未知の領域へ挑戦! ~東芝が牽引するクアンタム・トランスフォーメーション

2024/02/16 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • デジタルエコノミーの発展には「DE」「DX」「QX」の3段階変革が必要!
  • 変革を加速させる、「ソフトウェア・ディファインド」という考え方
  • デジタル変革とカーボンニュートラルの関係とは?
未知の領域へ挑戦! ~東芝が牽引するクアンタム・トランスフォーメーション

今、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みは企業だけでなく、社会全体に必須だ。そうした中でデジタルエコノミーの発展として、東芝は独自に「DE(Digital Evolution)」から「DX(Digital Transformation)」、そして「QX(Quantum Transformation)」へ向かうビジョンを掲げている。多くの企業が「DX」に注力する現状で、東芝はその先にある「QX」を既に見据え、様々な取り組みを行っている。Chief Digital Officer(CDO)として東芝のデジタル戦略を率いる上席常務執行役員の岡田俊輔氏が、東芝が描く戦略、デジタルエコノミーの未来像を語った。

デジタル化の「DE」からプラットフォーム戦略の「DX」へ

人と、地球の、明日のために。これは東芝が長年大切にしてきた信念であり、経営理念に掲げられている。岡田氏は、「私たちが『人と、地球の、明日のために。』を実現し、新しい未来を切り拓くためには、『DE』『DX』『QX』という3段階が必要」と語る。

株式会社 東芝 上席常務執行役員CDO 岡田 俊輔氏(1)

株式会社 東芝 上席常務執行役員 CDO 岡田 俊輔氏

「DE」「DX」「QX」とは、どういうものなのか。広く知られているのは「DX」という言葉だろう。岡田氏曰く、一般で使われる「DX」と東芝が考える「DX」は、少し意味合いが異なる。

東芝では、『DX』という言葉を『DE』と『DX』に分けました。DE、すなわちDigital Evolution(デジタルによる進化)は、既存事業やバリューチェーンをデジタル化し、最適化する取り組みです。そして、そこから生まれてくるデータを生かし、プラットフォームを提供するのがデジタルによる変革、DX(Digital Transformation)です。

東芝の『DX』では、1社にとどまらず複数の企業がプラットフォームを共有することで、新しい価値を生み出すことを構想しています。『DE』と『DX』に分けたのは、『DX』はエコシステムを構築するためのプラットフォーム戦略だと明確にしたかったから」

DE、DXの先にあるQXの解説は後述するとして、先に基本となる考え方「ソフトウェア・ディファインド」を紹介する。

「DE」「DX」を加速する「ソフトウェア・ディファインド」の考え方

「DE」「DX」の実現を後押しするのが、「ソフトウェア・ディファインド」という考え方である。従来の製品では、ハードウェアにソフトウェアが組み込まれ一体となって機能する。しかし、「ソフトウェア・ディファインド」ではそれらを分離して、ソフトウェアがハードウェアを制御・管理する位置づけになる。さらには、ソフトウェアはプラットフォームとして機能し、ここを経由してアプリケーションを追加したり、データを更新したりと継続的に価値を生めるようになる。

この考え方を生かした事業の一つが、東芝のエレベータークラウドサービス「ELCLOUD(エルクラウド)」である。ELCLOUDでは、ハードウェアであるエレベーターの制御盤からソフトウェアを分離し、クラウドに接続することでエレベーターの機能を拡張した。これにより、たとえばリモートで運行状況の確認やファンのオン・オフができたり、身体が不自由な方がスマートフォンでエレベーターを呼び出せたりと、「ソフトウェア・ディファインド」によりエレベーターという単なる移動手段が進化を遂げたのである。

単なる移動手段から、わくわくする縦移動へエレベーターが進化する

単なる移動手段から、わくわくする縦移動へエレベーターが進化する

「ELCLOUDはほんの一例で、東芝のハードウェアはソフトウェアを活用して機能を更新し、価値を再定義していきます。ソフトウェアをプラットフォームとし、そこに様々なアプリケーションが接続することで進化が促され、新たなビジネスの創造が可能になります」

量子技術で新しい未来を始動する「QX」

「DE」「DX」の先に待っているのが、量子技術が実現する「QX(Quantum Transformation)」だ。現在のコンピューターは0と1、オンとオフの組合わせで計算するが、量子コンピューターでは0と1、オンとオフが重なり合った状態にある。にわかには信じにくいこの性質を利用することで、超セキュアで高信頼なネットワークである「量子暗号通信」や、超高速・大規模なデータ処理が可能な「量子コンピューター」などが実現する。

「QX」では、サイバー空間のあらゆるプラットフォームが量子技術によって圧倒的に速く、圧倒的なデータ量でつながるデジタルエコノミーが実現する。この未来を先導するのが、東芝のビジョンである。

DXの先にあるQXでは、あらゆるプラットフォームが圧倒的な速さ、データ量でつながる

DXの先にあるQXでは、あらゆるプラットフォームが圧倒的な速さ、データ量でつながる

おそらく、経営戦略としてここまで量子を明確に打ち出している企業は、世界を見渡しても稀有な存在でしょう。量子技術を使った世界は確実に訪れるので、その時期を早められるか否かが企業の存在感を左右します。東芝が先導役となり、社会をけん引する覚悟を込めて、『DE』『DX』の先に『QX』を設定しました。東芝は、量子分野においても新しい未来を始動させます

日本政府が「量子技術イノベーション立国」を目指す中、東芝は2021年に「量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)」を、発起人メンバー企業の1つとして設立。現在、この協議会には日本を代表する有力企業が多数参加しており、その中で東芝の代表取締役 社長執行役員 CEOである島田太郎氏が代表理事を務め、実行委員長は岡田氏が担当。東芝は量子技術を生かして新たな産業を生み出し、日本全体のイノベーションを促進する取り組みを主導している。

Q-STAR会員一覧

さらに海外にもその手を広げ、2023年9月には、英国ケンブリッジに量子技術の新たな事業拠点となる「量子技術センター」を開設した。「この技術センターは、研究や調査ではなく、量子技術で実際にビジネスを行うための拠点として設けました。量子ビジネスの先進地である英国において、東芝の技術を実際に使っていただきながら、社会実装を進めていきます

英国政府投資担当大臣や駐英日本国大使を招いた「量子技術センター」開所式にて

英国政府投資担当大臣や駐英日本国大使を招いた「量子技術センター」開所式にて

東芝は20年以上前から量子技術を開発し、知見を培ってきた。たとえば、量子の重なり合う性質(ゆらぎ)を利用して膨大な組合わせを最適化する「量子アニーリング」や、疑似量子計算技術を用いて現状のコンピューター上で量子コンピューターの動きを再現する「SQBM+TM」、暗号鍵を光の粒(量子)に書き込む「量子暗号通信」、そして量子の特性を利用して物理量を計測する「量子センシング」などがある。これらは、製造、金融、物流、医療など幅広い分野への適用が期待されている。

デジタルエコノミーの発展がカーボンニュートラルに寄与

東芝は、カーボンニュートラルを実現する技術やソリューションが将来の収益の柱になると見込んでいる。その中で、「DE→DX→QX」という進化が大きな役割を果たすと考える。

カーボンニュートラルに関して、2020年に発生したCO2は前年比で約7%減少し、これは産業革命以降で最大の減少幅となった。ただし、この減少はコロナ禍による経済活動の停滞が主因だと考えられている。各国がカーボンニュートラルを目標に掲げているが、今後もコロナ禍と同程度の排出量を毎年実現しなければ、この目標の達成は難しい。

カーボンニュートラルの実現において、デジタル技術が注目される領域の一つは「CO2排出量の可視化」であろう。東芝は電子レシートサービス「スマートレシート®」を活用して、紙レシートの発行コストや環境負荷を減らすだけでなく、利用者個人がどの程度CO2削減に貢献したかを見える化し、一人ひとりが消費行動を見直すきっかけを作ろうとしている。

電子レシートサービス「スマートレシート®」を活用した東芝データ株式会社の展望

電子レシートサービス「スマートレシート®」を活用した東芝データ株式会社の展望

また、量子技術による「QX」も、カーボンニュートラルを推進する大きな力となる。たとえば、上述の組合わせ最適化を行う量子アニーリングを物流に適用すれば、効率的な配達でCO2の削減につながるのは容易に想像できる。さらに、トラックドライバーの時間外労働の規制により輸送能力が不足する、「物流の2024年問題」という社会課題も改善が期待できる。東芝は、カーボンニュートラルは当然の目標として、その実現のために「DE→DX→QX」によって様々な製品・サービスを創造していく。

東芝が量子の時代をリードする未来へ

「DE」から「DX」、そして「QX」へとデジタルエコノミーを発展させることで社会に新たな価値を生み出し、カーボンニュートラルに貢献する。しかし、東芝の視野はそこにとどまってはいない。より広い視点から、ダイバーシティ&インクルージョンの分野でも「DE→DX→QX」に取り組んでいる。

株式会社 東芝 上席常務執行役員CDO 岡田 俊輔氏(2)

東芝には3つの強みがあると考えています。まず、量子に明確にコミットしていること。次に、電力の系統制御や高速道路システム、上下水道の管理システムといったインフラを得意領域に持っており、インフラに関するハードウェアとソフトウェアの知見を有していること。そして、プラットフォーム戦略で、お客様を始めとして様々なステークホルダーと共創していく姿勢です。

東芝は、多くの世界初を実現してきました。今はエコシステムの時代であり、近い将来、量子の時代もやってきます。その流れの中で、新しいものを生み出し続けてきた東芝の遺伝子を受け継ぎ、新しい時代をリードする存在になりたいと思っています。

そのためには、従業員の一人ひとりが『DE→DX→QX』に関わり得ることを意識し、実践する必要があります。ここに職種、役職、年齢、性別などの差はありません。デジタル人材育成へも、引き続き注力していきます」と岡田氏は目を輝かせる。

デジタル化を進める「DE」から、プラットフォームにより可能性を広げる「DX」、そして量子技術が切り拓く「QX」の未来へ。東芝の挑戦は続く。

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