顧客と開発現場をつなぐセールスエンジニアとして、ともに価値を生む~理念ストーリー We are Toshiba~

2024/01/11 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 大規模停電を防止する保護リレーが、安定した電力供給を実現!
  • エンジニア視点と営業力を備えたセールスエンジニアの役割とやりがいとは?
  • 世界標準に基づいた変電所監視制御システム導入が待ったなしで進む!
顧客と開発現場をつなぐセールスエンジニアとして、ともに価値を生む~理念ストーリー We are Toshiba~

東芝グループの理念や、大切にしたい価値観を胸に、様々な現場で活躍するメンバーがいる。業務の中で理念を実践し、東芝ブランドを育む従業員の挑戦や想いに迫る「理念ストーリー」シリーズ。今回は、東芝エネルギーシステムズで、送配電と変電所において大規模停電を防ぐ「保護リレー」のセールスエンジニアとして、電力会社と東芝の設計開発部門を橋渡しする黒瀬雄太氏が登場。エネルギーを安心・安全に「おくる」ため、どのような仕組みが機能しているのか、そして、エンジニア視点を持って営業やプロジェクト推進に携わる醍醐味とはいかなるものか。

停電を防ぎ、電力の安定供給に貢献する「保護リレー」を支える

台風や水害など災害が多発するようになったが、停電そのものは減っているのではないか――そう感じる方も多いのではないだろうか。電気事業連合会によると、1966年に1家庭あたり年間4.85回だった停電回数は、2010年代には年間0.1回程度に激減している。このように、電力が安定して供給されているのは送配電網や変電所などのエネルギーインフラの品質に依るところが大きい。発電所が安定して稼働し、送配電網の品質も向上。幾多の施策の積み重ね、品質向上の努力によって、電気は安定して家庭に届けられている。

 

また、落雷をはじめとする災害・事故による被害拡大を最小限に抑え、大規模停電を防ぐ仕組みも高度化されている。それが「保護リレー」だ。黒瀬氏は、入社から一貫してセールスエンジニアとして保護リレーを担当し、営業や顧客との共同開発プロジェクトの提案、推進に携わっている。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 グリッド・ソリューション事業部 電力系統システム技術部 スペシャリスト 黒瀬 雄太氏 その1

東芝エネルギーシステムズ株式会社 グリッド・ソリューション事業部 電力系統システム技術部
スペシャリスト 黒瀬 雄太氏

「電力ネットワークでは、『おくる』という過程が非常に重要です。その『おくる』過程の送電線や、変電所などに雷が落ちたりすると、大きなトラブルが発生します。電気が送れないだけではなく、周辺の設備に想定以上の電気が流れるなどして、トラブルがどんどん拡大していってしまいます。

 

こうした異常が発生した箇所を瞬時に検出し、その部分を切り離す指令を出して他の部分を守る、それが保護リレーです。この仕組みがあるので、落雷などによるトラブルが他に影響を及ぼすことを防いだり、最小化したりが可能になります。結果として、大規模な停電を防げるのです。雷が落ちても停電しないのが当たり前――そんな感覚が一般的になのも、この保護リレーがあってこそです」

大規模な停電を防ぐ保護リレーシステム

大規模な停電を防ぐ保護リレーシステム

黒瀬氏は大学時代に電気工学を学び、大学院では物流などのネットワークを最適化する研究に没頭した。エネルギーのすべての領域に事業を持ち、エネルギーシステムをデザインしていく――その幅広さと可能性に惹かれ、東芝への入社を決意したという。

 

「東芝が保護リレーを初めて開発したのは1907年です。1980年に世界に先駆けてデジタル型保護リレーを実用化するなど、先進的な取り組みを続けています。その結果、日本での保護リレーはトップシェア。全国各地の変電所に、私たちが納めた装置が設置されています。お客様の信頼も厚く、保護リレーに取り組み続け、エネルギーインフラを支えてきた歴史を感じます」

 

保護リレーは1900年代初頭の電磁石を利用した「プランジャー型」に始まり、現在はデジタル技術を活用した最新世代「D4リレー」が実装されている。事故を約0.01秒で検出し、事故が起こった区間を速やかに切り離し、保護性能をさらに向上させている。

 

「保護リレーのデジタル化が進み、高度な演算や通信が可能になりました。変電所と情報を瞬時にやり取りでき、異常箇所の把握が困難な条件でも事故のポイントを検出しやすくなっています。停電時間を極小化するため、機器のCPU処理能力を向上させるなど、さらなる機能向上が進んでいます。1907年から脈々と続く東芝の保護リレーは、100年以上の伝統を重ねてきました。私は保護リレーに関わるセールスエンジニアとして、さらなる機能向上の一端を担っています」

エンジニア視点で営業に臨む、セールスエンジニアの本分

セールスエンジニア――エンジニア視点を生かして営業と技術提案や、プロジェクト推進を行う職種だ。黒瀬氏のように事業部に所属し、顧客の要望と開発製造部門をつなぎ、円滑に開発・納入を進めることが役割となる。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 グリッド・ソリューション事業部 電力系統システム技術部 スペシャリスト 黒瀬 雄太氏 その2
「エネルギーに関する業務に魅力を感じる中で、設計で一日中デスクに張り付くより、人とコミュニケーションしながら進める仕事が向いていると思いました。

 

セールスエンジニアは、技術を土台にしながら、人とのつながりを主軸に業務を進めます。そんな橋渡しの役割が自分に合うと思ったのです。お客様の要望を聞き取り、開発製造部署とやり取りするためには、専門知識が欠かせません。そこで、エンジニアとしての素養も求められるセールスエンジニアを志望し、描いたイメージ通りにキャリアを積めています」

 

黒瀬氏はセールスエンジニアとして8年目を迎えた。主に電力会社が発注した装置の仕様について調整するが、顧客と共同研究プロジェクトを推進することもある。求められる仕様を開発製造部門に伝え、納入に向けて進める。業界の大きな流れと社会の潮流を見極めながら、電力会社との議論で最新技術を実装した製品を試行する。そこに求められるのは「つなぎ」のコミュニケーションだ。

 

「セールスエンジニアとしてのやりがいは、お客様と開発製造部門などをつなぎ、最適な製品を納めることです。開発製造部門は仕様を落とし込んで形にしていく専門家です。お客様の要望と、開発製造部門ができる範囲が時には一致しないこともあります。私はセールスエンジニアとして、両者の間を取り持って落とし所を考え、着地点を見出します。そのためには、各部門の業務範囲や技量をしっかり把握することが重要です。それができて初めて、お客様の要望に応えられるのだと思います」

 

ある案件で、黒瀬氏は顧客が提示した納期を見て考え込んだことがあった。プロジェクトの進行を考えれば当然の納期だが、現場の繁忙を考えるとそのままには伝えにくい。ここが調整役としての腕の見せ所だ。

 

「納期をそのまま現場に転送するだけなら、セールスエンジニアは不要です。これだけを見たら、どう思うだろうか――私は現場の立場で考えることを大切にしています。開発製造部門には『なぜこの期限が求められるのか』を丁寧に説明し、納得した上で進めてもらうことを主眼に置きました。各部門の状況を集約してから、全体進行を確認。納品をいくつかに分け、優先度の高いものから納めていくように提案しました。こうして、お客様も現場も納得のいく、最適な落としどころを見つけられたのです

 

デジタル化が進む変電所から次世代のエネルギー供給に貢献するために

全国各地で稼働する保護リレーを電力会社に納め、顧客との共同研究により時代に即した機器を社会に実装していく。電力の安定供給を考える中、黒瀬氏はセールスエンジニアとしての成長を感じる瞬間があるという。

 

「当初、お客様からの問い合わせや仕様検討について、個々に対応していました。ただ、電力会社と密にコミュニケーションを取り、保護リレーシステムを俯瞰的に考えるようになりました。次世代の電力ネットワークや、より安心・安全な電力供給のかたちに思いを馳せるようになってきたのです

 

黒瀬氏が挙げたのは、次世代の「デジタル変電所」だ。東芝は日本の電力会社と共に、国際標準規格の「IEC 61850」を適用した変電所監視制御システムの導入を進めている。

国内で初めてIEC 61850規格を適用した変電所監視制御システム

国内で初めてIEC 61850規格を適用した変電所監視制御システム

「IEC 61850は、国際電気標準会議が定めた規格です。これまで保護リレーや変電所は日本の規格で普及してきましたが、海外ではIEC 61850に則ったシステムの導入が進んでいます。変電所の監視制御に必要な情報だけではなく、各種設備の詳細な情報も送信でき、電力システムのさらなる高度化が期待できます。私も共同プロジェクトに参画しています。中部電力パワーグリッド様に納入したシステムは、国内でIEC 61850を適用した先駆けとなる案件になりました」

 

海外担当部門と連携し、黒瀬氏は知見やノウハウを収集しながら導入プロジェクトを進めた。IEC 61850適用のデジタル変電所構想は、国際標準規格への準拠のみが目的ではない。機器がネットワーク化されることで、それまで変電所内でつながれていた大量の制御用ケーブルが不要になる。設備を更新する際には工事期間が短縮され、費用も節減。ケーブル削減で環境にも配慮し、サステナブルな変電所像が構想される。

 

電力供給を縁の下で支える保護リレーと、次世代のサステナブルなデジタル変電所――黒瀬氏がリードする業務は、電力の安定供給のさらなる高みを目指そうとしている。セールスエンジニアとして活躍しつつ、どのように新たな未来を実装していくのか。東芝グループ「私たちの価値観」に紐づけた想い、ビジョンを黒瀬氏が語る。

 

「お客様とコミュニケーションしながら、開発設計部門とも密に連携する――両者をつなぐセールスエンジニアには『ともに生み出す』やりがいと醍醐味があります。また、私はエネルギー事業に携わってきた東芝の一員として、生活に欠かせない電力の安定供給に携わってきました。社会課題を考えれば、環境に配慮した、クリーンな電力ネットワークづくりも考える必要があります。安定したエネルギーインフラとサステナブルな仕組みを両立させることは、前例のない『未来を思い描く』ことにもつながります。よりよい未来に向けて、自分の役目を果たしていきます」

国際標準規格に準拠したシステムの意義を語る黒瀬氏

 

東芝グループ理念体系(主文)の図

Related Contents