202X年のロボットが夢見る ヒトと機械がつながる社会

2017/10/11 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 「Connected Industries」×ロボットの可能性
  • 羽田空港で行われた「ロボットのある日常」の実験とは?
  • 今そこにある「ロボットバリアフリー」という課題
202X年のロボットが夢見る ヒトと機械がつながる社会

政府が推し進める「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」。これは、さまざまなつながりが新たな付加価値を創り出す未来の産業社会のあり方を指している。

 

「Connected Industries」において、政府は今後強化すべき課題として「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ、素材」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」の5つの分野を挙げている。本サイトでもすでに「バイオ」について取り上げているため、ご覧になった方もいるだろう。今回取り上げるのは、「ロボット」。政府戦略によると、日本がグローバルな競争で勝ち抜いていくためには、「ロボットのある日常」の実現が欠かせないという。

 

『鉄腕アトム』、『ドラえもん』――これまで人々はアニメや漫画を通して、さまざまな「ロボットのある日常」の姿を想像してきた。それでは、来るべきロボット社会とは、一体どのようなものなのか。まずは、羽田空港の実証実験から「ロボットのある日常」を展望してみよう。

ロボット大国の玄関口でロボットの未来が見える!

ロボットが身近な存在として活躍する社会を目指し、さまざまな取り組みが行われている。そのモデルケースが、羽田空港で行われたサービスロボット導入実証実験。これは平成28年度ロボット導入実証事業の一つとして行われたものだ。

 

羽田空港の「Haneda Robotics Lab」

羽田空港の「Haneda Robotics Lab」
出典:ロボット王国、社会課題の解決策を世界に発信(経済産業省-METI Journal)

この実験でフィーチャーされたのが床掃除ロボット。空港スペース内を自ら動き回って掃除をしつつ、「掃除中です、前を空けてもらえませんか」と注意喚起するなど、コンスタントな清掃性能に加え、インバウンド向けの話題としても注目された。まさに、ロボット大国日本の玄関口ならではのプレゼンスを示したといえるだろう。

 

こうしたロボットを活用する背景には、もちろん少子高齢化による労働力不足もある。だが、「Connected Industries」がロボットに期待するのは、単なる労働力不足だけでなく、「+α」だ。そこに、実はこの実証実験の真の意味がある。それはいったい何なのか。「ロボットのある日常」の姿をさらに深く追求していこう。

キーワードは「ロボットバリアフリー」!? 生活の中のロボは進化する!

生活シーンの機器、サービスで無数のセンサーが稼働し、ビッグデータが集積されていくIoT時代。今後、実社会のデータをめぐる獲得競争はさらに激化し、世界中で、さまざまな物にセンサーを紐づけ、そこから得られるデータを取得する仕組みを確立していくことが予想されている。

 

そこで中核となっていくのがロボットだ。ロボットは、機械やソフトウェアではあるが、人のように柔軟に動作ができる点で、日常に溶け込みやすい。日常に寄り添うロボットは私たちの暮らし、ビジネスにまつわるあらゆるデータを集積していくことになるだろう。

 

ロボットが獲得する膨大なデータが新たな機器や情報ともつながっていく。創出される新たな付加価値は計り知れない。これこそ、「Connected Industries」が見据えるロボット社会だ。

ロボットバリアフリー

しかし、「ロボットのある日常」を実現するためには、乗り越えなければならないハードルもある。その一つが「ロボットバリアフリー」の実現だ。一般的に「バリアフリー」と聞くと移動の妨げとなる障害物のない状態をイメージするかもしれない。

 

しかし、ここでいう「ロボットバリアフリー」とは、日常的に人とロボットが共存共栄できる社会に向けて制度やルールなどを整備することをいう。そのハードルの向こうに、誰もがロボットを容易に活用できる状況「Easy to use」の実現がある。そこでは、産業用ロボットに代表されるような無骨なハードではなく、老若男女が誰でも親しみやすいフォルム、インターフェースも求められるだろう。

 

また、「ロボット」の再定義も重要な課題だ。現在、ロボットのイメージがある一定のものに固定化される傾向にあるが、「ロボット」の定義をフレキシブルに変えていかないと、グローバルな競争に勝ち抜いていけない。

 

今後、センサー、AIなどの技術進歩により、自動車や家電、スマートフォン、住居そのものなど、これまで定義されていなかったものまで「ロボット」と位置づけられるようになるだろう。生活機器、インフラすべてのロボット化は、「ロボット大国」の究極の形と言えるかもしれない。

 

さらに、産業用に続いて汎用ロボットでもロボット大国としてプレゼンスを発揮するためには、グローバルを見据えたプラットフォーム整備も欠かせない。日本のICTや製造業、サービスが陥りがちな「ガラパゴス化」を回避しなければ、ロボット大国としての先は望めないからだ。

 

政府はロボット産業を育成していく中、企業の枠を越えたロボットOSやミドルウェアの標準化を推し進めている。「ロボット革命イニシアティブ協議会」を中心として、情報収集や発信を行い、標準化の旗を振っていく。

 

このようなビジョン、戦略のもと、私たちの生活に溶け込んでいくロボットは、さまざまなモノ、データをつなぐIoT社会において重要な位置を占めていくだろう。そこにあるのは、人とロボットが対立するのではなく、協調を続ける未来――マンガやアニメで夢見た社会は、より自然な姿で、私たちの前に訪れるに違いない。

 

※鉄腕アトムは株式会社手塚プロダクションの登録商標または商標です。
※ドラえもんは株式会社小学館集英社プロダクションの登録商標または商標です。

 

ロボット革命イニシアティブ協議会
https://www.jmfrri.gr.jp/content/files/Open/2017/20170619_WGreport/WG3.pdf

関連サイト

※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。

https://meti-journal.jp/p/26/

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