乗り物は水素で動かす時代へ そのメリットと可能性とは

2017/05/10 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • CO2を排出しない水素が、次世代の燃料として期待を集めている
  • 飛行機やバスでも実証実験を展開中
  • 水素を用いた燃料電池による新たな交通網が確立される可能性も
乗り物は水素で動かす時代へ そのメリットと可能性とは

燃料としてさまざまな可能性が期待される水素。例えば2014年にトヨタ自動車が、量産型としては世界初となるセダン型FCV(燃料電池自動車)、『MIRAI』をリリースしたことは、誰しも記憶に新しいのではないだろうか。

 

水素燃料を用いるメリットのひとつは、水素と酸素の化学反応によって発電してモーターを回す仕組みであるため、走行時にCO2を排出しないこと。排出するのはガスではなく、水素と酸素が結び付いて発生する水だけなのだ。また、エンジンを搭載しないため、駆動音が静かである点も見逃せない。

 

まだまだ、補給スポットである水素ステーションのインフラ整備が課題として残るものの、それらの特性から、水素を用いた燃料電池はさらなる活用が期待されている。

水素で動く乗り物のさらなる可能性

燃料電池での駆動を目指すのは車ばかりではない。ボーイング社ではここ数年、水素で飛行機を飛ばす研究が盛んであるし、日本でも経済産業省がIHIに航空機用燃料電池システムの開発を委託したニュースがあった。

 

また、オランダ・ライデン大学ホイヘンス研究所のジョー・ヘルマンス教授も、「輸送機関に用いる燃料として、液体水素こそが最適である」と、燃料電池で飛ぶ飛行機に関する論文を発表している。ヘルマンス教授によれば、液体水素はそれ自体が軽量であるため飛行機にうってつけであり、同量のガソリンと比較した際、実に4倍ものエネルギーを取り出すことができるという。

 

さらに、我々にとってより身近な交通インフラでは、東京駅と東京ビッグサイトを結ぶ都バスに、燃料電池バスがすでに導入されている。現在、同区間で2台が稼働しており、需要増が見込まれる2020年には100台に増やしたいというのが都交通局の方針だ。

 

この他、JR東日本では2020年以降をめどに、燃料電池車両の実現を目指して研究開発を進めているし、今春には初の燃料電池スクーターがナンバープレートを取得し、公道での走行を開始したばかり。変わったところでは、福岡県のトヨタ工場では燃料電池フォークリフトの運用も始まるなど、水素燃料は急ピッチで活用の幅を広げている。

燃料電池の普及を国策が後押し

ただし、いずれも課題となるのは、従来型と比べて乗り物の建造費が数倍に膨れ上がることと、補給ポイントの整備の問題である。発電装置のさらなる小型軽量化も急務だ。しかし逆に言えば、少なくとも燃料電池を用いた乗り物は、課題が明確に特定できるところまで到達したとも言える。

 

こうした“成果”を受けて、国土交通省では2017年度末までに、新たに燃料電池船の安全ガイドライン策定に取り組む方針を掲げている。

 

こうした燃料電池によるエネルギーのリレーが実現すれば、いよいよ化石燃料への依存は低くなるだろう。数年後には世界に先駆け、日本の交通網は大きく刷新されているかもしれない。

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