画像から瞬時に密集を計測 AIは人の目を超えた

2020/12/21 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • コロナ対策をはじめ、画像から密集を計測したいニーズが高まっている
  • 東芝は画像に映る人の密集度を高精度かつ瞬時に計測するAIを開発
  • 独自の深層学習手法が世界トップレベルの人数測定精度を叩き出す
画像から瞬時に密集を計測 AIは人の目を超えた

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の対策が世界的な課題となる中、公共施設・集合施設は様々な感染予防対策を講じている。その一つが密集対策である。既に複数設置されている防犯カメラの画像から、人の密集度を高精度に計測し、迅速に通知し、人々の「密」な状態を未然に回避したいというニーズが高まっている。もともと、防犯カメラの画像を用いた人の密集度の計測は、以前から駅や空港、商業施設などでトラブル回避に有効だとして注目されてきた経緯がある。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、さらにその注目が高まっている。

 

東芝は一般的なPCにも搭載させているCPU上でカメラ映像をリアルタイムに解析して人数や密集度合いを計測できる、新しい手法のAIを開発した。これはコロナ禍の密集対策はもちろん、公共施設の混雑抑制、大規模イベントの円滑な運営、事件・事故の検知など様々なニーズに応えるものだ。プロジェクトを主導した研究開発センター メディアAIラボラトリーの山地雄土氏が、開発の背景を解説する。

株式会社東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー 研究主務 山地雄土氏

株式会社東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー 研究主務 山地雄土氏

CPU上でも高速、かつ高精度に密集を計測するために 

「世界の防犯カメラの設置数は2022年まで10億台に達するといわれています。今後も加速度的に増加するとみられ、このインフラによって空港等の公共施設や商業施設でトラブル、事故を招きやすい人の密集状態を迅速に検出し、人数や混雑状況を高精度に計測するニーズが高まっています。また、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、密集状態を迅速かつ高精度に検知する技術にも注目が集まっています。こうした様々なニーズの高まりを受け、人々の密集度合いを検知することの重要性は増す一方なのです」(山地氏 以下同)

 

近年、こうした群集計測AIは高度に進化。ディープラーニング(深層学習)を活用し、かなりの超高密度な集団もカウントできるようになっている。しかし、深層学習方式の解析はGPUなど画像処理に特化した高価な専用演算装置が必須だ。コストがかさみ、公共施設・商業施設が大規模に導入するためには大きな障壁ともなっている。山地氏は、一般的なPCにも搭載されているCPUにより、高速で群集計測ができるシステムを開発。この障壁に大きなブレイクスルーをもたらした。

 

「私たちが開発した群集計測AIは専用のGPUを必要とせず、一般のパソコンのCPUでも解析が可能なものです。一般的なデスクトップPCを用いると、1分間で最大180台のカメラ画像を処理できます。これは大規模な商業施設、公共施設での運用にマッチするものでしょう」

クラウドやエッジPCのCPUで解析が可能になることを説明した図

 

世界トップレベルの精度を実現しつつ、汎用化を視野に入れる

この群集計測AIの特長は軽快な使いやすさだけではない。撮影した動画をAIで解析すると、人の密集度と画像に映る人数を高精度に推定できることも特長である。独自のアルゴリズムの開発により、世界トップレベルの人数推定精度を達成したのである。

様々な大きさで映る頭部の推定に対応したネットワーク構造を説明した図

 

「この精度を可能にしたのが、様々なサイズで映る『頭部』の推定に対応したアルゴリズムです。カメラの近くに映る人物と奥に映る人物は映り方が違いますから、同じ大きさに区切って解析するのは難しい。そこで、人物が重なっても見えやすい頭部を手がかりに、頭部が小さいところは小さく、頭部が大きなところは大きく画像を格子状に区切って解析することで、その間に何人いるのかを推定する。そんなアルゴリズムを構築しました」

 

このアルゴリズムによって、一定の人数に達した密集エリアを検知してアラートを出したり、施設マップと連動して分析したりすることも可能になる。例えば、渋谷のスクランブル交差点を行き交うような膨大な人数ですら、瞬時にカウントできるのだ。その精度は開発者の山地氏自身もが驚いたほどで、もはや人の目に近づいているというより、カウントや解析する能力は人を超えたといっても過言ではないだろう。

 

性能を改善しながら、独自の実装で大幅な高速化を実現することを説明する図

 

こちらが学会で発表された公開データセットである。このプロジェクトで開発した手法を適用することにより、平均推定誤差は世界トップレベルの性能を達成。精度・速度のバランスがよく、独自の実装で汎用性も加えて競合への優位性を確保する。

 

「もっとも、ディープラーニングの世界は進化のスピードが速いものです。『世界トップレベルの性能』とうたっていますが、その後匹敵するモデルも登場しています。ただ、私たちは追いつき追い越せと精度改善を進めながらも、あくまでユーザーにサービスを届けるという視点で開発を進めています。2020年度中に学会発表することを目指していましたが、コロナ禍もあってさらなるスピードアップをしました。実証実験を手堅く進め、感染症対策の密集検知にいち早く投入できればと考えています」

 

計測・検知の対象は人物だけにとどまらない。対象を自動車にしたら渋滞解消に向けた車両数解析サービスになるし、対象を箱にしたら高度なロジスティクスを支える在庫管理システムにも組み込めるだろう。来たるべき社会実装を目指し、かかる期待は大きい。

 

「東芝グループは大規模から小規模まで様々な工場を持っており、社内で実証実験を進められるのもメリットになっています。グループ内への横展開、そしてコロナ対策を見据えた様々な業界との共創を視野に入れ、さらなる機能向上を目指していきたいです

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