ICTの力で戦略立案や選手強化を! 日本ラグビーはさらなる進化へ――!
2017/01/11 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- W杯合宿ではドローンの俯瞰映像を活用
- ラグビー×ICTの今後を考察
- 私たちの観戦の仕方も変わる
スポーツも科学と無縁ではない昨今、競技を取り巻くさまざまな場面で、ICTの活用が進められている。
とりわけ陸上競技や野球、サッカーなどにおいては、早い段階で映像情報機器が導入されてきたが、目覚ましい躍進を遂げる日本のラグビー界でも、映像アナリティクスの活用は着々と進められている。
果たして、「ラグビー×ICT」の組み合わせによって、日本ラグビー界にどのような可能性が開けるのか?
現役時代に東芝ブレイブルーパス(東芝ラグビー部)主将、そして日本代表主将を務めるなど、最前線でラグビー界をけん引してきた廣瀬俊朗氏に話を聞いた。
廣瀬俊朗元選手。現役時代は、東芝ブレイブルーパス(東芝ラグビー部)主将、日本代表主将を務めた。キャプテンシーに優れ、日本代表当時の監督エディー・ジョーンズ氏には「自分がラグビー界で経験した中で、ナンバーワンのキャプテン」と評された。
「課題の発見にも、長所の発見にも映像は有効」
日本代表チーム全員にタブレットが支給されるようになったのは、3年ほど前のこと。
海外では当たり前だったICTツールの活用が、日本のラグビー界でもさらなるレベルアップを目指して始まった。
「それまでは、クラブハウス内に設置された共有パソコンで、映像を確認したい者だけが適宜使用するかたちを採っていました。15人という大人数で行うスポーツでありながら、プレー中に一人ひとりが視認できる範囲は限られていますから、こうした映像チェックの意義は大きいでしょう。ただ、共有パソコンでは、なかなか自分の都合で使うことができませんでしたから、タブレット支給はありがたかったですね。練習でも試合でも、撮影した映像データはすぐにクラウド上にアップされるので、選手は皆、いつでも映像を確認できるようになりました」
これはトレーニング外の時間効率に、大きく貢献していると廣瀬氏は語る。しかし、映像を記録して分析に生かすことは、競技の特性上、実は容易ではない。
ラグビーでは両チームあわせて30人もの選手が複雑に動き回る
15人対15人という人数規模も理由の1つだが、それに加えて選手の動きのバリエーションが多く、複雑であることも映像分析の障壁となる。
動作もスピードも姿勢も、各選手とも局面に応じてさまざまであり、決まった型がない。
「その点、2015年から日本代表のトレーニングに導入された、ドローンの存在は大きいですね。俯瞰でプレーを確認することによって、攻守のバランスや空間の生まれ方など、チームの癖がよくわかるようになりました。タックルした選手が起き上がって走り始めるスピードなど、個々の動きも把握できます。チームの課題を見つけるにも、逆に強みを見つけるのにも、こうした映像チェックは有効だと思いますね。その反面、選手にとっては、コーチにすべて映像で見られてしまうので、片時も気を抜くことができなくなりましたが…」
進む映像アナリティクスの活用
5歳でラグビーを始めた廣瀬氏にとって、練習風景を真上から俯瞰する映像はことさらに新鮮で、「まるでテレビゲームのようだ」と感じたという。ドローンには広角レンズ4Kカメラが搭載され、フィールドの隅々までが鮮明に記録できる。これが、戦略立案や選手強化のための最高の材料となり、かつてない恩恵がもたらされた。
東芝 廣瀬俊朗氏
「最初は頭上を飛び回るドローンの音に戸惑いましたが、試合を終えた帰りの車中で、早速その日の映像をチェックできるのはメリットですよね。たとえば、ボールを持っていない時の動きにミスがなかったかなど、記憶が新鮮なうちにあらためて客観視することで、多くの発見が得られます」
さらに東芝ブレイブルーパスでは、東芝インダストリアルICTソリューション社による映像アナリティクスの導入、活用が進められている。クラウドコンピューティングとディープラーニングの組み合わせで、選手やボールの複雑な動きを、センサーなしでマッピングするなど、AIの活用が研究されているのだ。
選手やボールをセンサーなしで認識
「AIがさらに進化して、”相手のチームはこのスペースに隙がある”など、プレー中には気づきにくいポイントをいち早く教えてくれるようになったりすると便利ですね」
選手・ボールの動きをマッピング
「また、ラグビーはどうしても、一般の方からすると分かりにくい競技です。これからいっそう競技に注目が集まる中、ICTの活用で少しでも見やすくなればいいですね。たとえば揉み合いの中でボールが今どこにあるかなど、画面で追って見せられるようになれば、よりこの競技に親しんでくれる人が増えるのではないでしょうか」
ラグビーでは選手が密集してボールが判別しづらい場面も多い
幼少期から慣れ親しみ、今春までプレイヤーとして活躍してきた立場だけに、こうしたICTの導入には驚くことばかりだという廣瀬氏。この先の未来には、さらに強くなった日本代表チームと、その活躍に熱狂するファンの姿がはっきりとイメージできる。
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