実現はもうすぐそこに!? 自動運転車が創りだす未来の社会とは

2016/11/30 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 自動運転レベルは4段階で定義されている
  • ロボットタクシーが実証実験実施
  • インバウンドサービスでの需要も期待
実現はもうすぐそこに!? 自動運転車が創りだす未来の社会とは

自動車産業そして、日本の交通事情を大きく変えるといわれている自動運転。2017年のヒット商品予想(※)で「自動運転システム搭載車」が1位にランクインするなど、幼い頃に思い描いていた未来の世界が、着々と実現に向かっていることを実感する人も多いだろう。
日々国内外で自動運転の開発が進められているが、実際はどの程度実用化に近づいているのだろうか――?

 

※出典:博報堂生活総合研究所
自動車

政府も積極的に後押しする、自動運転車の実証実験

自動運転は大きく4つのレベルに分けて定義されている(下表参照)。すでにレベル1は実用化されており、システムがハンドル操作を行うレベル2が2017年、そしてドライバーがまったく操作しないレベル4「完全自動運転」が実用化されるのは2020年代後半とされている。

自動走行システムの実現に向けたロードマップ

自動走行システムの実現に向けたロードマップ
出典:内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」(※1)

日本国内に限っていえば現在はレベル2の実用前段階とされているが、完全自動運転に向けてすでに公道での実証実験もスタートしている。
たとえば今春には、神奈川県藤沢市の一般道で、実際にロボットタクシー社の自動運転タクシーが走行し、大きな話題を集めたばかりだ。この実証実験は、神奈川県内の一部のエリアが「さがみロボット産業特区」として認可されて行われたものだ。実際に市民を乗客とし、大手スーパーと連携して買い物支援などを行った。

 

今後いっそうの高齢化が進むことで、交通弱者の移動手段をどうするか、という問題がさらにクローズアップされることになるのは自明。研究開発を進めるロボットタクシー社の、「2020年までのサービス開始を目指す」という言葉に、巷間の期待が寄せられている。

 

ほかにも、近年のインターネット通販の発達により、物流を担う人手の不足が叫ばれて久しいが、自動運転はその解消やコスト抑制にも貢献できるはずだ。このように、我々の生活に直結するメリットは少なくないだろう。

インバウンドサービスでの活用にも期待

また訪日外国人需要への対応にも、自動運転にかけられる期待は大きい。観光庁がまとめた「宿泊旅行統計調査」によれば、2015年の外国人宿泊者数は延べ6561万人と、調査開始以来の最高値をマーク。

 

さらに特筆すべきは、三大都市圏(東京・大阪・京都)と地方部の外国人宿泊者数を比較すると、三大都市圏が39.2%増であったのに対し、地方部合計では59.6%増と、地方部の伸びが三大都市圏を大きく上回っていることだ。つまり、外国人観光客が目指すスポットは、全国各地へ拡散傾向にあることがわかる。

2014年~2015年の外国人延べ宿泊者数の推移(地方部・特に伸びが大きい県を抜粋)

2014年~2015年の外国人延べ宿泊者数の推移(地方部・特に伸びが大きい県を抜粋)
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(平成27年・年間値(確定値))」(※2)を元に作成

運転免許を持たない外国人は、当然公共の交通機関をメインに利用することになるが、そもそも地方では本数が少ない上、外国語に対応できないタクシーをスムーズに使いこなすのも困難だろう。実際旅行中に困ったことに公共交通手段が挙がっている。

外国人旅行客が旅行中困ったこと

外国人旅行客が旅行中困ったこと
出典:経済産業政策局「第4次産業革命への対応の方向性」(※3)

そこで、AIによる多言語対応も可能な自動運転車が待望されるというわけだ。こうした計画が理想的な形で実現すれば、インバウンド需要のいっそうの拡大も見込め、日本経済を潤すことにつながるかもしれない。

 

スマホやタブレットで行き先をセットすれば、あとは乗り込むだけで、自動で目的地へ運んでくれる――。ほんの少し前まで、SFの世界だけのものと思われていた技術が、実現まであと一歩の段階に到達している。

 

2020年代後半には、人々を取り巻く生活環境は一変しているのかもしれない。自動運転が社会にもたらす恩恵を想像しながら、官民による研究の推移を見守りたい。

 

※1 内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」
※2 観光庁「宿泊旅行統計調査(平成27年・年間値(確定値))」

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