リアルタイムデータが広げる可能性――「GridDB™」とともにインドで生まれる新たなアイデア
リアルタイムデータが広げる可能性――「GridDB™」とともにインドで生まれる新たなアイデア
2026/10/21 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- リアルタイムデータの価値を引き出すには、正確かつ継続的に処理できるデータ基盤が欠かせない
- 東芝の「GridDB™」は、リアルタイム性と信頼性が求められる業務システムを支えるデータベースとして活用が広がっている
- インドで開催したハッカソンでは、開発者やスタートアップから多彩なプロジェクトアイデアが生まれ、GridDB™の新たな活用の可能性が示された
IoT(Internet of Things)の普及により、機械やシステム、サービスからは膨大なデータが絶えず生み出されている。こうしたデータをビジネス価値へとつなげるためには、単に分析するだけでは十分ではない。処理の遅れや信頼性の低下は、意思決定の遅延や機会損失といったビジネスリスクにつながりかねず、システムを止めることなく、データを正確かつリアルタイムで処理できるデータ基盤が欠かせないのである。
この課題に対し、重要な役割を担っているのがデータベースだ。リアルタイムのIoT環境において、データベースは単に情報を保存するだけの存在にとどまるべきではない。データの損失やダウンタイムを伴うことなく、安定的な稼働、データの継続的な取り込み、そしてリアルタイムでのアクセスを支える必要がある。東芝の「GridDB™」は、信頼性とリアルタイム性能が不可欠な業務システム向けに特化して設計された分散型の時系列データベースとして、これらの要件に応える。
急成長するデジタル市場でのデータ基盤へのニーズを深く理解するため、東芝はスタートアップや開発者コミュニティーと連携している。その一例が、東芝がインドで開催した「GridDB Cloud IoTハッカソン」だ。ハッカソンから生まれたアイデアから、リアルタイムデータ活用の可能性を探る。
データ基盤の見直しが求められる理由
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、企業では設備や機器をデジタルシステムと連携させ、稼働状況をリアルタイムで把握・分析する取り組みが広がっている。そして、産業用IoTやCPS(サイバーフィジカルシステム)では、稼働中に絶え間なく時系列データが生成され続ける。
こうした環境では、データは後で分析するためだけに収集されるわけではない。多くの場合、高頻度かつ大規模に、そして長期間にわたって、システムの稼働中にデータを処理する必要がある。しかし、トランザクション処理(データの整合性を保つ方法)やバッチ処理(データを一括で処理する方法)向けに設計された従来型のリレーショナルデータベースは、こうした条件に適しているとは限らない。データ量が増えるにつれ、遅延や拡張性の制約、メンテナンスに伴うダウンタイムといった問題が、システムの安定稼働に直接影響を及ぼしかねないのだ。
東芝のデータ事業推進部で新規事業の開発を担当するスヘルマン アンガ氏は、データベースの重要性を次のように語る。
「CPSの真の強みは、データが生成されたその瞬間に知見を引き出し、すぐに行動に移せることです。リアルタイムシステムはそれを可能にしますが、情報を瞬時かつ確実に、業務を中断させることなく処理できるデータベースが不可欠です。そのため、データベースの役割は変化しつつあります。単なるデータの保存場所ではなく、業務サイクルの中で能動的に機能する役割になっているのです。GridDB™は、こうした変化を支え、大規模な環境においてもデータを途切れることなく瞬時に知見に変えることを可能にします」


世界で広がるGridDB™、急成長するインドのデータ活用市場
GridDB™の強みは、理念や設計思想だけにとどまらない。その価値は世界各地での導入実績にも表れている。GridDB™をクラウド上のマネージドサービスとして利用できる「GridDB Cloud」は、世界26の国と地域で提供されている。また、GridDB™のオープンソース版である「GridDB Community Edition」は世界中で無料ダウンロードができ、開発者や企業はそれぞれの利用環境で検証することができる。その反響は大きく、世界累計ダウンロード数は20万件を超え、そのうちインドは大きな割合を占めている。
インドでGridDB™への関心が高まっている背景には、急速に進むデジタル変革がある。インドでは、「Digital India」などの国家主導のデジタル政策が追い風となり、近年、幅広い分野でIoTが普及している。また、「Startup India」などの施策もイノベーション創出を後押しし、2026年8月上旬時点で、政府のスタートアップ支援ポータルに登録されたベンチャー企業は46万3,000社を超える。テクノロジーやビジネスが次々と生まれるにつれ、データ活用の需要も拡大している。インドは、今や世界のデータの約20%※を生み出しており、世界有数のデータ活用市場へと成長しているのだ。
※インド政府のプレスリリース Press Release Page | Press Information Bureau(英語サイト)
アンガ氏はこう説明する。
「インドでの活動を通じて、私たちは急速に成長するデジタル経済を目の当たりにしています。そこでは、膨大な量のデータが絶えず生成され、あらゆる分野で活用されています。GridDB™にとってインドは、単なる成長市場というだけでなく、大規模データへの対応力、コスト効率、そして信頼性が厳しく試される戦略的な環境でもあります。このような環境で数多く導入されているということは、GridDB™が実際の現場のニーズに応えるべく構築されていることを示しています。」

ハッカソンで生まれた新たなアイデア
東芝は顧客への提案活動に加え、スタートアップや開発者との共創にも力を入れている。その代表的な取り組みの一つが、2025年度にインドで開催した「GridDB Cloud IoTハッカソン」だ。
インド各地から250件を超える応募が集まったこのイベントは、開発者たちがリアルタイムデータをどのような課題解決に活用しようとしているのかを示す場となった。応募されたプロジェクトは、医療、金融、産業用IoT、エンタープライズシステムなど幅広い分野に及んだ。最終審査に進んだ5チームは、GridDB™の技術チームから直接支援を受けながら、実用レベルの概念実証(PoC:Proof of Concept)ソリューションの開発へと進んだ。

GridDB™の活用の幅広さが分かる代表例として、アンガ氏は以下二つを挙げる。
活用事例1:AI-DMS — 文書管理を業務システムとして再考する
このソリューションは、多くの組織が抱える文書管理の課題に着目して開発された。日々の業務の中で絶えずアクセス・更新・監査される大量の文書を、静的なファイルとして扱うのではなく、文書そのものやそのバージョン、ユーザーの操作履歴、監査ログを時系列データとしてモデル化する。
このアプローチにより、システムを稼働させながら、リアルタイム検索、役割に基づくアクセス制御、トレーサビリティ(履歴管理)を実現する。このプロジェクトは、IoT分野に限らず、高い信頼性と長期的な運用が求められる業務システムにおいて、リアルタイム性が高いデータ基盤の重要性が高まっていることを示している。

活用事例2:Smart Factory IoT Pulse — 現場の稼働状況をリアルタイムで見える化する
製造現場向けに設計されたこのソリューションは、稼働状況、生産数、エネルギー消費量など、高頻度でデータを生成し続ける機械同士を接続し、業務の進行に合わせて、それらの情報を可視化する。
稼働状況データ(テレメトリデータ)をリアルタイムに収集・分析し、ライブダッシュボードや業務KPIとして可視化することで、工場は、事後レポートに頼ることなく状況を監視し、問題が発生した際に素早く対応できるようになる。このプロジェクトは、GridDB™が産業現場における日々の業務状況の把握にどのように貢献できるかを示している。

アンガ氏はこのイベントをこう振り返る。
「今回のハッカソンでは、実社会に即した多様なプロジェクトアイデアが披露され、リアルタイムシステムへの需要の高まりが浮き彫りになりました。各チームは、継続稼働、信頼性、スケーラビリティといった要件を考慮してソリューションを設計しました。これは、GridDB™がこうした要件を的確に支え、プロトタイプの開発から実際の導入までをスムーズにつなげられることを示しています」
共創から広がるリアルタイムデータ活用の未来
インドのデジタル化の勢いは、政策的な後押しやIoTの幅広い普及、そして活発なスタートアップに支えられ、加速を続けている。今回のハッカソンで生まれたプロジェクトアイデアは、世界の潮流を象徴する事例の一つといえる。スタートアップや開発者たちは、リアルタイムデータを活用して新たなサービスやソリューションの創出に挑んでいるのだ。
東芝は、インドだけでなく、GridDB Cloudを提供している世界26の国と地域で、スタートアップとの長期的な協業を目指すべく、2026年6月に「GridDB™ Startup Program」を開始した。このプログラムでは、GridDB Cloudのリアルタイムデータを活用したアプリケーションを共同開発するとともに、有望なアイデアの社会実装を後押しする。
「スタートアップには、インフラ管理に時間やリソースを取られることなく、アイデアの検証やプロトタイプの開発、さらには事業拡大に挑戦できる環境が必要です。GridDB™ Startup Programは、現在は海外での取り組みですが、ゆくゆくは日本でも実施できればと考えています」とアンガ氏は意気込みを語った。
東芝グループが共有し大切にしている「私たちの価値観」には、「変革への情熱を抱く」と「ともに生み出す」がある。GridDB™を通じた取り組みは、まさにその価値観を体現するものだ。開発者やパートナー、顧客との共創を通じて、社会を支えるリアルタイムシステムの可能性を広げていく。その挑戦は、インドだけでなく世界各地へと広がり始めている。

参考サイト
GridDBハッカソンギャラリー(英語サイト)
https://gallery.griddb.net/
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