地熱発電の可能性 Made in Japanのエネルギー誕生へ

2016/01/13 Toshiba Clip編集部

地熱発電の可能性 Made in Japanのエネルギー誕生へ

エネルギー消費大国でありながら、エネルギー自給率が6%とエネルギー資源のほぼ全量を海外に頼るなど深刻な問題を抱える日本にとって、純国産エネルギーの確保は急務となっている。

 

しかし、東日本大震災以降、現在、再稼働に向け準備をしているものの、国内原子力発電所の大半が停止していることや、世界的な共通意識となっている環境への配慮など、純国産のエネルギーを確保するために考慮するべき点は決して少なくなく、わが国のエネルギー問題をより複雑なものにしている。

 

そんな状況に光明を照らすのは、世界第3位の資源量が日本の国土に眠っているといわれている地熱発電の存在だ。クリーンかつ安定的なエネルギーであるうえ、資源量、技術力ともに世界トップクラスであり、日本のエネルギー事情を大きく変える可能性を秘めている。

 

にもかかわらず、これまで大型の新規開発が進んでこなかった理由としては、高額な開発コストや、開発適地の大半が国立・国定公園内にあるため立地上の制約が大きいことなど、電気事業者にとって他の発電方法と比較した時に開発のメリットが少なかったことが挙げられる。しかし、最近では政策支援の拡大や充実により、全国各地で地熱発電所の建設プロジェクトがスタート。徐々に拡がりをみせている。今回は、日本のエネルギー問題の将来を担う存在となりつつある地熱発電の現在を特集した。

地球の活動がエネルギー源に

発電方式別CO2排出量

再生可能エネルギーの中でも地熱発電は、天候や昼夜といった自然環境に左右されないため、非常に安定したエネルギー源となる。そのうえ、二酸化炭素の排出も少ないという特長をあわせ持つ、まさに現代の社会に最適な発電方法のひとつだが、その仕組みは一体どのようなものなのだろうか。

地熱エネルギーの利用方法

日本は火山や温泉が非常に多いことでも有名だが、それは豊富な地熱エネルギーに恵まれているということでもある。地熱発電では、この火山の下のマグマの熱を利用する。地下に浸み込んで地熱貯留層に溜まった雨水はマグマのエネルギーで熱水になり、やがて蒸気が発生する。熱水と蒸気が混合したものを「地熱流体」と呼ぶが、それを採取し①「汽水分離機」で飽和蒸気と熱水に分離する。蒸気をうまく取り出し、その力で②「タービン」を回転させ③「発電機」で電気を作るという仕組みだ。

 

タービンで仕事をした蒸気は④「復水器」に送られ、⑤「冷却塔」から供給される冷却水によって凝縮され熱水に戻った後、ポンプで冷却塔へ送られる。熱水はここでさらに冷却され、システム全体の冷却水として使われる。前述の使用済みの蒸気を凝縮させるために使った冷却水もここで作られたものだ。また、余剰分の冷却水は、汽水分離機で分離された熱水などとともに地中へ戻される。戻された水は再び地熱により蒸気となり、循環再利用されていく。システム自体が循環を促す仕組みになっているほか、地下に溜まった水が熱せられ蒸気になるという活動は半永久的なものであるため、地熱発電では常にエネルギー源が再生されることになる。

 

地熱発電を陰で支える技術

地熱発電用タービン
地熱発電用タービン

海外からの燃料資源の輸入に頼らず、自国の安定的な自然資源を活用できる地熱発電には大きな期待が寄せられているが、現段階では日本の電力の多くを担うには様々な課題が残っている。

 

東芝の地熱発電システムにも使用されている「ドレインキャッチャー」は、地熱発電ならではの問題を解決した、システムを陰で支える技術の一つだ。

ドレインキャッチャー
タービンの翼に刻まれた「ドレインキャッチャー」

地熱発電は蒸気の力を利用してタービンを回すが、蒸気が持つ高い湿度はタービンの効率を下げることにつながる。ドレインキャッチャーは、蒸気の凝縮で発生した湿分をタービン翼の前面に刻んだ溝でとらえ、タービンの外へと除去する。これにより、湿分が発生しても効率を下げることなく発電をすることが可能になった。

 

また、地中から取り出した蒸気には、腐食成分を含む不凝縮性ガスや、砂などの固形成分が含まれている。特に不凝縮性ガスのひとつである硫化水素は有毒で銀や銅系の材料に対して腐食性が強い。そのため、地熱発電システムの材料選定には注意を払う必要があったが、コバルト合金などの特殊なコーティングをタービンに施すことで、システムの腐食を防ぐことに成功した。

 

一見小さなことに思えるようなひとつひとつの丁寧な工夫が、クリーンで安全な発電システムの普及へ向けて大きな推進力となっている。

世界で活躍する東芝の地熱発電システム

東芝は、1966年に日本初の地熱発電所向けにタービン・発電機を納入して以来、様々な工夫を重ね、現在では北米、欧州、東南アジア、オセアニアなどへシステムを納入。世界シェア26%を誇る世界No.1の地熱発電システムメーカー(出典:Bloomberg New Energy Finance 2015年7月)へと成長を遂げた。国内外を合わせた累計発電出力は約340万KWにも上り、それぞれの国の環境条件に最適な設備を実現してきた東芝の技術力への信頼も高い。

世界の地熱発電開発の長期予測

世界の地熱発電開発の長期予測

地熱発電は今後もさらなる進化を遂げていくことが予想されており、日本エネルギー経済研究所の調べでは、2050年には従来の技術だけでも70GW、天然の熱水や蒸気が乏しい場合に水を送り込んで蒸気や熱水を得る技術である「高温岩体発電(EGS)」が確立されれば、合計で140GWにも達する見込みだ。大型の地熱発電システムの開発はますます進んでいくとみられるが、そういった状況ではそれぞれの建設場所の地熱蒸気の条件に応じて最適な発電システムを組むことが、より一層重要になってくる。

 

特に日本においては、これまで温泉の湧出量に影響が出るとされ、地元の温泉組合との共存が難しいケースもあった。このようなケースの場合、例えば小型地熱発電プラントの開発が非常に有効になる。タービンを小型化することで敷地面積を最小限に抑え景観への配慮をするとともに、生産井からの蒸気や熱水を発電利用後に全量地下に還元することや、さらには1~2本の温泉井戸でも発電可能なシステムを実現するなど、温泉湧出量へ影響しないよう配慮されたプラントが活躍するだろう。

 

東芝ではそういった新しいプラントの商品化を目指し、地熱発電のさらなる発展、普及を目指している。豊かな社会を次世代へつなぐため、日本の将来に欠かせない存在となりつつある地熱発電。その着実な進歩へ向け、これからも東芝の高い技術力が日本のエネルギー業界の未来を牽引していく。

この動画は2016年1月13日に公開されたものです。

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