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五感を使って親子で楽しい食事を! Foodtechへの新たな挑戦


五感を使って親子で楽しい食事を! Foodtechへの新たな挑戦

この記事の要点は…

「食」という身近な社会課題からアイデアを創出

「親も子も食事を楽しめる社会」に向けて、外部の専門家と共創

SXSW2019への出展を通して見えた将来像

みんなが困っていることは何だろう。それをどうやったら東芝が解決できるだろう。
東芝の社内横断アイデア創出プロジェクトで生まれたのは、子育てを経験したことのある方ならばその多くが悩んだであろう「子どもが食事に集中しない」困りごとを解決するシステム「Sizzleful(シズルフル)」。食器の蓋を開けたり、料理を食べたりすると、音楽や音声が流れたり、映像がトレイに映ったりして、五感を使うことで子どもが食べることに前向きになれる。

アメリカ合衆国テキサス州オースティンで行われる音楽・映画・インタラクティブを組み合わせた世界最大級のイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」への出展を目指し、約2カ月半でプロトタイプを作り上げた共創の舞台裏をのぞいてみよう。

社会の身近な課題をアイデアの起点に

東芝では、社会課題を起点として、10年~20年後のニーズを探り、未来から逆算して発想するバックキャストの手法で2020年に実現可能なアイデアを考える社内横断プロジェクトを進めている。さまざまな部門から意欲あるメンバーが集まり、デザイン思考を使ってアイデアを共有・創出する。2018年度は7部門から20数名が参加し、数か月の検討を経て「子どもが食事に集中しない」という身近な課題から、「親も子も食事を楽しめる社会」というコンセプトが決まった。

横断プロジェクトでのアイデア出しの様子

横断プロジェクトでのアイデア出しの様子

プロジェクトメンバーの一人、株式会社東芝 デザインセンターの澤井香織氏は、こう語る。
「コンセプトが決まるまではかなり大変でした。いろいろな課題とアイデアが出ましたが、議論は難航し、予定より3か月も押していました。ギリギリの状況を打破したアイデアのきっかけは、3人の子どもを育てるお母さんメンバーの声です。毎日の食事で、子どもが遊び食べをしたり、食べるのに時間がかかったり、食事に集中できないことにストレスを抱えていました。子どもが食に向き合って、お母さんお父さんがほっとできる時間をつくれるように、という想いに他のメンバーも共感し、『親も子も食事を楽しめる社会に』というコンセプトができました」

BeforeAfter

株式会社東芝 デザインセンター 澤井香織氏

株式会社東芝 デザインセンター 澤井香織氏

コンセプトを元にどのようなものを作るかを検討していく中、ある専門家との出会いがきっかけとなり、プロジェクトが加速する。

「社外の講演会で、フードアナリストのとけいじ千絵さんのお話を聴いて、五感を刺激することに重きを置いた『感性教育』という考え方があることを知りました。これだ!という直感があり、すぐにとけいじさんにコンタクトを取りました」(澤井氏)

とけいじ氏は監修を引き受けてくれたが、最初の反応は意外なものだった。

「はじめは驚きました。食育の中でもニッチな部分である感性教育がビジネスで通用するのかなと。個人的には違うテーマにフォーカスした方が良いのではないかと思っていたのですが、メンバー皆さんの親と子どもの食事の時間を楽しいものにしたいというピュアな想いに打たれて、できることは協力したいと思いました」(とけいじ氏)

フードアナリスト・とけいじ千絵氏

フードアナリスト・とけいじ千絵氏

感性教育をヒントに食育の問題に立ち向かう Sizzlefulの誕生

感性教育というのは、一言でいうと、五感を使って食事を楽しむことを教えるということ。

「普通、食育というと、食材、調理法、栄養素のバランスなどに着目しがちです。しかし、子どもの好き嫌いというのは、いろいろな食材を並べたとしても、食べてくれなければ意味がありません。そこから、栄養学ベースの食育は限界があると思っています。実は、おいしさの感覚の中で、味覚を用いて感じる部分は1割程度にすぎません。味覚に加えて視覚、嗅覚、聴覚、触覚の感覚機能を総動員させて、味わっているのです」(とけいじ氏)

自分の五感を結集させて食べることを楽しめるようになると、食事の経験値が上がり、味覚の幅が広がる。いろいろなものを美味しいと感じ、食事そのものが楽しいと感じられるようになる。その結果、幅広い栄養が摂れ、健康にも寄与するというアプローチだ。

「とけいじさんのお話を聴いてビビッときたのは、感性教育がまだあまり世の中に知られていない領域であるということ、そして、ここに東芝の技術を生かせるのではないかと思ったからです。東芝としてプロジェクトをやるからには、技術で子どもが食事の楽しさを体感することで、食習慣が身につき、お母さんお父さんにも喜びが生まれるという新しい価値を生み出したいと考えました」(澤井氏)

具体的な検討段階でも、子育て中のメンバーの意見が役立った。

「『母親が完璧な料理を作ることが当たり前』と思われている風潮はいまだにあります。外食することは、手を抜いて楽をしていると否定的に見られて罪悪感を抱いてしまうと言うメンバーもいました。お母さんお父さんが子育てをしながらも、ほっとひと息をつくことが受容される社会となるように、子育ての仕方が変わっていったらいいなと思います。その後押しになるものとして、食事内容は変えずに、他の環境を変えることで子どもがいかに楽しく食べられるか、ということに挑戦する製品を作りたいと考えました」(澤井氏)

「共働きが増えている今、なるべく家族みんなで一緒に食べようとするのは、限界にきているのではないかと思います。誰と一緒に食事をするかより、自分が食事と向き合って美味しいと思えるかの方が大切です。孤食も社会的に問題視されていますが、食事から得られる情報を享受していないことが問題だと思います。テレビやスマホを見ながらの『ながら食べ』ではなく、まずは子どもにこのシステムを通して食事の楽しさを分かってほしいですね」(とけいじ氏)

いつもの食事を、五感を刺激しながら向き合うものにする「Sizzleful」が生まれた。名前は、食べ物の美味しさが目の前に迫って刺激される時に使われる「シズル感」から来ている。

「ただ美味しそうというだけで終わらせずに、感性を結集させて、感覚が満ちるという意味も込めて『Sizzleful』と付けました。『Sizzleful』から出る音や映像はその場限りのものですが、それを繰り返すことで、食事の楽しさが子ども自身の感性に宿ってくれたらと思っています」(澤井氏)

アイデア初期イメージ

アイデア初期イメージ

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