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足元を流れる「都市資源の一大水脈」 下水から生まれるバイオエネルギー


足元を流れる「都市資源の一大水脈」 下水から生まれるバイオエネルギー

この記事の要点は…
全国に下水処理場は約2,200カ所存在

下水処理場での発電、肥料生産が注目される

処理場のガスCO₂を分離する技術に注目

キッチンやトイレから出た生活排水、汚水が向かうのは下水処理場だ。しかし、汚水はただ「処理」されるだけではない。発電や農業漁業、さらに微細藻類ユーグレナ培養に活用されていることをご存じだろうか。

東芝、佐賀市、株式会社ユーグレナ、日環特殊株式会社など6者が参画した「下水道革新的技術実証事業(B-DASH)」にフォーカスし、省エネ&創エネの新しいアプローチに迫る。

そもそもB-DASH(Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High technology project)とは、下水道における新技術の研究・実用化を推し進めるための実証事業。基幹企業となるユーグレナ、日環特殊とも下水道業界でのビジネスは初めてになるため、下水道システム事業に40年以上のキャリアを持つ東芝が代表企業として統括を担った。

「B-DASHに採択されるためには、実証フィールドになる自治体と共同で実施しなければなりません。私たちが組んだのは、バイオマスの有効活用を進めていた佐賀市です。下水処理で発生する消化ガスからCO₂を取り出し、有効利用できないかという発案があり、東芝のCO₂分離回収設備が名乗りを上げました」(東芝 水・環境システム事業部 峰哲哉氏)

バイオガス中のCO₂分離・回収と微細藻類培養への利用技術実証事業

B-DASHで採択された「バイオガス中のCO₂分離・回収と微細藻類培養への利用技術実証事業」のイメージ。東芝は日本下水道事業団・佐賀市・株式会社日水コン・株式会社ユーグレナ・日環特殊株式会社とタッグを組んだ。
※クリックで画像拡大(別タブで開きます)

「佐賀市のバイオマス産業都市構想では、処理した水を活用して海苔の養殖、脱水汚泥による肥料生産、消化ガスを活用したガス発電と、さまざまな取り組みを続けてきました。さらに他に使える資源を探したところ、下水中の栄養分、消化ガスから分離したCO₂を利用した藻類培養に着目。B-DASHに参画したのです」(佐賀市 下水エネルギー推進室 岡氏)

佐賀市など、6者がタッグを組んだ一大プロジェクト

佐賀市実証施設のCO₂分離・回収設備

佐賀市実証施設のCO₂分離・回収設備

B-DASHでは、ユーグレナの培養と、ユーグレナによる下水中の窒素やリンの低減効果の実証が衆目を集めた。この藻類は動物と生物の両方の性質を備え、光合成を行うことができるほか、水中の窒素、リンなどを栄養源とする。
今回のプロジェクトでは、分離回収設備によって高濃度で取り出されたCO₂、そして下水に含まれる窒素とリンが、栄養源として利用された。さらに、窒素やリンを含んだユーグレナの飼料や肥料への利用可能性も検討されている。

東芝 水・環境システム事業部 峰哲哉氏

東芝 水・環境システム事業部 峰哲哉氏

「実証事業の始動は2015年8月ですが、試験のデータ提出は2016年3月。私たちに与えられた時間は限られていました。分離施設は数時間で結果が出ますが、生き物であるユーグレナはそうはいきません。培養結果の検証、分析には1カ月を要します。8月から設備を造成して間に合うのか?さらに、これまで石垣島の奇麗な水、ボンベの二酸化炭素という温室育ちの藻類が、下水由来の栄養とCO₂で育ってくれるのか?これまでの事業にはないハラハラ感がありました」(峰氏)

大雪など想定外の自然トラブルも乗り越え、B-DASH実証施設は2016年2月に落成。心配されたユーグレナも新しい環境ですくすく育ち、将来への大きな可能性を感じさせた。

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