東芝のGXサービスが支える、カーボンニュートラルはじめの一歩 ~目指すは「環境対応と経済性の両立」
2023/11/17 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- カーボンニュートラルに向けて、企業に求められていることとは?
- 現状把握、ロードマップ策定、ソリューションまで包括的にサポート!
- かかりつけ医のような存在としての、東芝のGXサービス。
異常気象によって災害が増える。島国によっては海面上昇で国土が沈む。シロクマやサンゴが絶滅するかもしれない──。いずれも地球温暖化によって、私たちの身近に迫っているリスクだ。
こうしたなか、温室効果ガスを削減することによる、カーボンニュートラル実現に向けた企業への要請は強まっている。一方で、企業が「いつまでに、何を、どこまで」というロードマップをどう策定するか、温室効果ガス削減への投資と持続可能な事業をどう両立するかなど難しい課題もある。
こうした実態を踏まえて、ロードマップ作成から現場での実行まで、カーボンニュートラルの取り組みを総合的に支援するのが「東芝GXサービス」である。GXとは、Green Transformation(グリーン・トランスフォーメーション)であり、「カーボンニュートラルに向けて事業のあり方を変革し、持続可能な成長を目指す」ことだ。最前線で活躍する担当者2人に、その内容や提供価値を聞いた。
カーボンニュートラルをめぐる、企業の取り組みと現状
2015年のパリ協定以降、カーボンニュートラルは世界にとって重要な目標となっている。世界各国が、カーボンニュートラルの実現時期を宣言。企業の危機感や問題意識は、どうなっているのだろうか。
「カーボンニュートラルへの取り組みが進んでいるのは欧州です。温室効果ガス排出の削減目標を設定するだけでなく、実効性のある施策を次々と打っています。日本企業でも、自動車や化学など取り組みが進んでいる業界におけるグローバル企業が目立ちます」
こう語るのは、東芝でGXサービスの中核を担っている田中健太郎氏だ。
株式会社 東芝 Nextビジネス開発部 エネルギーマネジメントマッチング推進室 事業開発部
シニアマネジャー 田中 健太郎氏
田中氏によれば、このほかAppleのような企業も社会課題を強く意識し、カーボンニュートラルに熱心に取り組んでいる。そのため、こうした企業と取引するサプライヤーも対応を迫られる。
「とはいえ、世界潮流を的確に捉え、強い当事者意識を持ってカーボンニュートラル実現に向けて取り組めている企業は、まだ多くありません。しかし、それらの先進企業は各業界をリードする存在であり、事業規模は極めて大きくステークホルダーも多い。これらの企業のカーボンニュートラル化を支援していくことは、社会全体の機運を高めるという大きな意義があります。東芝は、そこに貢献していきたいと考えています」(田中氏)
現状把握からロードマップ策定まで、一気通貫のGXコンサルティング
東芝のGXサービスは、「コンサルティング」と「ソリューション」の2つに分けられる。顧客の課題により深く対応するために、戦略策定からソリューション提案まで包括的に支援する必要がある。こうした課題意識から東芝のGXサービスは誕生した。
現状把握からソリューションまで一気通貫で支援する、東芝のGXサービス
まずはコンサルティング。課題の現状把握をもとに、ロードマップを策定し、温室効果ガスの削減施策を立案する。
「これまでも東芝は、カーボンニュートラルにつながる製品やソリューションを幅広く提供してきました。しかし顧客から見れば、東芝はあくまでソリューション・ベンダーの1社だったかもしれません。これからは、東芝の技術とドメイン知識をもっと生かして、顧客のGX戦略を踏まえた包括的なご提案が求められる。そのように考えています」(田中氏)
東芝は、このコンサルティングを展開するパートナーとして、アクセンチュアを選んだ。東芝の技術・ドメイン知識と、アクセンチュアの情報収集・戦略立案力の融合により、より価値の高い提案を実現していく。
「アクセンチュアさんと手を組んだのは、実効性の高いGXロードマップを策定していくためです。欧州の政策動向など、外部環境を踏まえた的確な分析を得意とするアクセンチュアさんと一緒に、よりよいサービスをお客様にお届け提供します」(田中氏)
アクセンチュアと東芝が組み、より早く的確なロードマップを策定
熱と電力の運用最適化など、技術を組み合わせたGXソリューション
次にソリューションだ。これは、「省エネソリューション」「再生可能エネルギー供給ソリューション」「サプライチェーン全体のCO2見える化」の3つで当面は構成される。技術面から支援する杉森洋一氏は、これらが生まれた経緯を次のように説明する。
東芝のGXサービスにおける当面のソリューション
「東芝では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーや、デジタル技術によるエネルギー管理システム、水素ソリューション、CO2分離回収など、カーボンニュートラルにつながる価値を提供していました。
ただ、それぞれを『単品売り』している印象があり、東芝の総合力が生かされていませんでした。そこでもう一段昇華させて、顧客課題に沿って総合的に提案していこうと考え、GXソリューションとして立ち上げました」
株式会社 東芝 Nextビジネス開発部 エネルギーマネジメントマッチング推進室 カーボンニュートラル技術部
シニアマネジャー 杉森 洋一氏
杉森氏は、熱の出入りを整えるヒートバランス(熱収支)に基づいた、最適なエネルギー運用(省エネソリューション)を代表例として挙げる。発電設備を持ち、電力と熱を自給している製造企業は多いが、現場全体で効率的に運用できていない場合がある。
「熱の運用状況は把握しにくく、どう扱えば省エネにつながるか悩まれる事が多いようです。たとえばバイオマス(生物資源)とガス2種のボイラーを持ち、燃料費の節減(省エネ)を狙ってバイオマスを優先して使っていた例があります。しかし、バイオマスは急に熱したり冷ましたりできず、必要とされる量に対応しきれない、または熱を無駄にする時間帯がありました。
この場合、熱需要の変動速度に応じてガスを使うことで、負荷追従性が改善されて熱を無駄に大気に流さず、燃料費の削減(省エネ)を行えました。このように時間の要素も含めて検討すれば、現場に合った最適化提案が可能です。
この場合は燃料費の最小化を検討しましたが、温室効果ガス排出の最小化が目的だと違う答えが得られるかもしれません。機器の運転状態をシミュレーションすることで、それらの差異を明確にできます」(杉森氏)
この分野での東芝の強みは、ボイラーなどのデータを収集・分析し、ヒートバランスを含むエネルギーの運用状況を可視化できること。そこに時間の要素を加えた最適運用シミュレーション技術、クラウド管理技術を組み合わせれば、省エネで温室効果ガス排出を抑えながら、発電設備を最大限に機能させる運用を提案できる。
GXサービスで、かかりつけ医のような存在へ
GXサービスを始めて以降、多くの企業から相談が寄せられた。たとえば、顧客が作ったロードマップに対する客観的な評価・検証の依頼だ。
「GXロードマップには温室効果ガス排出量の算定、政策動向を踏まえた削減目標の設定、投資対効果の高い削減施策などを盛り込みます。どんな企業でも自力での対応には限界があり、ロードマップの実効性などを『第三者視点で定量的に評価してほしい』といった要望が多くあります。東芝とアクセンチュアさんで連携し、ロードマップを練り直していきます」(田中氏)
こうして、東芝にとって新たな顧客との出会いが増えている。一例が、ベネッセホールディングスへの再生可能エネルギー調達支援だ。同社は業界最大手としてリードする立場にあり、GXも積極的に推進していた。
「再生可能エネルギーの調達を検討されていましたが、多様な導入方法や証書購入などの選択肢が多くあり、投資対効果を踏まえて選ぶのは難しいです。定量的に判断できる力を求められていました。再生可能エネルギーの知見を持つ東芝と、環境分析が得意なアクセンチュアさんの組み合わせによるご提案が、今回のGXコンサルティングのご依頼をいただく際の信頼獲得につながったと感じます。カーボンニュートラルを実現するための施策へ繋げていきたいと考えています」(田中氏)
第三者による客観的なシナリオと定量的なロードマップ、持続可能な施策がGXを前進させる
最後にGXサービスの展望と、顧客に提供していきたい価値について両氏に聞いた。
「東芝は、幅広い事業を抱えているのが強みですが、『GXコンサルティング』『GXソリューション』で顧客ニーズに応えるには不足している領域があることに気づきました。この気づきを各部門に共有することで、事業創造のきっかけにしてもらいます。GXサービスとしても技術の新しい組み合わせを考え、提案をしていきます。
また、これからGXに取り組む方々には、『肩肘張らず、自然体で』と思います。カーボンニュートラルは重要課題ですが、大企業ほど現場まで浸透するには時間がかかります。身近で投資効果が見えやすい省エネから始めて、『こんなに効果がある』と小さな一歩を踏み出せる提案を心がけています」(杉森氏)
田中氏は、温室効果ガス削減への投資と持続可能な事業、すなわち「環境対応と経済性の両立」を実践してほしいと話す。
「GXが持続可能であるためには、環境対応と経済性の両立が必須です。まず省エネによるコスト削減で原資を生み、効果が生まれることを実感する。原資が出たら次は収益化です。温室効果ガス削減効果を売却する枠組みが、徐々に構築されます。これを多くの企業が実践すれば、カーボンニュートラルに取り組むことが、経済的にも意味のある活動になると考えます。
また、私たちは『かかりつけ医』のような存在でありたいです。患者さんを最初に診る医師が、多くの治療薬からその人に合ったものを選んだり、別の医師に紹介したりと、しっかりと治るところまで寄り添う。GXを熟知した東芝が、同じように顧客に伴走していきます」(田中氏)