生活を変え、ビジネスを変え、社会を変える東芝のAI

2020/03/11 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 複雑化する社会課題の解決に、デジタル技術の活用が注目
  • デジタル技術の核であるAIで、50年以上の豊富な実績がある東芝
  • 東京大学と共同開発したプログラムで、AI人材を育成
生活を変え、ビジネスを変え、社会を変える東芝のAI

人工知能(Artificial Intelligence: AI)を取り巻く技術は高度に発展し、それを使う我々のリテラシーも向上している。そんなAIへの期待の高まりから、活用分野は大きく広がり、将来的にAIが活用できない分野を探すのが難しいほど、まさにAI時代を迎えたといっていいだろう。

 

東芝は、1967年の世界初のOCR(光学文字認識)郵便区分機開発から現在まで、音声認識、画像認識、音声合成、翻訳、対話、意図理解などの分野で、AI技術を発展させてきた。AI関連の累積特許出願数については5,223件と世界3位、日本1位であり(※1)、世界でも有数の企業だ。そして、新たなAI時代を迎えた現在、「共創」で技術を深掘りし、「現場」の課題に寄り添って技術開発する東芝のAIが高い評価を持って注目されている。

 

東芝のAI技術を生かしながらデジタルソリューション事業を牽引するキーパーソンと、AI時代を切り拓く若手研究者、それぞれにビジョンを語ってもらう。

 

※1 世界知的所有権機関(WIPO)発行「WIPOテクノロジートレンド2019」

 

社会課題の解決に貢献する、東芝のデジタルソリューション

 

グローバルでのデジタル化の進展によってあらゆるモノと人がつながり、産業構造が大きく変わりつつある。同時に、世界が直面する社会課題は複雑化・深刻化している。例えば日本では、少子高齢化が進み、2050年には人口が1億人を下回ると予測され(※2)、経済縮小や労働者不足などが懸念されている。これらの社会課題の解決に向けて政府だけでなく、企業活動に対する期待が高まっている。特にデジタル技術を起点とした、業界や国境の垣根を越えたオープンイノベーションが注目されている。

 

※2 平成30年版 情報通信白書

 

 

「日本では女性の活躍推進や、移民政策など様々な方法が検討されている最中です。業務の効率化をAI、IoTなどによるデジタル化でカバーする取り組みも始まっていますが、一方で使いこなせるデジタル人材の獲得は激しさを増しています」
そう語るのは、東芝でデジタルソリューション事業を統括する執行役専務 錦織弘信氏だ。

 

株式会社東芝 執行役専務 錦織 弘信氏

株式会社東芝 執行役専務 錦織 弘信氏

 

「21世紀が始まってからの20年間は、GAFA(※3)と呼ばれるICT(情報通信技術)の巨人たちの時代でした。彼らは、デジタルという新しい波にいち早く乗り、サイバー空間のビジネスの広がりと共に自らの成長を果たしてきました。そして、現在、サイバーとフィジカルが融合した領域に注目が集まっています。世界が直面している複雑化・深刻化する社会課題を解決していくためには、現実世界のデータをサイバー空間で分析し、現実世界にフィードバックすることで新たな価値を創出するデジタルトランスフォーメーションが必要とされています」(錦織氏)

 

※3 GAFA:Google、Apple、Facebook、Amazonといったアメリカを中心とするICT企業

 

東芝が目指すのは、このサイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical Systems: CPS) を基軸としたCPSテクノロジー企業だ。そして、このCPSの実現に不可欠なのが、AI技術なのである。

 

CPSとは、現実世界のデータをサイバー空間で分析し、活用しやすい情報や知識として現実世界にフィードバックすることで価値を創造する仕組み

CPSとは、現実世界のデータをサイバー空間で分析し、活用しやすい情報や知識として現実世界にフィードバックすることで価値を創造する仕組み

 

「東芝には、140年以上にわたるモノづくりの歴史と、50年以上のAI研究の実績があります。これは、サイバーとフィジカルの両方を長年にわたって手掛けてきたという事実に他なりません。デジタルだけの企業にはできない、層の厚いフィジカルでの経験と長年にわたり信頼関係を培ってきた顧客基盤もあります。顧客のデータをより深く解析し課題を理解できるからこそ、CPSで課題解決を実現できるのです」(錦織氏)

 

東芝が手掛けるCPSの事例として、イギリスの鉄道運営会社であるGreater Anglia社における鉄道運行計画作成のプロジェクトがある。これは、実際の鉄道の運行に関わる様々なデータに基づいて、サイバー空間に現実世界(リアル)の列車運行環境を忠実・精緻に再現する「デジタルツイン」を構築し、運行計画の分析、各種条件下でのシミュレーションを実施するものだ。

 

「実際の鉄道を使って行うことの難しい各種シミュレーションをデジタルツイン上で行うことで、遅延リスクを評価し、列車遅延リスクの低減を図ることができます。顧客利便性・顧客満足度の向上、経営効率の改善につながる運行計画の策定を実現していきます」(錦織氏)

 

デジタルツイン説明図

 

グローバル化や多様性が進む現代。そこにおける社会課題も複雑化している。求められる価値を創造し、本当の意味でその国や社会を豊かにするために、今、企業に求められるのは共創だと錦織氏は強調する。

 

「社会課題には、一企業だけでは越えられないものが多く、業界さらには国境を越えた連携を通して、新しい価値を生み出すことが大きな原動力になります。長期的な視点を持って、どのような価値観でイノベーションを起こすのかという、波長合わせを最初にしっかり行うことも重要です。スモールスタートで立ち上げて、ビジネススケールの変化に応じて柔軟に拡張していくなどのニーズも高まっています。東芝はこうしたアプローチで、グローバルにCPSを活用した課題解決に取り組んでいきます」(錦織氏)

 

また、東芝が音声・言語と、画像の両分野において技術を醸成してきたことも、AIの社会実装においてアドバンテージになると考えている。例えば、音声・言語の分野では、ネットワークに接続していなくても、家電などエッジデバイス上で、キーワード検出と話者認識を同時に行うAI技術の開発を進めている。処理能力に制約があるエッジデバイスでも、ユーザーの声を聞き分け、ユーザーに合わせた機器の操作が可能になるものだ。画像分析の領域では、病理組織画像に対してAIが胃がん細胞のリンパ節転移巣を検知する、千葉大学と東芝デジタルソリューションの共同研究などがある。さらに、医療や社会インフラなどクリティカル分野でのAI活用に際し、AIの推論根拠を提示し人の判断を支援する「説明可能なAI」の開発も重視している。

 

AIがユーザーを認識し、ユーザーに合わせた機器動作をする例(左)、AIによる画像解析結果(緑色部分が、がん転移領域)(右)

 

こうしたAIの社会実装をさらに加速させるために、東芝はグループ全体でAI技術者育成に取り組み、2022年度までに2,000人体制への増強を目指している。

 

「世界有数のCPSテクノロジー企業として、さらに社会に貢献していけるように、もっと多くのAI技術者を育てていかなければならないと考えています」(錦織氏)

 

 

 

世界が求めるAI技術者は、AI専門家に非ず

 

東芝は、2022年度までに東芝グループのAI技術者を2,000人体制に増強するために、東京大学大学院情報理工学系研究科と共同でAI技術者育成プログラムを開発した。これは、古典的な機械学習から最新のディープラーニングに至るAI手法を学ぶだけではなく、東芝が保有する現場のリアルなビックデータを分析する機会を提供することで、より実践的なAI技術の習得を可能とするものだ。
東芝には、現在も700名を超えるAI技術者がいるが、これを3倍に増やす計画だ。だが、これをAI技術者の数の問題としては考えていない。東芝にとって必要なAI技術者は、AIという技術についての専門家ではなく、フィジカル空間の既存の専門分野にAIを応用することや、AIを使って新たなジャンルを切り拓くことができる人材なのだ。

 

東大とAI技術者育成プログラムを開発

 

「様々な分野の技術を持つ東芝とAIのコラボレーションから、どんな新しいイノベーションが生まれるのかとても楽しみです」
そう語るのは、今回のプログラムでAI技術を教える東京大学 大学院 情報理工学系研究科 特任講師の川上玲氏だ。

 

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 特任講師 川上 玲氏

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 特任講師 川上 玲氏

 

川上氏は、東芝と東京大学の産学連携プロジェクトがもたらす、AIの産業分野への新しい応用と、それらがもたらすAI研究へのフィードバックに大きな期待を寄せている。

 

「東芝の技術者との交流は、私自身の研究の方向性にも影響を与えてくれるほど刺激的なものです」(川上氏)

 

東芝社内では、既に成果が現れつつあるという。AI技術者育成プログラムのトライアルが2019年に行われ、それに参加した東芝研究開発センターの野﨑絵美氏は成果をこう語る。

 

「東京大学とのプログラムで学んだAI技術は、生物学を専門とする私の研究にマテリアルズ・インフォマティクス (Materials Informatics: MI) という技術を通して、力を与えてくれています」

 

MIとは、情報科学の手法を用いて、新しい材料や試料の探索を効率化する手法だ。

 

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター フロンティアリサーチラボラトリー 野﨑 絵美氏

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター フロンティアリサーチラボラトリー 野﨑 絵美氏

 

「がん細胞を光らせる私の研究では、使用する試薬に関して数千もの組み合わせを一つずつ実験して検証していかなければならない局面があります。例えばAIなら、ベイズ最適化という手法を用いることにより、数千の組み合わせから可能性の高い組み合わせを絞り込むことができるようになると期待しています」(野﨑氏)

 

野﨑氏は、AI活用に大きな期待を抱いているが、AI技術者育成プログラムに参加した当初は、生物学の専門家である野﨑氏にとって非常に困難な場面もあったという。

 

「広く浅い知識を持つ技術者を育成するために門戸を広げた、レベルの低いプログラムではありませんでした。本気でかからないとあっという間において行かれてしまうほどです。だからこそやりがいもありました。そして、このプログラムを通じて最先端のAI技術や今後の動向を知ることもできました」(野﨑氏)

 

プログラム終了後、自分の研究所に戻った野﨑氏はあることに気づいたという。

 

「これまで共同で研究をしてきたAI技術者の方々と私たち生物学者とで、同じ数値でも捉え方が違うことを知りました。自分とは違う捉え方があること知ることで、これまで以上に深い連携ができると確信しました」(野﨑氏)

 

錦織氏は、こうした技術者同士のシナジーに大いに期待をしているという。

 

「東芝には何でもそろっている、それで満足しては駄目なんです。若い技術者には外の人と交わる機会を与えたい。新しい技術から刺激を受けることが大切だと考えています。自分の専門分野だけでなく、もっと広い視野でものを見られるフレキシビリティのある技術者になってほしいですね」(錦織氏)

 

東芝は、140年以上の歴史を誇るモノづくりから、健康を守るための医療、そして身近な暮らしまで、すでに様々なジャンルにAI技術を展開している。AIはこれからも東芝が持つ様々な技術やリソースを進化させていくだろう。

関連サイト

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