フォードも認める東芝のモーター技術!サステナブルな車社会へ前進
2024/07/31 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- 1990年代初頭からHEV技術分野でイノベーションと市場成長を牽引
- フォードとの共創で生み出したデュアルモーター技術が、フォードHEVを支える
- 高度なモーター技術で未来のHEV・EV市場の進化を主導!

今最も熱い視線を浴びる自動車技術の一つ、ハイブリッド電気自動車(HEV)は、実は意外に新しい技術ではないということを知っているだろうか。米国エネルギー省によると、HEVの始まりは米国の自動車メーカー、フォード・モーター・カンパニー(以下フォード)が初代「モデルT」を発売するより7年も前の、1901年*1にさかのぼる。
それから1世紀余りが経過し、今やHEVの人気はかつてない高まりを見せている。HEVは、ガソリン車の利便性を維持しつつカーボンフットプリントは抑えたい、と考える消費者に好まれる選択肢へと進化した。米国エネルギー省と国際エネルギー機関によると、米国では2023年にHEVの売り上げが53%も増加*2しており、電気自動車(EV)の売り上げも約40%増加*3と、その需要の高まりは顕著だ。
1990年代初頭からHEVシステムを製造してきた東芝は、今HEV革命の最前線に立っている。さらなるイノベーション加速を目指して、東芝インターナショナル米国社(以下「TIC」)のHEV事業部は、研究開発で日本国内工場との連携を強化し、自動車産業に価値をもたらす新技術の導入を図っている。東芝は、EV用モーターの開発・普及を通じて、持続可能なモビリティソリューションを人々に提供し、サステナブルな社会の実現に貢献しているのだ。
フォードとのコラボレーションと東芝の役割
東芝とフォードのパートナーシップが始まったのは1999年のこと。両社はフォードのトランスミッション専用の特別なデュアルモーターHEVシステムの開発に共同で取り組んだ。この画期的なシステムは、フォードのHEV市場進出の出発点となり、同社はトヨタに次ぐ世界第2位のサプライヤーの地位を獲得した。2004年にフォードが発売した世界初のハイブリッドSUV車「エスケープ・ハイブリッド」で初めて東芝のHEVモーターが採用され、その後「C-MAX」、「フュージョン」、「リンカーンMKZ」にも搭載された。
東芝のデュアルモーターHEVシステムは、従来のガソリンエンジンと電気推進システムの両方を活用する設計である。これにより、充電インフラが未発達の地域でも運転でき、なおかつ排気ガスの削減にも寄与する車両が実現した。
2004年、東芝はフォードのTier 2製造業者として、Tier1サプライヤー向け部品の下請け契約を開始した。そして2009年、フォードは東芝をTier1に格上げする。フォードとのパートナーシップにより、東芝のHEVモーター開発が進み、開発とエンジニアリング拠点を米国ミシガン州ウィクソムに開設(デトロイトオフィス)。さらに、3年後にはヒューストンに製造工場を開設したことにより、米国内での開発および部品と製品供給が可能となり、フォードのHEV向けに完全米国製のモーターを生産できるようになった。
「『Made in USA』は今でも米国の消費者に信頼を与えています」と、自動車産業で20年以上の経歴を持つTICヒューストンのHEV工場長、アキレス・ハリス氏は言う。「米国産品のタグが付いている製品を購入することで、消費者はより満足感を得られますし、国内で生産することで、品質管理の問題がタイムリーに解決できることも利点です」と語る。
東芝のヒューストンHEV工場
持続可能な自動車イノベーションを推進する
自動車産業で30年の経歴を持つベテランで、TICデトロイト事務所でシニアセールスマネジャーを務めるジョン・ヘイデン氏は、この15年間、自動車メーカーと直接関わる仕事をしてきた。チームとともに顧客と力を合わせて日々の課題を解決し、将来に向けて個々の部品の性能を改善する戦略を立てることが何より楽しいという。
「私たちはミシガン、ヒューストン、そして日本での取り組みを通じて、フォードと強固な信頼と協力関係を築くことができました」とヘイデン氏は述べた。
自動車業界がHEVのラインナップを拡大し続ける中、東芝は高性能モーターの生産を強化し、需要の増加に対応している。これにより、自動車メーカーはHEVやEVの多様な選択肢を消費者に提供し、持続可能なモビリティにスムーズに移行できるよう支援している。このような取り組みは、環境に優しい車を求める消費者の声に応えると共に、燃費規制の達成にも貢献している。
「東芝は自動車メーカー各社とのコラボレーションを通じて、消費者に持続可能な自動車の選択肢を提供しています」と、TIC―HEV事業部のバイスプレジデント&ゼネラルマネジャー 増村信慶氏は言う。「高品質で高性能な東芝製モーターを使うことで、自動車メーカーはHEVのラインナップを拡充することができ、他社のHEVやEVに対して高い競争力を持つことができます」と述べる。
増村氏は東芝のオートモーティブシステムズ部門に15年余り在籍し、当初のセールスアカウントマネジャーからキャリアアップしてきた。仕事においては、チームと力を合わせて組織を率い、ミッションを達成することを楽しんでいるという。彼は技術の進歩と改善に貢献していることを実感しながら、誇りを持って日々の仕事に取り組んでいる。
ステーターの製造ライン:すべての生産ステーションは、資格を持つ作業員が操作
エネルギー効率の改善とカーボンニュートラルへの貢献
TICヒューストン工場において効率的な製造手法で作られる東芝製モーターは、その信頼性、耐久性、品質をフォードから高く評価されている。実際、東芝は生産開始2年目の2014年1月に「Ford Q1 Preferred Quality Status」賞を獲得し、フォードのパートナー企業として確固たる信頼を得ている。
ヘイデン氏は次のように説明する。「東芝のHEVモーターは、エネルギー消費の削減とクリーンな空気の実現に貢献します。例えば、フォードの「エスケープ・ハイブリッド」を見れば分かりますが、このモデルはガソリン1ガロンで最長42マイル走行可能で、炭素排出量とガソリン使用量を削減できます。給油にかかる時間とお金を抑えつつ、より持続可能性に配慮した選択をしたい消費者にとって、一挙両得です。」
コンシューマー・レポートによると、HEVの所有者は、ガソリン使用量が減ることでかなりの金額を節約できる。従来のガソリン車と比べると、その額は廃車までの期間で4,000ドルにもなる*4。それだけでなく、公共のプラグイン充電ステーションで毎週何時間も待たされる不便さや、自宅に充電ステーションを設置する費用(数千ドル)からも解放される。
「HEVは、充電時間の節約という点でEVよりも優れた代替案になります。HEVはEVと違って航続距離の制限を受けずに低燃費を実現できます。これも、よりグリーンな未来に貢献したいと考える消費者にとってはメリットになります」と、HEV工場長のハリス氏は語る。
東芝インターナショナル米国社(TIC)のHEVマネジメントチーム:工場長のアキレス・ハリス氏(左端)、増村信慶氏(中央)
EVへの道をひらく
フォーチュン・ビジネス・インサイトによると、HEVの販売需要は、2023年から2030年までに年平均成長率7.3%で成長すると予想されている*5。しかしHEVは燃費向上を求める消費者の選択肢の1つに過ぎない。プラグインハイブリッド車(PHEV)やEVを購入することもできる。将来的には、技術の進歩や環境規制の変更、消費者トレンドの変化によって、さらに選択肢が増えるかもしれない。次世代バッテリー技術の開発と充電インフラの改善がEVの普及を後押しする一方で、車両価格の上昇やインフラ整備の遅れにより、バッテリー式電気自動車(BEV)の成長は、これまでのところ初期の予想よりも控えめになっている。
消費者のCO2排出に対する意識と電動化に対する関心の高まりを踏まえ、東芝はこのモーター技術に加え、SCiB™というEV用のリチウムイオン電池も製造しており、車の電動化を様々な方法でサポートしている。
「すべての自動車は電動化に向かっています」と増村氏は話す。「東芝は1990年代初頭から自動車のモーターを製造してきました。この分野で数十年の専門知識を持つ私たちには、HEVおよびEV技術の競争環境を乗り切る態勢が十分に整っています」と述べた。
HEVはあくまでEVへの移行を促すためのクルマと位置づけられているが、HEVの需要を無視することはできない。消費者の居住地や交通ニーズに応じて、HEVは今後も持続可能な交通手段を求める人々に不可欠な選択肢であり続け、充電インフラに依存せずに環境保全に貢献するだろう。
消費者がガソリン車からHEVへ、最終的には完全な電動化モデルへと移行するのに合わせて、東芝は今後も高度なモーター技術でこの変化を支援していく。電気自動車の未来に向けて準備は万全だ。