ジャパンラグビーを育てた 廣瀬選手が語る究極のリーダー論

2016/02/17 Toshiba Clip編集部

ジャパンラグビーを育てた 廣瀬選手が語る究極のリーダー論

ジャパンラグビーの人気が止まらない。2016年1月24日に行われたLIXIL CUP 2016ファイナル「東芝ブレイブルーパスvsパナソニックワイルドナイツ」では、24,000人を超えるファンが集結し、今シーズンのチャンピオンを決める一戦を盛り上げた。

 

試合終了間際、意地のトライを決め、決まれば優勝というコンバージョンキックは惜しくも外れ、東芝は1点差でパナソニックに敗れた。しかしその健闘を讃えて客席からは大きな拍手が送られた。選手、チーム、観客が一体となって感動を分かち合った瞬間だった。この一戦により、多くの人が改めてラグビーの魅力を体感したに違いない。2019年のワールドカップ日本大会へ向け、国内のラグビー熱は高まるばかりだ。

ジャパンラグビーを支え続ける男

東芝ブレイブルーパス 廣瀬俊朗選手

そんなジャパンラグビーの成長を支え続けている男がいる。東芝ブレイブルーパスの廣瀬俊朗選手だ。廣瀬選手は高校、大学、東芝、日本代表とすべての組織でキャプテンを経験しており、エディー・ジョーンズ氏に「自分がラグビー界で経験した中で、ナンバーワンのキャプテン。日本代表の根幹をつくったのは間違いなく彼だ」と言わしめるほど、キャプテンシーに優れていることでも有名だ。

 

2015年に日本代表の主将を外れてからも、廣瀬選手はチームのために自分に何ができるのかを熟考し、相手国の動きを徹底研究した。コーチ陣からも南アフリカのアタック分析を頼まれるなど、チームの戦略を立てるうえでも重要な役割を果たしたほか、自主的に関係者700人からのエールVTRを制作し、南アフリカ戦前に控え室で上映。ベンチ入りこそ果たせなかったものの、チームの団結を促し歴史的な勝利に貢献した。

 

今回はそんな廣瀬選手にラグビーの第一線で培った、組織をひとつにするためのリーダーの心得を訊いた。

勝つチームには大義がある

インタビューに答える廣瀬選手

勝つチームには大義があります。これはラグビーに限らず、すべての組織に共通していることだと思います。そのチームがなぜ存在するか、という意義を皆で考え、共有できるチームは強い。というより、それがないとチームはなかなか前へ進めないんです。私が日本代表でキャプテンを任されていたとき、エディーと常に口にしてきたのは、”日本のラグビーのファンを幸せにできる喜び”と”日本ラグビーの新しい歴史を築いていく楽しさ”の2点でした。実を言うと、エディーには最初の頃、苦手意識をもっていました。これでもかというくらいにきついことを言うし、言葉のかけ方も辛辣です。しかし、彼は日本ラグビーを変えたいという大義を持っていた。だからこそ、一緒に頑張れたという気がします。ラグビーという素晴らしいスポーツに多くの人に触れてもらいたい、そして、そのために私たちは勝利を目指す。それが日本代表の大義となっていました」

 

勝つためにプレーをするのではなく、ファンにラグビーの素晴らしさを伝えるために勝利を目指す。後者のような大義を皆が共有することで、たとえ試合に負けてしまったとしてもそこには必ずチームの「ストーリー」が生まれる。実際にワールドカップの時も、選手たちは日本代表を応援してくれる人たちとともに喜びを分かち合えるようなプレーを精一杯しようと心掛けていたという。果たして、結果は素晴らしいものとなったが、たとえ結果が出なかったとしても、チーム全員がそういった想いでプレーをしているチームというのは、非常に強い組織に違いない。次の機会に向け、必ず成長していけるだろう。

 

「ですから、リーダーはどんなに拙い言葉でもよいので、自分の言葉で話をしなければいけません。初めから大義を語ることが難しいなら、自分の言葉で自分の想いを語ればいい。きっと誰しもがチームのメンバーに思っていることがあるはずです。それを素直に伝えればいいんです。私の場合であれば、大事な試合の前には”みんなのことが好きで、みんなと試合ができることが本当に幸せだ”という感謝の気持ちを伝えます。そこから、”ここで日本のラグビーファンを喜ばすことができるのは自分たちだけだ。だから、その使命を果たせる幸せを感じながらプレーしよう”と大義にまで踏み込む。大義があることで、人はつらいことがあってもその先の喜びを想像することができます。使命感が生まれ、頑張れる。そうするとチームが動き出すんです。そのためには、リーダーが自分の言葉で大義や想いを語ることが不可欠だと思います

よりよいリーダーになるために、個人としての進化を楽しむ

プレー中の廣瀬選手

リーダーとして組織をまとめるためには、やはり個人としても進化をしていかなければならない。向上心や能力がない頼りない人物に、人は魅力を感じないし、ついていこうとも思わない。逆に、リーダー自身が精一杯成長しようとしている姿を見れば、自分も頑張ろうと思うだろう。しかし、リーダーも人間だ。すべてが万事快調にいくわけではない。高い壁にぶつかり、うまくいかないときはどうすればいいのだろうか。

 

「人生はどう頑張ってもうまくいかないときもあります。そんなとき私は”逃げても同じ壁にぶつかる“と考えるようにしています。壁の高さに怖気づき、諦めてしまうことは簡単です。しかし、迂回しても結局いつかまた同じ壁にぶつかる可能性が高い。それなら今頑張ってしまった方がいい。壁の乗り越え方は、人それぞれですから正解はありません。真正面から向き合い、忍耐強く考え、行動し、自分を信じてやるべきことをやる。それだけですね。ただ、どんなに頑張っても、乗り越えられないこともあります。そういうときは変に落ち込まず、次の機会まで待てばいいんです。たくさん考えて、勇気を持ってチャレンジしたのであれば、後悔することはありません。大事なのは同じ失敗を繰り返さないこと。うまくいかなかった理由を十分に考え、自分なりの結論を出す。そうすれば、少しだけでも必ず成長していけるはずです」

 

しかし、指導する立場の時は、少し視点を変えなくてはならないと廣瀬選手は語る。

 

「例えば、部下が壁にぶつかっている場合、自分から見ると簡単なことに思えることもありますよね。しかし自分にとっては簡単でも、相手からするととても大変だということは少なくありません。そういうときは、相手の立場になり、一緒に考える必要があります。自分が積極的に相手を正解に導くのではなく、相手が自分で考えられるようにする。その人なりのやり方で壁を乗り越えることが、個人の成長につながっていきます。なかなか難しいことなので、自分も完璧にはできないですが、日頃から相手とコミュニケーションを図り、距離を縮めることで、少しずつ相手の立場に立って考えることができるのではないかと思っています」

未来への可能性を拡げるには

インタビューに答える廣瀬選手

「私はいつも今を頑張ることが大事だと思っています。先を見るのではなく、今を一生懸命生きることで可能性を拡げていく。そうすることで、素晴らしい経験や人との出会いを得ることができるし、いろいろなものに感化されながら成長していけるのだと感じています。ただ、先を見ないといっても、目標ややりたいことは沢山あります。例えばいまは、障害者スポーツがもっと知られるような活動をしていきたいですね。人生はずっと勉強です。これからもそのことを忘れずに生きていければと思います」

 

廣瀬選手の思考はラグビーだけでなく、ビジネスにも応用がきく示唆に富んだものだ。チームが何を目指すかという目標があっても、大義がないことで、通常手段であるはずのものがいつのまにか目的化してしまうことも多い。何のために数字を残すのか、このチームは何のために存在しているのか、そういったことを真摯に考えることで、チームにより多くの実りがもたらされるはずだ。また、常に向上心を持つことは、ビジネスの枠にとどまらず、人生そのものにおいても大切なことだ。「私は成長していくのが好きです」と語る廣瀬選手の活き活きとした表情からは、充実した毎日を送っていることが伝わってくる。その熱い眼差しには、多くの人を共感させるリーダーとしての資質が宿っていた。

廣瀬俊朗(ひろせとしあき)選手
プロフィール

廣瀬俊朗(ひろせとしあき)選手

1981年、大阪府吹田市生まれ。
5歳からラグビースクールへ通い、学校のクラブではサッカー、バスケットボールも経験、バイオリンをやっていたという一面も。
文武両道で進学校の北野高校から慶應義塾大学理工学部機械工学科に進学。
現在は電力・社会システム技術開発センターに所属。
トップリーグのシーズン中も、オフィスでの仕事と府中事業所内ラグビー場での練習の両方をこなし、忙しくも充実した日々を送っている。

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