デジタルトランスフォーメーション デジタルと人のパラドックス

2018/09/12 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)とは“デジタル”によってビジネスの構造を変える“変革”を引き起こすこと。
  • 第三次産業革命と第四次産業革命は何が違う?
  • 主役であるべき”人”を支えるDXの本質とは?
デジタルトランスフォーメーション デジタルと人のパラドックス

デジタルトランスフォーメーション(DX)。今、これをキーワードに、シェアリングエコノミーやSNS、ネットショッピングなど世界が大きく変わろうとしている。一つひとつは身近な変化であっても、DXと聞くと、私たちの生活から遠いサイバーの世界の出来事のように感じ、頭を抱えてしまうビジネスパーソンも多いだろう。

 

だが、第四次産業革命という地殻変動の中、企業が生き残るためにはDXは避けられない条件である――そう断言するのは、東芝 デジタルトランスフォーメーション戦略統括部の丸山竜司氏だ。

デジタルトランスフォーメーションとは?

東芝が考えるDXとは、“デジタル”によってビジネスの構造を変える“トランスフォーメーション(変革)”を引き起こすことです」(丸山氏)

株式会社東芝 デジタルトランスフォーメーション戦略統括部 丸山竜司氏

株式会社東芝 デジタルトランスフォーメーション戦略統括部 丸山竜司氏

言うは易く、行うは難し。米国や中国などと比べると、日本企業におけるDXの取り組みは後手に回っているといえよう。

 

「理由をあえて言えば、戦後復興や高度経済成長時代の成功体験から抜け出せないからではないでしょうか。今は遅れを取っていたとしても大丈夫かもしれません。一定数の顧客は残り、既存事業は回ります。しかし、近い未来、DXの潮流が閾値(いきち)を超えると、そうした企業は一気に淘汰されるリスクが大きいのではないでしょうか」(丸山氏)

戦後の日本は少ない資源ながらも工業化を推し進めてきた(昭和29年、『東芝姫路工場創立50周年記念誌』より)

戦後の日本は少ない資源ながらも工業化を推し進めてきた(『東芝姫路工場創立50周年記念誌』昭和29年より)

敗戦後の日本は資源の乏しさなどの課題を逆手に取り、臨海工業地帯の開発や輸出入の拡大、産業立国となる上で重要な技術開発などに邁進した。資源が乏しい国であることは今も同じ。その上、資源は決して無限ではないという認識も一般化した。このような中で、太陽光発電や風力発電が再生可能エネルギーとして注目を浴びていることは周知の事実だ。

 

「基本的には太陽光も風もそれ自体のコストはゼロです。ただ、常に安定して供給されるわけではないことが大きな課題。これは、デジタル化による需要と供給のより精緻な予測や、電力の需給バランスの最適化などで解決できます。これもDXの一つです。」(丸山氏)

東芝は業界でも数少ない、多様な発電システムと系統制御を包括してエネルギーアグリゲーション(※)を行う総合エネルギー企業だ※エネルギーアグリゲーションとは、デジタル上で資源と需要を統合し需給バランスの調整を行うこと。

東芝は業界でも数少ない、多様な発電システムと系統制御を包括してエネルギーアグリゲーション(※)を行う総合エネルギー企業だ
※エネルギーアグリゲーションとは、デジタル上で資源と需要を統合し需給バランスの調整を行うこと。

第四次産業革命が起きている今、世界を変えつつあるDX。だが、これは、パソコンが急激に普及した1990年以降、注目されてきた第三次産業革命におけるIT化とは何が異なるのだろうか。それを追求すると、“人”がカギというDXの本質が見えてくるのだった。

デジタルなのにあくまで主役は人!?

第三次産業革命はサイバーの世界が中心であるのに対し、第四次産業革命はサイバーとフィジカルが融合した世界に立脚したものだといえるでしょう。

 

※「サイバーの世界」とは、インターネットが形成する情報空間のこと。「フィジカルの世界」は、身近な生活など物理的な環境の意。

 

第三次では情報化を意味するIT(※)という言葉が盛んにうたわれました。例えばパソコンであればCPU(※)の性能を上げることに重きが置かれたのです。しかし、今ではネットワークが高度化し、さらにはAIも加わって、モノとの結びつきを意味するIoT(※)という言葉が注目されています

 

※ITはInformation Technology、IoTはInternet of Thingsの略。CPUとはパソコンの頭脳に相当する中心的な処理装置のこと。

 

すなわち、第四次におけるDXは情報技術だけではなく、物理的な生活環境を含むフィジカルな世界とも密接に結びついているのです。これからを生きる人々は、サイバーとフィジカルが連携する世界を知る必要があるといえるでしょう」(丸山氏)

第三次産業革命と第四次産業革命の違い

第三次産業革命と第四次産業革命の違い

コンピューターをベースとしながらも、フィジカルな世界に直結する分、第四次産業革命のマグニチュードは第三次産業革命とは比べ物にならない。私たちの身の回りの生活との親和性がDXを後押しし、社会を大きく変えようとしているのだ。

 

これは企業にとって脅威でもありチャンスでもあります。モノづくり企業はモノづくりだけでは勝てない時代なのです。とはいえ、これまでの事業と全くかけ離れたことをしなければならないというわけではありません。東芝であれば、これまで培ってきたモノに対する知見や技術をベースに、従来から提供してきたハードウェアやシステムをDXによってどのように再価値化するか。これはそのままお客様のポテンシャルの最大化や課題解決、価値の創造へとつながります」(丸山氏)

従来からの提供物をDXにより顧客価値へと変換する

従来からの提供物をDXにより顧客価値へと変換する

最後に丸山氏に東芝が考えるDXの本質を問うと、それは“デジタル”ではなく、“トランスフォーメーション”にあるとのこと。

 

「ドイツなどではDXは自動化・省力化という文脈で語られることが多いように感じます。しかし、DXはサイバーだけでなくフィジカルの世界にも軸足を置いたもの。『デジタル』という語感からすると、パラドックスに聞こえるかもしれませんが、私は人が主役だと思うのです。技能者や技術者の経験や知見、五感までをもデータ化し、それにより世界を、主役であるべき“人”の未来をトランスフォームしていくのが、東芝の考えるDXの本質です。

 

東芝はこれまでモノづくり、すなわちハードウェアやシステムを通して、人と物理的な世界とのインタフェースの重要な部分を担ってきました。それはDXを進めていっても変わりはありません。デジタルという先進性だけに価値を置くのではなく、人間の未来を明るくするためにDXを実行する。ここに東芝が必要とされる理由があるのではないでしょうか」(丸山氏)

「DXは人が主役」と述べる丸山氏

「DXは人が主役」と述べる丸山氏

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