日本は世界3位の地熱資源国! 地熱発電のさらなる可能性を追う

2017/06/21 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • FITによる日本の買取価格は高額で、地熱発電に有利な条件が整っている。
  • 業界でも珍しい標準機仕様の小型地熱発電設備「Geoportable™」は国内、海外でのニーズが高まっている。
  • 「Geoportable™」によって、地域の活性化がもたらされている。
日本は世界3位の地熱資源国! 地熱発電のさらなる可能性を追う

2011年に発生した東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの需要と関心が急速に高まっている。太陽光や風力、水力など、さまざまな発電方式が見直されている中、今後は時間や天候に左右されず、安定発電が可能な地熱発電への注目が益々高まっていくと言われている。1つのカギとなりそうなのは、東芝が開発した小型地熱発電設備「Geoportable(ジオポータブル)」だ。

年間6億円規模の安定収入につながる地熱発電

「Geoportable」の開発に携わる、東芝・エネルギーシステムソリューション社の前泊淳一郎氏(火力・水力事業部 火力プラント技術部)は、地熱発電事業の可能性について、次のように語る。

東芝・火力プラント技術部の前泊淳一郎氏

東芝・火力プラント技術部の前泊淳一郎氏

「国の施策である固定価格買取制度(FIT)により、日本では今、15,000kW未満の地熱発電で得られた電力が1kWhあたり40円という高値で取引されています。つまり、1時間で2,000kW生産できれば、それを8万円で売ることができる。これは海外諸国と比べ、破格の条件といえます」

 

さらに、地熱発電は太陽光や風力のように、時間帯や気象条件に左右されることがない。これは大きな強みだ。

 

「1時間あたり2,000kWの生産効率を、24時間ランニングした場合、単純計算で1日192万円の売り上げとなります。それが365日続けば、年間およそ7億円。実際にはメンテナンスその他の事情で稼働率を8割としても、5億6,000万円の売電収入が確保できることになります」(前泊氏)

 

これは事業モデルとしても、非常に優秀なものといえる。そこで、限られた敷地で環境への影響を最低限に抑えながら地熱発電事業を運用するために、「Geoportable」が最適な手段となるわけだ。

世界3位の地熱資源を擁する火山国・日本

地熱発電とはそもそも、マグマによる地下の熱エネルギーを利用する発電方式である。地中奥深くの高温マグマ層が、やはり地中奥深くに浸透した雨水をその熱によって高温高圧の蒸気や熱水に変える。そしてその蒸気や熱水が地下1,000〜3,000メートル付近に蓄積されていく。これを掘り当てて取り出し、タービンを回して発電するのだ。

地熱発電の仕組み

火山国である日本は、地熱に恵まれた国である。各国の地熱資源量の比較を見ると、1位のアメリカが3,000万kW、2位が多くの火山島からなるインドネシアで2,800万kW、日本はこれに次ぐ2,300万kWで、世界第3位の地熱資源国といわれている。資源の乏しい国土において、これを使わない手はないはずだ。

 

「実は第一次石油危機翌年の1974年に『サンシャイン計画』という通商産業省工業技術院主導の新エネルギー技術開発計画が発足し、そこに地熱資源の活用もありました。その後、さらに『ニューサンシャイン計画』もあり、国主導で地熱発電を推し進めたという歴史がありました。しかし、地熱発電は地熱資源調査の難しさ、それに費やす多額なコストを要する事業であるため、国の補助制度が撤廃されると次第に廃れてしまった経緯があります。その意味では、現在のようにFITで高値取引が保証されている状況は、地熱発電所の普及に大きな追い風といえるでしょう」(同)

熊本県・わいた地熱発電所で成果を挙げる「Geoportable

一方でその特質上、地熱発電に適した立地は、どうしても温泉地と重なることになる。そのため、地下を掘り下げる工程が源泉に影響を及ぼすのではないかとの懸念から、地域の賛同が得られにくい側面があるのも事実だ。

 

Geoportable™

そこで、できるだけコンパクトな運用が求められ、開発されたのが「Geoportable」だ。出力2,000kWに対応するフラッシュ方式(地中からの蒸気と、熱水を低圧にて気化させた蒸気を直接タービンに入れて発電する方式)の小型地熱蒸気タービン・発電機のセットは業界内でも珍しく、省スペースで据付工期が短いことから、国内だけでなく海外からも広く運用が求められている。

 

「小型であるため、本来であれば発電に適さないとされていた温度帯でも、手軽に運用できるのは大きなメリットでしょう。一度掘った井戸を、無駄なく運用する補完的なシステムとしてのニーズもあります。また、2,000kW以下であれば新たに高圧電線を引くことなく送電でき、周辺環境への影響も最小限にとどめられます。例えば2015年に『Geoportable』が運転を開始した、熊本県阿蘇郡小国町のわいた地熱発電所でも、周辺の温泉地との折り合いをつけながら、理想的なかたちで地域のメリットにつなげられています」

 

わいた地熱発電所では、「Geoportable」を使った小規模な地熱発電所運営を行うとともに、定期的な温泉モニタリングなどで地域の貴重な資源である温泉へ配慮し、豊かな地熱をそのまま経済力に変えながら、活性化を果たしている。全国で地方創生が進められる世相に鑑みれば、コンパクトな地熱発電に対する国内ニーズは、まだまだ拡大の見込みがありそうだ。

東芝・火力プラント技術部の前泊淳一郎氏

■出典
NEDO 再生可能エネルギー技術白書第2版
http://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf

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