スマホを使って看板を翻訳 インバウンド対応はここまで進化した!

2017/02/01 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • インバウンドサービスは顧客体験が重要
  • 訪日前から滞在中、帰国後までトータルでサポート
  • 日本語表記を撮影するだけで翻訳可能
スマホを使って看板を翻訳 インバウンド対応はここまで進化した!

観光庁のまとめによれば、昨秋、2016年の訪日外国人観光客が2,000万人を突破。この勢いはとどまるところを知らず、政府は2020年には4,000万人規模にまで引き上げるという目標を掲げている

訪日外国人旅行者数の推移

※2016年の数値はJNTO(日本政府観光局)が法務省の協力を得て、独自に推計した1月~10月30日までの累計による速報値
※2020年の数値は政府の掲げる目標値
出典:日本政府観光局 報道発表用資料「訪日外国人客数2,000万人突破」(※1)、国土交通省 観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」(※2)

しかしその反面、ひところ見られた「爆買い」の勢いは衰え始め、2016年夏季(7~9月期)の訪日外国人旅行消費額は9,717億円と、前年比2.9%減というデータもある(※3)。

 

そもそもインバウンド需要は、まだまだ東京や大阪、京都といった、世界的な知名度を持つ人気都市に偏っているのも事実。今後の訪日外国人観光客増を見込めば、他の地方都市の需要喚起は不可欠だろう。

 

こうした趨勢にならい、軽井沢・プリンスショッピングプラザでは、インバウンドサービス支援システムの実証実験が実施されている。軽井沢は国内で高い人気を誇るスポットでありながら、訪日外国人の集客はまだまだ少ないエリア。そこで、外国人観光客の誘致を狙い、訪日前からの情報配信から滞在中、帰国後まで、インバウンド対応をトータルでフォローするサービスパッケージが試験的に運用されているのだ。

軽井沢・プリンスショッピングプラザで実施中の実証実験

今回のインバウンドサービス支援システムは、かねてより東芝が開発を進めてきたもの。

 

同社では昨年にも、福岡・天神地下街でも同様の実験を実施済み。今回の軽井沢・プリンスショッピングプラザでは、さらに機能を拡充して実験を行っている。

東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 神字芳彦氏

東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 神字芳彦氏

「軽井沢・プリンスショッピングプラザではこれまで、訪日外国人といえば香港や台湾からの観光客が中心でした。そこで今回の実証実験では、主に中国人旅行者にターゲットを絞り、中国で普及する通信アプリ『WeChat』を活用した訪日前プロモーションを始め、専用アプリのダウンロードに誘導。このアプリを介して、販促情報の配信や電子決済、さらには新たに画像認識技術を用いた”看板翻訳”機能の運用テストを進めています」(東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 神字芳彦氏)。

 

『WeChat』は、中国版LINEともいうべき定番アプリ。軽井沢の観光情報を中国人向けに編集し、昨年8月から本格的な配信をスタートしている。

 

実験は2017年3月までを予定しており、とりわけ「2月の春節に合わせた大量動員を目指して、いっそうプロモーションを強化していく予定」(東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 入澤瑛美氏)であるという。

東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 入澤瑛美氏

東芝テック サービス・ソリューション事業開発部 新規事業企画室 入澤瑛美氏

“看板翻訳”機能は付随情報も表示

今回配布された専用アプリでは、施設内に配備されたビーコン網を元に、自分の現在地や目的のショップまでのルートを分かりやすく表示。さらに店舗情報やクーポンのプッシュ配信など、観光客にとって必要な情報が一元管理できるのが特長だ。

アプリを使ったスタンプラリーの画面

アプリを使ったスタンプラリーの画面。施設内9箇所のスタンプスポットにいくことで、スタンプをゲットできる。集めたスタンプでビンゴを達成したら景品をもらえる仕組み。

さらに「看板翻訳」が、言葉の壁の問題解決をサポートする。

東芝テック オートID・ソリューション事業推進部 商品企画部 伊藤健二氏

東芝テック オートID・ソリューション事業推進部 商品企画部 伊藤健二氏

「これはプラザ内で見かけるショップの看板や飲食店でのメニューなど、日本語で書かれたものをカメラで撮影し、文字部分を英語訳するものです。画像の文字部分を指でなぞると、OCR機能(アナログの文字をデジタルの文字データに変換する機能)の稼働範囲が特定され、読み取られた日本語が自動的に英訳され、表示されます」(東芝テック オートID・ソリューション事業推進部 商品企画部 伊藤健二氏)

 

さらに特筆すべきは、これが単なる翻訳ツールにとどまっていない点だろう。

 

例えば食事メニューが英訳されても、外国人観光客にはその内容が分かりにくいものもある。とりわけアレルギー体質の持ち主にとっては、原材料情報は重要だ。そこでこのアプリでは、飲食店のメニューを翻訳した際、英語訳と一緒にアレルゲン情報までが併記される機能を備えているのだ。

 

現状では情報をアプリ利用者の入力に頼っているため、すべてのメニューに対応しているわけではないが、アレルギー体質の持ち主にとっては心強いツールとなるだろう。

看板翻訳機能操作画面

看板翻訳機能操作画面。日本語メニューの英語訳のほか、元のメニューにはないアレルゲン情報が表示されている。

将来はクラウドAIとの連携も視野に

看板翻訳デモ動画。
この動画は2017年1月18日に公開されたものです。

さらには、すでに運用中のクラウドAIサービスとの連携も視野にある。前出のアレルゲン表示機能も、機械学習と組み合わされば大幅な機能向上が見込めるはずで、訪日外国人に提供できる恩恵は大きい。

 

日進月歩の分野だけに、2020年までにまだまだ目覚ましい進化を遂げるに違いない。

【後編へ続く】

 

※1 日本政府観光局 報道発表用資料「訪日外国人客数2000万人突破」
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20161102_2.pdf

 

※2 国土交通省 観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」
https://www.mlit.go.jp/common/001126601.pdf

 

※3 国土交通省 観光庁「訪日外国人消費動向調査」
https://www.mlit.go.jp/common/001149545.pdf

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