スマートプラネットに手を伸ばせ――東芝「みんなのDX」の進路

2021/11/18 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • ものづくりの技術を培ってきた東芝が、全社を挙げてDX・CPSの推進に注力!
  • 現場からCPS事業のタネを提案し、経営者とも視点共有。上下両面でCPSに向き合う
  • SDGsの先にある未来を示す、GAFAがなし得ない東芝ならではのDXとは?
スマートプラネットに手を伸ばせ――東芝「みんなのDX」の進路

新型コロナウイルス感染症による混乱では、医療・行政にとどまらず、日本のデジタル化の遅れが注目された。大きな課題として突きつけられたのが「データ基盤の整備」である。感染者の把握や接種証明の発行、給付金の支給に至るまで後手に回った。一方、データを共通プラットフォームで利活用し、オードリー・タン氏がIT政策を指揮する台湾のコロナ封じ込めは、代表的なデジタル化の例だろう。「データの世紀」とも言われる現在、人々に安心と幸せをもたらし、新たな価値が創出されるフロンティアは、やはり「データ」にある。

 

東芝は「世界有数のCPS※1(Cyber-aPhysical Systems)テクノロジー企業」になることを目指し、全社一丸となってDX(Digital Transformation:デジタル変革)に取り組むことを経営方針に掲げる。CPS事業は、データを中心に新たな価値の創出を目指す。その志は「みんなのDX※2」という運動体となり、グループ全体を巻き込んで疾駆し続ける。CPS事業を牽引する執行役上席常務 最高デジタル責任者の島田太郎氏、そしてリーダーとして「みんなのDX」を推し進めるCPS戦略室 CPSビジネス推進チームの岩本晴彦氏が語る本気の土台作り。彼らが紡ぐ構想からは、東芝だからできる「未来の地球の描き方」が見えた――。

※1 現実世界のデータをサイバー空間で分析し、活用しやすい情報や知識としてフィードバックすることで価値創造する
※2 データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデル、組織、プロセス、企業文化・風土などを変革すること

株式会社東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者 島田 太郎氏 CPS戦略室 CPSビジネス推進チームリーダー 岩本 晴彦氏

株式会社東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者 島田 太郎氏
CPS戦略室 CPSビジネス推進チームリーダー 岩本 晴彦氏

価値創造の軸としてのDX――東芝が本気で進める「みんなのDX」とは

CPS事業が目指すもの。それは人が中心であり、幸せになるDX2.0の世界です。現在、世界を見渡せばGAFAをはじめ、巨大ネットワークと膨大なデータを使って事業を推し進めるジャイアントが闊歩し、データを独占しています。それはDX1.0のモデルです。しかし、ノーベル経済学賞を受賞したインドのアマルティア・セン氏らが提唱するように、一部の企業がデータを独占するシステムには限界が見えています」(島田氏)

 

こう語るのは、東芝のCPS事業を進める執行役上席常務 最高デジタル責任者・島田太郎氏。たとえば、コロナ禍ではまさにデータが問題になった。流通網にマスクがあっても価格は高騰し、店頭では行列や買い占めが発生……社会全体でのデータ利活用は、待ったなしで進めなければならない。ただし、それはあくまで「人が中心で、幸せになる」前提があってこそ。CPS事業が目指すデータ利活用の場は、公共のためのコミュニティ・エコシステムだ。それは人類共通の目標であるSDGs、東芝の理念「人と、地球の、明日のために。」とも通底する。

 

データの利活用で価値を創出するには、企業も変わらなければならない。島田氏は「人が年齢を重ねるように、現在・未来においてデジタルの影響を受けずにいられる人は誰ひとりとしていません。これは自明です。だからこそ、全員が自分の頭で考えてビジネスと業務をアップデートさせていかなければなりません。『みんなのDX』はそのためにあります」と言葉を継いだ。

ボトムアップとトップダウンの両面アプローチがDXを浸透、深化させていく

CPS戦略室が進める4本柱の取り組み

CPS戦略室が進める4本柱の取り組み

「みんなのDX」を通し、東芝の組織、個人はいかにして価値提供力を上げていくのか。CPS戦略室 CPSビジネス推進チームリーダー・岩本晴彦氏が説明する。

 

「東芝のDXでは、特定の人だけがDXに取り組むのではなく、東芝グループの従業員全員が取り組みます。『人任せ・他人ごと』ではなく、従業員全員が『自ら・自分ごと』としてDXに取り組んでいくために、『みんなのDX』という名称でプログラム展開しています。従業員全員が取り組むことでDXが加速度的に進み、事業への貢献が大きくなるためです」(岩本氏)

 

東芝はグループ全体でDXに取り組み、CPSでの価値創出を目指す。そのビジョンの解像度を高め、活動を進めるのが「みんなのDX」という旗だ。

 

「全社でDXを推進し、既存事業のCPS化と新たなCPS事業を創出していくために、大きく4つの施策に取り組んでいます。1つ目が、デジタル文化醸成・実装とデジタルビジネス創出を目的とした社内ピッチ大会(ビジネスプランコンテスト)です。2つ目が、CPS事業のタネの育成・事業化を加速するための社内ファンド設立による、実効的なプロジェクトを後押しする投資です。3つ目が、スタートアップ等の外部企業との共創による、既存市場の枠を超えたビジネスモデルの創出です。4つ目は、私たち自らが事業プロデューサーとなり、社内やパートナー企業と連携した事業化の推進です。

 

現在、CPS事業のタネが200件以上集まり、そのうち50件以上が事業化に向けた実践プロジェクトとして推進されるなど、変革の手応えを感じています。私は2019年に東芝に参画しましたが、150年近いものづくりで培われた多くの先端・次世代技術にいつも驚かされています。ここにデータとデジタル技術を活用したビジネスモデル変革を実装できれば、今まで以上に社会に価値を提供できる。そんな期待を感じています」(岩本氏)

 

全社でDXを推進していく上で、岩本氏はグループ内のDSO※3やDX推進リーダーと密に連携・コミュニケーションを取ることを大切にし、DXを実装するための下地を作ってきた。トップマネジメントだけではなく、裾野を広く取ってDXに向けたアイデア創発を喚起する。ここに、グループ内の組織、メンバーが「自分ごと」としてDXを考える「みんなのDX」の意義がある。

※3 DSO(Digital Strategy Officer)。グループ社内に置かれているデジタル責任者

「みんなのDXはトップダウン、ボトムアップの両面でアプローチしてきました。デジタル文化を醸成・実装し、データとデジタル技術を活用したビジネスモデルを育て、経営計画に反映することがねらいです。DXを推進するのに魔法のような解決策はなく、じっくりコミュニケーションを取り、一つずつ課題を解決していくしかないと考えています。最近では『面白いアイデアを思い付いたのですが、これは単なる物売りだからDXではないんですよね・・』といった反応がグループ内のメンバーから出始めており、デジタル変革が着実に進んできた手応えを感じています」(岩本氏)

 

ボトムアップ、トップダウンの二面で経営計画への反映・実現を目指す

ボトムアップ、トップダウンの二面で経営計画への反映・実現を目指す

東芝が実現する、地球の明日――スマートプラネットを目指して

CPS戦略室は、DX推進・CPS事業実現のために様々な施策を展開してきた。その一つがオープンイノベーションだ。これまでグループ全体がそれぞれの事業領域で強みを発揮し、岩本氏が感嘆したように無数の技術資産、知見が集積している。しかし、内部でのビジネス検討だけでは既存顧客や業界の商慣習、規制などの慣性が強く、発想や視点が既存の枠に囚われてしまうこともあるだろう。そこで、スタートアップ等の外部企業との共創によって、内部にはない視点・知見・技術等を活用して、新たな収益源の開拓やアイデアの拡大・転換による事業創出・事業拡大を推進している。たとえば、IoT機器やWebサービスを自由に組み合わせ、新しい価値を簡単に実現できるIoTプラットフォーム「ifLink」を活用した、コミュニティ・エコシステム「ifLinkオープンコミュニティ」がある。ここでは、業界の垣根を越えて多くの企業が共創できる。

 

ifLinkオープンコミュニティ プライベートカンファレンス招待状(12月1日15:00開催)

島田氏は、強みという軸足の重要性を強調する。その上にDXを起こすことで、デジタルの力を真の意味で生かせるからだ。強み・軸足とDXの組み合わせを、島田氏は守破離の概念で次のように語る。

 

「軸足があることで、自らを変革するDXが意味をなします。このことを守破離の3段階になぞらえると、守『強みの技術をデジタルで生かす、ビジネスの型を理解し、体得する』、破『型にそって試行してみる。実践して、各事業が知見を磨く』、離『実践者が増えて自走・展開が進み、経営計画に盛りこめる規模になる』。みんなのDXは守破離の伴走者であり、それぞれの強みを大事にしながら自律的な自己変革を促します。それが目指すべき最終段階です」(島田氏)

 

CPS事業が目指す4つの条件と目指す姿

CPS事業が目指す4つの条件と目指す姿

そして、島田氏は、CPS事業が満たすべき条件を次のように整理する。①データセントリックであり、②自社アセットを活用し、③ライトアセット(デジタルの利活用)であり、④リカーリングモデル(売り切りではなく、継続的に収益を得る、かつ顧客接点も維持)というものだ。その結果、事業を継続し、社会に貢献していくための「高収益」「高成長」が可能になる。

 

これらの条件を満たした上で、最終的に選ばれる事業は、東芝の理念に沿うかが問われる。「人と、地球の、明日のために。」――より良き世界を目指すものとなっているか。「みんなのDX」でも、その指針に変わりはない。最後に岩本氏、島田氏の言葉を確認する。

 

「東芝が真価を発揮できる事業を追求すれば、エネルギーや社会インフラの領域でデータとデジタル技術を活用した新たな価値を創出し、人の幸せを実現するスマートプラネットが見えてくるかもしれません。東芝の技術、人材を考えたらできるはず。私たちはそう信じて、『みんなのDX』でデジタル変革を推進しています」(岩本氏)

 

「あらゆる組織がSDGsへの貢献を掲げていますが、そこには『データ』についての言及がありません。つまり、データを活用して持続可能な社会を目指す道筋は、まだ見つけられていないのです。持続可能な社会に関わる広い事業を140年以上も続け、デジタルの知見、技術を練磨する東芝。私たちには、SDGsの先にあるデータの地平を切り拓き、新たな世界を示す責務と能力があるのです」(島田氏)

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