EVや産業用ロボットを支える理想のキーデバイス実現のために。 ~顧客と設計・開発を結び、新しい未来を始動させる。~理念ストーリー We are Toshiba~

2023/10/26 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 市場のニーズを汲み取り、技術をかたちにするのが「応用技術職」の醍醐味
  • 「簡単にNOと言わない」信条で顧客とコミュニケーションし、設計・開発につなぐ
  • EVや産業用機器の信頼性を支えるデバイスを手がける
EVや産業用ロボットを支える理想のキーデバイス実現のために。 ~顧客と設計・開発を結び、新しい未来を始動させる。~理念ストーリー We are Toshiba~

市場の動向を注視しつつ、顧客のニーズを汲み取る。社会に求められる製品を企画し、設計・開発部門との連携で具現化する。製品に対する顧客の評価を次なる製品開発に生かしていく。一連の業務をワンストップで担うのが、「応用技術」チームだ。

 

東芝デバイス&ストレージの応用技術部門で業務に邁進する冷 可(れん か)氏は、技術者として「フォトカプラー」「デジタルアイソレーター」に携わる。後ほど詳細に紹介するこれらのデバイスは、100年に一度の変革期と言われる自動車や、工場の自動化で存在感を増す産業用ロボットに信頼性を持たせる重要な部品であり、社会を支えている。

 

東芝グループの理念を現場で体現する従業員たちを追う理念ストーリーシリーズ。顧客のニーズを探って設計・開発部門とコミュニケーションし、製品の最適解を求める冷 可氏に迫る。応用技術という領域から始動する、キーデバイスの未来とは。

技術とコミュニケーションの両輪を走らせたい

中国の大学でプログラミングやソフトウェア開発を研究し、学びを深めるために日本の大学院へ。その後のキャリアを模索する中、冷氏は東芝の「応用技術」という職種を知り、興味を抱いたという。

 

「私は中国と日本でソフトウェアのプログラミングを習得しました。学んだ技術を生かしながら、人ともコミュニケーションを取っていきたい。私にとって技術とコミュニケーション、どちらも大切です。仕事をするなら両方担いたいと思っていました。

 

そう考えていた中、見つけたのが東芝デバイス&ストレージの応用技術職でした。製品開発から納入まで携われること、またお客様からニーズを聞き出し、社内の他部門と連携しながら開発を進められる応用技術職に魅力を感じて入社しました。中国の企業も見てみたのですが、このように広く領域をカバーしている企業はなかなかありませんでしたね」

 

東芝デバイス&ストレージ株式会社 半導体応用技術センター オプティカルアイソレーション応用技術部 冷 可氏

東芝デバイス&ストレージ株式会社 半導体応用技術センター オプティカルアイソレーション応用技術部 冷 可氏

中国で育った幼少期から、当時家電を扱っていた東芝には親しみがあった。就職先として意識して向き合った際、冷氏は東芝デバイス&ストレージの製品と技術戦略に関心を深めていく。目を見張ったのは、デジタル社会を支えるとともに、機器の省エネ、信頼性の担保につながるデバイス群だ。

 

東芝が高いシェアを持ち、実績を重ねているのはパワー半導体です。米粒ほどの小さなサイズの半導体であっても、産業用ロボットや自動車に使われて電力の制御や変換に力を発揮しています。それは、社会の様々なモノの省エネや信頼性の向上に貢献します。

 

入社後、私は応用技術職としてフォトカプラーというデバイスに携わっています。これは絶縁の役目を果たすデバイスで、様々な機器の信頼性を高めます。社会に欠かせない多くの機器にフォトカプラーが入っており、見えないところで社会を支えることは、とてもやりがいのある仕事。応用技術として何ができるかを考えながら、懸命に走り続ける日々が始まりました」

 

フォトカプラーとは、「電気的に絶縁した状態で信号を伝達できる」デバイスのこと。冷氏は、「テレビのリモコン操作」に例えて解説する。

 

「テレビをつけたりチャンネルを変えたりするとき、リモコンは電気ではなく、目に見えない赤外線でスイッチのオン/オフや各種の操作をしています。フォトカプラーも同じように、電気ではなく光で信号を伝達します。絶縁とはいわゆる、電気的なつながりを断った状態にすること。電気の代わりに光を使って伝達することで、安全性を確保できます。例えば、異なる電圧が用いられているところや、人が手で触れただけでも静電気でトラブルを招く繊細な機器、落雷による急な電圧の変化に備えて、様々な産業用機器で使われています。

 

私はフォトカプラーだけではなくデジタルアイソレーターの応用技術にも携わっています。デジタルアイソレーターは光ではなく磁気で絶縁するデバイスで、近年注目が集まりつつあります。この2つは見えないところで社会を支えていますが、カーボンニュートラルに向けた電動化社会において、ニーズが急速に高まってきました。未来を創っていくデバイスでもあるのです

 

冷氏が携わっているフォトカプラー。触れると危険な電子機器や落雷による電圧の変化を防ぐため、絶縁して安全性を確保する。

冷氏が携わっているフォトカプラー。触れると危険な電子機器や落雷による電圧の変化を防ぐため、絶縁して安全性を確保する。

簡単に「No」と言わない――応用技術職の矜持

フォトカプラーやデジタルアイソレーターは、実際機器を動かす上でどう作用するのか。EV(電気自動車)の内部を例に見ていこう。EVの動力を司る電力制御システムやモーター、インバーターは複数の電圧レベルで動作している。これらを直接結合すると、動作上、安全上問題となる可能性がある。そういった場合、高電圧のモーターと低電圧のコントローラーとの間に電気的なつながりを持たせないようにする役割を担うのが、フォトカプラーをはじめとするアイソレーター(絶縁)技術なのだ。

 

東芝デバイス&ストレージはフォトカプラーのシェアで世界トップ※1にあり、先端のデジタルアイソレーターでも業界をリードしていく。先端のデバイス技術と、高度な開発体制、さらにユーザーの現場に合わせて実装するノウハウの集積があるのだ。冷氏ら「応用技術」部門は、強みを統合してさらなる価値を創出していく。

 

「世界では多くの企業がパワー半導体や周辺デバイスの研究開発にしのぎを削っています。この開発の最前線にあって、東芝はフォトカプラーとデジタルアイソレーターを展開している数少ない会社だと考えています。ユーザー企業のニーズを察知しつつ、常に一歩先を行くフォトカプラーやデジタルアイソレーターを届けていくために。私たち応用技術のメンバーは、設計・開発チームと連携し、新しい製品を開発し続けているのです

 

商品企画で要求したスペックを満足できるか評価をする冷氏。

商品企画で要求したスペックを満足できるか評価をする冷氏。

 

ユーザー企業のニーズを聞き取ってチーム内で共有しつつ、設計・開発部門と協議。納入する製品の性能を定めて製品を開発。さらに、製品がユーザーの要求を満たすかを評価し、生産に至るまでの流れを一括で担う。これが応用技術の業務だ。

 

入社4年目の冷氏は、フォトカプラーを担当する応用技術チームの一員として業務に臨む。製品評価を担いつつ、ユーザーとのやり取りや設計・開発部門との接点を支援する。応用技術職が「技術者と営業、2つの目線が求められる」と言われるゆえんだ。

 

「私たちが一番大切にしているのは、簡単に『NO』と言わないことです。お客様と開発部門を結ぶ重要な役目である応用技術職の私たちが『できない』と言ったら、ビジネスはそこで止まってしまいますから。

 

例えば、お客様から2ミリアンペアという性能のデバイスを求められたとしましょう。開発部門と話し合ってみると、この条件と予算であれば1.9ミリアンペアなら……という提案が出てきます。性能の高い製品を安価に調達したいのがお客様の本音ですが、開発部門もどこまでその性能を実現できるか、様々な考えがあります。ニーズと条件を共有しつつ、交渉して最適な性能の製品を見出していくこと。これが私たち応用技術の業務です」

※1:Gartner®  「MarketShare:Semiconductors by End Market WorldWide2022」 , Andrew Norwood et al., 2023年3月31日 Revenue Basis, フォトカプラー=Coupler GARTNERは、Gartner Inc.または関連会社の米国およびその他の国における登録商標およびサービスマークであり、同社の許可に基づいて使用しています。All rights reserved.

自らが成長し、「新しい未来を始動させる」ピースとなる

ユーザーからの仕様の追加が相次ぎ、最終的な条件に沿う製品を納めるまで、時には数年に及ぶことも。技術と営業の両面を磨き上げる中、冷氏は先輩が手がけた解決策を目の当たりにして、「応用技術ならではの提案だ」と感じ入ったことがある。

 

多くのユーザーが要望したのは「1つのデバイスに3つの機能を持つ」フォトカプラーだった。性能と価格を突き合わせた設計・開発部門からは、「この価格で3機能を実装するのは困難」という回答が寄せられる。

 

「最初聞いたときは、『どうしよう』と思いました。策が思い浮かばず悩んでいたのですが、どうにか実現したい。状況を設計・開発部門に説明して調整したところ、2つの機能であれば備えられることが分かりました。だったら、3つの製品に分けて提案するのはどうか。それがチームの解決策になりました。つまり、求められた機能をA・B・Cとすると、1つのデバイスにはA/Bを、2つめにはB/Cを、3つめにはA/Cの機能とすることで検討を始めました。これこそ、最初から『NO』と言わない応用技術の真価が発揮された案件だと思っています

 

インタビューに答える冷氏。

 

製品領域の造詣とチームで共有した経験により、創造的な解決策を提案していく。冷氏が思い描くのは、新しい技術が続々登場する変革期に躍動し、社会に資する応用技術職の姿だ。

 

「フォトカプラーは絶縁するだけではなく、誤動作をコントローラーの側に伝えるなど新たな機能を備えたモデルも登場しています。多機能化が進めば、これまで複数個の機器を搭載していたデバイスが減らせることになり、省スペースになるため設計もしやすいEVや産業用機器が視野に入ってくるでしょう。5年後、10年後の市場がどうなっているかを見通していかなければ、ユーザーに求められ、社会に普及する製品を実装することはできません」

 

フォトカプラーやデジタルアイソレーターをより深く、半導体についてはより広く、技術や知識を学んでいきたい、と冷氏は目を輝かせた。吸収すべき知識、究めるべき専門技術は尽きることがない。

 

「中国に帰国すると、街をゆく車は半分以上がEVです。これから、世界の至るところで、こんな風景が当たり前になっていくでしょう。このイメージを実際の製品企画や提案に生かしていければと考えています。そのためには、お客様の生の声をもっと聞くことが必要です。中国をはじめとするアジア圏や欧米にも足を運んで、ユーザーと対話していきたい。また、応用技術センター内の別の部門に短期の留学をするなど、知見・スキルを高める仕組みを使って、現在私が関わっている産業用機器向け以外の車載半導体など、他の領域についても幅広な知識と経験も積みたい。

 

私が目指すところは、お客様が求めるものと、東芝が強みとして打ち出していきたいことの接点を実現することです。そのために、やりたいこと、やるべきことはたくさんあります。一つひとつ取り組み、積み上げていく。それは、東芝が掲げる存在意義『新しい未来を始動させる。』取り組みそのものだと思います

 

応用技術として製品をユーザーに届けていくこと。それは、冷氏にとって「未来への実装」だ。学びを深め、顧客ニーズを掴んだ先に、提案した製品がEVや産業用ロボットなど各種機器を支える社会が見える。

 

冷氏のカット

 

東芝グループ理念体系

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