氏

>次ページ事業化に向けた実証実験の先に見えるもの

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