カメラ付き照明×AIで工場の課題をみえる化!作業効率・安全管理を改善

2024/08/09 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 照明とAIカメラの融合による工場の課題解決
  • AIが掘り起こす、映像の中に眠る情報
  • オフィスや教育・介護施設など用途が広がるViewLED Solution
カメラ付き照明×AIで工場の課題をみえる化!作業効率・安全管理を改善

人手不足やコスト削減、安全管理など、工場が抱える課題は山積している。しかし、具体的に「どこで・どのような問題が起きているのか」を正確に把握することは、非常に困難なのが実情ではないだろうか。目視による確認には限界があり、監視カメラの映像を常にチェックするのも現実的とは言えない。作業員の動線、作業手順、危険な場所への接近など、問題の核心が見えないまま場当たり的な対策に終始しているケースも多い。

こうした工場の問題をみえる化するための切り札が、東芝ライテック株式会社が開発した「AI画像解析サービス ViewLED Solution(ビューレッド ソリューション)」である。

照明交換だけでAI解析!人の動きを数値化

ViewLED Solutionの中核をなす「カメラ付きLED照明 ViewLED(ビューレッド)」は元々、照明器具に防犯や安全管理のためのカメラを融合したハイブリッド商品として開発された。照明器具とカメラの融合は、「なぜ、今までにそこになかったのか?」と思われるほどの高い親和性を誇った。それは、屋内にカメラを設置する際に問題となる次の3つの要素を高い次元でクリアしていたからである。

ViewLEDの特長

「照明とカメラが一体となったViewLEDなら、設置されている照明と取り換えるだけで導入は完了します。実際に、契約から2週間程度で稼働を開始した例もあります」と、東芝ライテック株式会社でViewLED Solutionの開発を担当した高柳氏は語る。

ViewLED Solutionは、ViewLEDで撮影した映像から、人の動き、作業時間、滞留場所、危険箇所への侵入などの情報を24時間365日取得し、クラウド上のAIにより分析して問題をみえる化するソリューションである。AI画像解析では、主に次の3つについて分析が行われる。

●人流分析
●侵入検知
●作業分析

人流分析では、人の動きを軌跡で表示することで、動線の見える化を可能としている。作業員の動線が見えることで、無駄な動きやボトルネックを発見し、作業手順の見直しやレイアウト変更を行うなどして、生産効率の向上を目指すことができる。

人物分析

侵入検知では、指定された検知エリアへの人の侵入を検知する。危険リスクが潜在するエリアへの侵入や、設備の停止に伴う作業者の手直しのための進入を検知し、その頻度を把握することで、設備の運用効率を定量的な数値としてみえる化できる。

侵入検知

作業分析では、作業者の手の動きを画像から解析することで、サイクルタイム(一つの作業にかかる時間)の自動計測が可能となる。このサイクルタイムの計測は、生産工程が計画通りに進行していることを数値として評価するための要素となる。他の作業に比べて著しくサイクルタイムの長い作業(ボトルネック)がわかれば、作業手順の見直しや、作業人数の調整をすることで、サイクルタイムのバランスを整え全体の効率を向上させることができる。

作業分析

ViewLED Solutionでは、こうしたAI画像解析をクラウドサービスとして提供していたが、2024年4月16日には、新たに「安全・見守りシリーズ」をラインアップに追加した。こちらは、オンプレミスでAI画像解析を行うことで、クラウドでのAI画像解析に比べて速やかな解析結果の通知を可能とする。AIが危険と判定した際には、パトランプ(回転警告灯)との連携などを経て、管理者だけではなく危険リスクに直面している当事者や周辺の作業者に、今そこにある危険を通知することを可能としている。

映像の中に眠る情報を、AIの力で掘りおこす

ViewLED Solutionは、ViewLEDを利用する顧客の声から生まれたサービスだと高柳氏は語る。

多くの顧客にとってViewLEDは、単なる監視カメラとして利用される製品ではなかった。工場の天井に設置されたViewLEDが記録する画像には、作業員の手の動きから、フォークリフトの動線まで様々なものが記録されていた。ViewLEDを利用する顧客は、これらの動作の記録を作業効率改善や安全管理のために利用していたのである。

しかし映像による記録だけでなく、AIで分析することで、人の手を煩わせることなく、さらなる課題を顕在化できるのではないか。そんな発見から、AIをかけ合わせるというアイデアはすぐプロジェクトとなった。サービス化する上で大きな助けになったのは、ViewLEDを製造する東芝ライテックの自社工場だったと、高柳氏は語る。

「顧客のニーズを聞き、どのようなサービスが求められるか、どんなデータを提供すれば良いのかといった検討をする上で、工場と密に連携して現場の声を聞く必要がありました。例えば安全管理サービスであれば工場内の安全管理エリアを訪れて、サービスが実際の現場で役立つかの検証を手伝っていただいたりなど、工場側には本当にたくさんの協力をしてもらいました。その協力なくして、ViewLED Solutionというサービスを実現することはできなかったと思います。開発者として、工場側にはとても感謝しています」(高柳氏)

東芝ライテック株式会社 照明・配線器具事業部 CPS開発部 高柳 佳幸氏

東芝ライテック株式会社 照明・配線器具事業部 CPS開発部 高柳 佳幸氏

ViewLED Solutionの肝であるAIを製品にかけ合わせるには、別部隊のAI開発者の力が必要だった。

私たち東芝グループには、数多くのAIの専門家がいて、様々な分野でAI分析を行っています。彼らと組むことできっと見えないものが見えてくるのではないかと期待しました」(高柳氏)

そこでAI開発者として本プロジェクトを担当することになったのが、東芝研究開発センター コラボレイティブAIラボラトリーの山地氏だった。

「ViewLED Solutionは、高柳さんたちから『こういう機能を実現したいんだ』という要望をうかがって、それを実現するための既存の東芝のAI技術を探して、足りないところは一から作って…という様に進めて行きました」(山地氏)

株式会社東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 コラボレイティブAIラボラトリー 山地 雄土氏

株式会社東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 コラボレイティブAIラボラトリー 山地 雄土氏

高柳氏らの要望を聞いて山地氏が最初に取り組んだのは、人物検出の精度向上だった。まずは画像の中から、正確に人を見つけることが必要だと考えたのだ。

「そもそも映像の中から人を見つけられないと、このソリューションは成立しないんです。侵入検知も人を見つけられなければ、指定エリアに侵入していることが分からないわけですから」(山地氏)

しかし、この人物検出の精度向上は、難航を極めた。というのも、通常の監視カメラから見る場合と天井から見る場合とでは人の映り方が異なるため、一から多様なデータを大量に学習させる必要があるためだ。さらに、人によって服装や姿勢が様々であるだけでなく工場内で床の色が違ったり、部分的にみると人に見間違えるような設備もある。ViewLED Solutionを導入する顧客に、床の色や作業着の色を指定するわけにはいかない。しかも、安全を担う以上、誤検出はできるだけ減らさなければならないという大きな課題が突きつけられたのだ。

 

天井俯瞰映像は監視カメラ映像とは見た目が大きく異なる

「とにかく、様々な環境や服装に対応できるよう、東芝ライテックの工場内で大量の画像データを収集しました。検出精度を上げるためにどんな画像が必要かリストアップし、高柳さんに撮影方法を考えていただくという流れを二人でひたすらやりました。工場側には撮影のたびに何度も何度もお願いしたので、しまいには『またですか!』って怒られたりして。でも、やはりここは同じ東芝グループ。必要性を説明することで、しっかりと協力してもらうことができました」(山地氏)

人物検出精度の向上のため、現場撮影された画像を確認しながら試行錯誤を重ねた

人物検出精度の向上のため、現場撮影された画像を確認しながら試行錯誤を重ねた

「試行錯誤を繰り返しながら開発した結果、実際に導入いただいたお客様からは『足を運ばずとも確認ができて便利』『従業員について現場の改善について話し合う機会が増えた』など評価を頂いています。そんなフィードバックを受けると、開発した甲斐があったなと、嬉しく思いますね。ViewLED Solutionはまさに、製品の設計・開発担当とAIの専門家、現場の協力が結晶化したものだと思っています」(高柳氏)

オフィスや教育・介護施設など。使用シーンの可能性広がる

「ViewLED Solutionには、まだまだできることがあります。むしろ、これからが本番なんだって思います」高柳氏、山地氏、二人は口を揃えてViewLED Solutionの秘められた可能性に言及する。

「工場以外にも用途を拡張していきたいと思っています。教育・介護施設なども可能性がありますが、今はオフィス用途について検討しており、現在、東芝の研究開発新棟にもトライアルとして導入を進めているところです」(山地氏)

東芝研究開発センター 研究開発新棟に人物検出AIを利用した照明制御システムを導入

「私は、お客様ごとにカスタマイズできるような仕組み作りを目指して行きたいと思います。お客様のお話を伺っていると、こちらが想定していないようなニーズがあったりして、それViewLEDでお手伝いできるのではないかと思うことがあります」(高柳氏)

東芝がこれまで蓄積してきた技術と、これから開拓していく技術、それらがViewLED Solutionの、今は誰も想像していないような新たな可能性の扉を開くのかもしれない。

山地氏と高柳氏のツーショット

関連サイト

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特長 | カメラ付きLED照明 ViewLED/AI画像解析サービス ViewLED Solution | 東芝ライテック(株)

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