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川にホタルが帰ってきた―― 5年間の知られざる環境活動とは


川にホタルが帰ってきた―― 5年間の知られざる環境活動とは

この記事の要点は…

川にホタルを呼び戻す環境保全活動を大分で実施

半導体製造工場が「きれいな水」を追求する理由とは?

地域住民と共に歩んでいくために

「昔は、この川にもホタルがいたものだけど……」

地元の方がふと漏らした言葉から、すべてが始まった。舞台は大分県。九州の名山・祖母山を源流とする大野川をはじめ、北鼻川や乙津川など多くの清流が流れるのどかな一帯だ。しかし、昨今は宅地化、工業化が進行。住民に親しまれてきた北鼻川流域でも、なかなかホタルの光が見られなくなっていたという。

川の環境を地道に整えていけば、ホタルはまた乱舞してくれるはずだ。東芝グループで半導体製造を手掛けている株式会社ジャパンセミコンダクター 大分事業所(大分県大分市)の環境保全担当のメンバーは、そんな思いから地域住民の方々と連携し、地道な活動を続けてきた。5年にわたった「北鼻川にホタルを呼び戻そう」運動の軌跡を追う。

北鼻川に舞うホタル(左奥はジャパンセミコンダクター大分事業所)

北鼻川に舞うホタル(左奥はジャパンセミコンダクター大分事業所)

ホタルが帰ってくる川へ! 大分事業所の取り組みが始動

まずは時計の針を2010年に戻そう。大分事業所が地域と共に取り組む「生物多様性活動」の一環として、北鼻川にホタルを呼び戻す活動がスタートした。

大分県中央部には、祖母山や阿蘇山を源流とし、多くの湧水群や大小の滝が多様な生物を育んできた大野川が流れている。豊かな自然、そして住民の穏やかな暮らしは、いつも清らかな川と共にあった。活動に携わってきた施設管理部 環境保全担当・丸小野美江氏が語る。

「私たちは『水と緑の街づくり』をテーマに、希少な動植物の保護活動を続けてきました。2009年には、準絶滅危惧種のフジバカマを育てて地域や従業員に配布しています。この活動を進める中、この大分事業所がある松岡地区の環境カウンセラー・須股博信先生にお話を伺う機会がありました。

そこで、以前は北鼻川にも多くのホタルが舞っていたことを知ったのです。この事業所は排水を北鼻川に放流しています。川と密接に暮らしてきた地域の方々と共に歩んでいくためには、『川』でコミュニケーションしていくことが欠かせません。だったら、ホタルを川に呼び戻そう。そして、以前の北鼻川で見られたという乱舞を、地域の方々と一緒に見たい――そう考えたのです」

株式会社ジャパンセミコンダクター 大分事業所 施設管理部 環境保全担当 丸小野美江氏

株式会社ジャパンセミコンダクター 大分事業所 施設管理部 環境保全担当 丸小野美江氏

川にホタルを放流すべく、まずはホタルの養殖を検討。実績のある小学校に相談し、ホタル育成のシステムを整備した。

「幼虫をたくさん放せば、川にホタルがすぐ戻ってくると考えていました」(丸小野氏)

だが、プロジェクトはスムーズには進まなかった。専門家のアドバイスを受けたところ、ホタルが成育する条件は「幼虫のエサとなる貝のカワニナが豊富にいること(1㎡あたり100匹)」「明かりがない」「水の流れがある」の3つ。この環境が整わなければ、ホタルは川には帰ってこないのだ。

上流まで遡ってようやくホタルの姿を確認し、ホタル養殖に実績がある施設、専門家へのヒアリングも重ねた。しかし、事業所付近を流れる北鼻川中流域にホタルを呼び戻すための一手はなかなか見えない。

環境保全担当のメンバーは川に入り、水質調査を行い、ホタルが成育できる環境かどうかをリサーチした。しかし、北鼻川にはカワニナの姿はほぼ見られない。鯉が大量に増殖し、カワニナを捕食してしまっているからだ。

担当者や専門家による現地調査

担当者や専門家による現地調査

「この活動はもう断念するしかないのかも……途方に暮れていた頃、頼もしいパートナーが現れました。それが地域自治会の皆さんです。私たちの活動に賛同し、現地確認や清掃、そしてホタルの定点観測を手伝ってくれることになったのです。大分県の土木事務所、大分市からも活動にご理解をいただき、地域・行政と足並みを揃えて進んでいける! そんな手応えがあったのです

地域自治会や県の土木事務所に相談

地域自治会や県の土木事務所に相談

メンバーの取り組みも、ホタルの養殖・放流からカワニナの養殖・放流にフォーカス。川の生態系を整えれば、必ずホタルは帰ってくる。そんな確信がメンバーの中に生まれていた。

カワニナを事業所内で育成し、放流。地元自治会は毎晩ホタルの姿を探し、定点観測を実施。コツコツと続けた地道な活動に、いつしか賛同者も現れた。カワニナを育成してくれる近隣の企業が続出し、地域住民の方々と共に進める清掃活動も活発になった。

定点観測のレポートに記されるホタル観測数が次第に増え、メンバーも手応えを感じていく。

自治会で調査したホタルの定点観測レポート

自治会で調査したホタルの定点観測レポート

そして、2015年――北鼻川の中流にホタルが舞った。

「2015年の、最初のホタル観賞会の感動は忘れられません。地域の方々、そして従業員の家族と少し上流の方まで歩いていったところ、ホタルがふわ~っと舞って、こっちにやってきたのです。ホタルは手に乗るとじっと止まって動かなくなります。ほの青い光を手元で見て、笑顔になる子どもたち――この活動を続けてきてよかった、と心から思えた瞬間でした」

ホタル鑑賞会の様子

ホタル鑑賞会の様子

> 半導体製造工場が「きれいな水」を追求する理由

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