「猛勇狼士」のスピリットがチームを育て、新しい未来を始動させる ~理念ストーリー We are Toshiba~
2023/08/18 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- ポジションによって役割が違うラグビーチームは、多様性を重んじる
- メンバー外の選手「K9」が士気を高めることで、チームは活性化していく
- 「新しい未来を始動させる。」信念とアクションが、チームをアップデートし続ける
東芝グループの理念を体現する仲間たちの現在地、そして自身を支える価値観に迫る「理念ストーリー」シリーズ。ここで真摯な言葉を紡ぎ出すのは、東芝ブレイブルーパス東京に所属する2名のラガーマン、橋本大吾選手、豊島翔平選手だ。チームの主力として緑の芝を駆ける2名は、時に苦闘し、勝利の歓びも共有してきた。そんな彼らは、東芝グループの存在意義「新しい未来を始動させる。」をどう実現させていくのか。メンバーを一つにするキーワード「K9」、そしてチームのスピリットを体現する「猛勇狼士」とは――身体性に裏打ちされたストーリーが語られていく。
体型やタイプの異なる個性がベストな組織をつくる
――まず、ご自身のポジション、またチームにおいての役割を教えて下さい。
橋本大吾選手(以下 橋本):僕のポジションはフッカーで、フォワードと呼ばれる「前の8人」の一角。スクラムを組む際には、フロントローと呼ばれる最前列3人の中央で相手フォワードと直接組み合います。スクラムの方向性を決め、ラインアウト時にボールを投げ入れることが多いので、いろいろな選手とコネクションを図るポジションです。「とにかくみんなと積極的にコミュニケーションを取っていこう」と念頭に置いています。
東芝ブレイブルーパス東京 橋本 大吾選手
豊島翔平選手(以下 豊島):バックスと呼ばれる「後ろの7」人のうちの一人、フルバックです。フルバックは、チームで最も後ろに位置する「最後の砦」。守備では相手に突破されないように自チームのディフェンスを調整し、突破された際にはタックルで阻止します。チームを俯瞰し、ときには後方から指示を出す視野の広さと的確な判断力が求められます。僕はバックスだと最年長で、チーム内でも上から2番め。だから、チームの様子を常に見て、積極的に声をかけていきます。そしてキツいトレーニングに率先して取り組んでいく。年齢が上だからこそ、その姿勢を大切にしています。
東芝ブレイブルーパス東京 豊島 翔平選手
――ラグビーの魅力はどんなところにあるでしょうか?
橋本:体型も個性も異なる人間が集まり、1つのチームとして機能していく。これがラグビーという競技の魅力です。チームには身長202cmのフォワードがいれば、バックスのスクラムハーフには170cm弱のプレイヤーもいる。それぞれ得意なことが違います。
豊島:実際、僕と大吾(橋本選手)は175cmと身長は同じですが体格は大きく異なります。僕が務めるバックスと大吾が務めるフォワードでは種目が違うと言っていいほど求められるものが違うからです。異なるフィジカルと個性を発揮し、それらが一つになって勝利を目指す。そうして唯一無二のチームができるわけです。
チームのカルチャーを変えた「K9」の役割
――東芝グループの「私たちの価値観」のうちの一つに、「ともに生み出す」があります。東芝ブレイブルーパス東京は、結果を出していくためにどんなチーム作りをしていますか?
橋本:2016年に僕が加入するまで、東芝ブレイブルーパス東京はトップリーグで5度の優勝を誇り、ベスト4から漏れたことがないチームでした。ただ、それから数年ほどなかなか勝つことができず、成績が低迷する不遇の時代が続きました。僕も当時は試合に出られず、歯がゆい思いを抱えていました。そんな空気を一気に変えてくれたのが、「K9」という新しいカルチャー。2019年にトッド・ブラックアダー新HCが就任し、彼がチームに対して様々な変革を行っていく中で導入したものです。
シーズンに入ると、当然全員が試合に出られるわけではなく、どうしても「メンバー外」の選手が出てきます。東芝ブレイブルーパス東京のメンバーは46名(※2022-23シーズン)のうち、レギュラーの15名、リザーブ(補欠)の8名を含めて23名しか試合に出られません。メンバー外になった選手は対戦相手の仮想チームとして準備し、試合メンバーと練習します。
自分たちのラグビーではないことしなければならないので、メンタルが落ちてしまう選手も多く、これがチームを停滞させる大きな原因になっていました。「K9」はそんな状況を打破するため、メンバー外の選手に名づけられました。
――「K9」。とてもユニークなネーミングですね。
橋本:その語源は、歯の中でも一番尖っていて重要な犬歯(Canine tooth)のケーナインの発音になぞらえたものです。練習では、メンバー外の選手もプレッシャーをかけ、「牙をむいて全力で向かっていくぞ」という意味があります。そうしてメンバー内に入れ替えが起き、流動性が生まれます。互いが切磋琢磨して個を引き出し合うからこそ、ラグビーというスポーツが面白くなっていくのです。
豊島:トッド・ブラックアダーHCが東芝ブレイブルーパス東京の文化・伝統に合う新しい文化を導入してくれたことが良かった点だと思います。言語も文化も違う異国でそれはとても難しいこと。しかし彼の人間性もあり、僕たちは違和感を持つことなくそれを受け入れることができました。そしてまた自信が持てるチームになったと思います。
LUPUSとは、ラテン語で『狼座』の意。
グラウンドにおいて『狼』のように組織的な群れをなし、相手が戦意喪失するような緻密且つ野性味あふれる追いこみと、勇猛果敢(=BRAVE)なプレーを身上とする意味が込められている。「K9」の名は狼の犬歯から取ったもの。
――ラグビーは多様性が重要なスポーツと言われていますが、ご自身の「個」を生かすために、意識してきたことはありますか?
橋本:今は念願のフッカーをやっていますが、僕は器用貧乏で、学生時代までは特にここが強い!というのがなかったんです。実際、様々なポジションをやっていました。でもどうしてもフッカーがやりたくて、先輩から学び、自分の課題を徹底的に潰していきました。
豊島:チームには接点無双という言葉がありますが、この「接点」はタックルなど相手と接触することを指します。これは東芝ブレイブルーパス東京の伝統であり、強みでもあるのですが、僕はその考え方があまり得意ではなく悩んでいました。そこで、「自分なりの接点とは何か」をじっくり考え、東芝ブレイブルーパス東京の強みに加えて、自身の強みであるステップとスピードも駆使していくことで、プレーの幅が広がり良くなったと思います。
チームに尽くすことも重要ですが、自分の感覚を信じて変革を恐れずに実行していくこと。「個」を生かすとは、自分の強みを信じることでもあると思います。
苦境でも、立ち返る原点のチームスピリットがある
――チームは「猛勇狼士 ~我ら、接点無双、猛攻猛守の紳士なり。」をスピリットとして掲げています。このフレーズにはどのような意味が込められているのでしょうか?
東芝ブレイブルーパス東京のチームスピリット。「勇狼」はブレイブルーパス、「士」は紳士、侍の精神を表し、「接点」で打ち勝っていく唯一無二のチームの在り方を示している。
橋本:僕はフォワードとして接点を重視してきました。それはチームとしても同じで、「接点無双」というキーワードに表れています。多様なスペシャリストが揃う中、ラグビーにおける接点とは、ボールを持っている選手にタックルするような「プレイヤー同士が接触するポイント」です。接点を追求し、こだわりを持ってプレーの質を高めていく――掲げたスピリットに、僕たちが理想とするプレースタイルが見えてきます。
豊島:チームスピリットの「勇狼」はチーム名のブレイブルーパスに由来し、「士」は紳士、「侍」を意味します。OBの声も取り入れて生まれたものです。自分たちのスピリットが言語化されて、何かに迷ったり、壁にぶつかったりしたときにも、僕たちメンバーには立ち返る場所があると思うことができます。
ラグビーの魅力として「さまざまな個性がチームを形成する」ことを挙げましたが、「身体が激しく接触する」コンタクトスポーツであることもラグビーの特徴です。お互い真剣だからこそ、体だけでなく、時には激しく意見がぶつかり合うこともある。それでも「ノーサイド」と言われるように、フィールドの外では仲直りし、認め合う。そして互いが成長し、強固な絆が築かれていく。そんなところも、接点と紳士の精神を大切にするラグビーの素晴らしさです。
2016年の順位決定トーナメントで決勝まで進んだ時、僕たちはどんなチームにも負けない、絶対に勝てる――そんな自信が満ち、チームが前に進んでいました。あれからまた優勝へと近づくため、僕たちは練習を重ねています。
――これまでラグビーに取り組む中で、ご自身が選手として大切にしている信念があると思います。東芝グループ理念体系の「私たちの価値観」の中で、通ずるものはありますか?
橋本:「変革への情熱を抱く」です。僕は、「挑戦」を学生時代から人生のテーマとして掲げてきました。昨日の自分よりも少しでも成長したい、と思う気持ちが原動力です。現状のままでは衰退してしまいます。そんな自分の信念に大きな影響を与えてくれたのが、「体を張らない人間の言葉は響かない」という高校の先生からの言葉です。口だけの人間は信頼されない。だから自分から向かっていく。接点を大事にしている自分のプレースタイル、チームのスピリットとも重なります。
東芝ブレイブルーパス東京に入ってからは「先輩たちの存在」も、ラグビー人生に大きな影響を与えてくれました。それまでの自分は、体格・スピードとも恵まれた方ではあったのですが、東芝ブレイブルーパス東京には日本ラグビー界を代表するような名フッカーがズラリ。トップリーグでとんでもないパフォーマンスを見せる先輩フッカーたちに圧倒され続け、プライドが見事にへし折られたのです。
言ってみれば、初めての大きな挫折。そこから、彼らに勝ちたいと死に物狂いでスキルとフィジカルを高めていきました。結局安定して試合に出られるようになるまで5年ほどかかりましたが、無心になったあの修練の時間が、自分を大きく成長させてくれたと思います。
豊島:「誠実であり続ける」です。これは、僕が東芝ブレイブルーパス東京を選んだ理由でもありました。選手全員が、チームに愛着を持ち、チームの勝利のために努力する。そこに惹かれたんです。またこの価値観は、僕のプレースタイルの根幹でもあります。
リオデジャネイロオリンピック(2016年)のとき、日本代表出場が危うくなった時期がありました。選手として自信を失いかけた、つらい時間でした。その時に思い出したのが、高校時代に同級生からかけられた「下手は下手なりにやれよ」という言葉。当時の僕は彼より技術が劣っていたのに、スキルアップの努力を怠っていた。悔しかったけど、だからこそ心に刺さりました。
下手なら下手なりに、やれることを積み重ねる。自分を信じて取り組む。最終登録までの1か月、選手として生き残るために真摯に、主体的に練習に取り組みました。結果、幸い代表選手として出場が叶ったのですが、あの言葉がなかったら今の自分はいないかもしれません。
――長い間メンバーに入れなかった時期もあったということですが、どのようにモチベーションを維持していたのですか?
橋本:あの時は本当に辛かったですね。でも、自分以外のところに目を向けるのは簡単なんですよ。結局全て原因は自分にあるんです。だったら、選ばれるまで努力し続けるしかない。結果はすべて自分に返ってきますから。
――積み上げてきたものを大切にしながら、チームと個をアップデートし続ける。東芝グループの存在意義「新しい未来を始動させる。」を、どう実現していきたいですか?
豊島:戦術が高度化し続け、ルールも新しくなっています。ラグビーで勝ち続けるために変革を恐れず、常に学び続けていく姿勢を大切にしています。自身が真摯に学び続け、周囲のメンバーを巻き込んでアップデートしていく。そして、これまで先輩たちが築いてきたように、愛着のあるチームを育てていく。その先に、東芝ブレイブルーパス東京の新しい未来が始動すると考えています。
また、未来を担う子どもたちにも良い影響を与えたいです。僕は時々、ラグビー選手として子どもたちに講演をするのですが、「ラグビーのように自分と周りの人の個性を大切にしてほしい」と言っています。自分の考えを肯定できる子が増えていると聞いて、嬉しいですね。
橋本:まずはチームの優勝、日本一ですね。去年より少しでも成長した自分をフィールドで見せる。それが僕の信条です。チームでも個人でも、様々な個性を持った選手が全力でプレーして接点で打ち勝ち、過去の自分を上回っていく。そうすることで観た人に「これが東芝ブレイブルーパス東京のラグビーなんだ」と思ってもらう。今の自分が作る東芝ブレイブルーパス東京のラグビーが魅力的になれば、将来来てくれた人も魅力あるチームを作ってくれる。そんな連鎖がつながっていくと思うんです。そのために僕は、全力で「東芝ブレイブルーパス東京のラグビー」を体現し続けていきます。