ぶれない価値観という拠りどころ ~スポーツとビジネスの共通点とは?
2023/08/04 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- VUCAの時代、価値観の共有が組織・チームを強くする。
- ラグビーを支える品位、情熱、結束、規律、尊重。
- ラグビーと東芝で、重なり合う価値観。
VUCAの時代と言われて久しい。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組み合わせた言葉で、見通しが不明確であり、予測が難しいことを意味する。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、ChatGPTの登場など、私たちが暮らす社会の特徴を表す言葉として広く使われている。
このようなVUCAの時代に、チームや組織で活動する一人ひとりに必要なのは、自らの頭で考え、行動し、その時々の環境や条件に適応していくことだろう。迷うたびにリーダーの判断を仰いでいたら機会を逃してしまい、適切な成果を生めない。ここで拠りどころとなるのが「価値観」だ。スポーツとビジネスという、一見すると距離があるラグビー日本代表と東芝。両者は、それぞれの価値観にもとづいて取り組みを重ね、社会にとって意味のある成果を生もうとしている。
VUCAの荒波を乗り越えるとき、価値観という光がある
チームや組織における価値観(バリュー)は、日々の判断や行動の基軸となり、物事の善悪を決めたり重要性を判断したりする時の拠りどころとなる。どのような組織でもアイデンティティとして価値観を磨き、ぶれない軸を形成することで、個々が自律的かつ迅速に判断できる。その結果、目まぐるしい環境変化に対して適応が可能になるだろう。それは、荒波を乗り越える時に頼りとなる灯台の光のようなものだ。
共通の価値観のもと、多様なメンバーが強みを発揮することで組織力が強化される。スポーツにおいては連係プレーの高度化などが、またビジネスでは生産性の向上などが期待でき、結果として意味のある成果へとつながるだろう。たとえば、1990 年代を席巻したシカゴ・ブルズを分析した研究は、「チームの価値判断基準が、『強い』チームへつながる」ことを検証している(内山,2019)。同じことが、組織で成果を出すビジネスにおいても言えるだろう。
共通の価値観のもと、それぞれの強みを生かすことが成果につながる
ラグビーを支える品位、情熱、結束、規律、尊重
ラグビー界では、人間形成に資する価値観(コアバリュー)として「品位、情熱、結束、規律、尊重」を示している。この価値観は、選手はもちろんのこと、指導者、トレーナー、メディカル、レフリー、スタッフ、関係者、ファンなどラグビーに関わる全ての人々に共有されるものだ。日本ラグビーフットボール協会は、「日々のラグビー活動において、これらを実践し、体現して、ラグビーに携わる仲間に影響を与えてこそ、初めて価値が生まれるものだ」と、実行に移す意義を強調している。
価値観は選手だけでなく、レフリーや観客などすべての人に共有され、実践される
では、ラグビーを支える「品位、情熱、結束、規律、尊重」とはどのようなものだろうか。下図を一読すればわかるように、そこには高い水準のスポーツマンシップ、倫理的な行動、そして、フェアプレーを守ることへの誇りがにじみ出ている。そして、これらは単なる標語、掛け声ではなくて、真摯に受け入れ、考え、心に刻むものとされている。すなわち、ルールや戦術、練習する環境、試合相手などが変わっても、常に変わらない拠りどころである。
ラグビーの5つのコアバリュー(価値観)
東芝を支える4つの価値観
同じことが、ビジネスを通じて世界をよりよい場所にしようとする東芝にも当てはまる。東芝の価値観は、「誠実であり続ける」「変革への情熱を抱く」「未来を思い描く」「ともに生み出す」の4つだ。数や内容は少し異なるが、ラグビーが大切にする価値観と相通じる。東芝では、役職、職種、事業や技術の領域を問わず、すべての人がこの価値観を基に考え、発言し、行動を重ねる。つまり、ビジネスの環境、社会課題、技術開発のあり方が変わっても、常に変わらない拠りどころだ。
これらの価値観は、東芝が不正会計や経営危機という大きな変化を迎えた際に、グローバルでの議論を経て策定された。東芝が未来に向けて果たすべき役割を改めて問い直し、どういった姿勢で仕事に向かい、どのような気持ちを抱き、何をどのように価値として生むのか、といったことが込められている。約150年にわたるモノづくりの歴史と実績を土台にし、CPS※テクノロジー企業として地球規模の社会課題を解く際の拠りどころだ。
※ 現実世界から得られるデータを、サイバー空間で解析し、価値ある情報として戻す仕組み
東芝の価値観
ラグビーと東芝の共通点
誠実さとフェアプレーによって品位を実践するラグビーと、人や地球に対する責任を自覚し、誠実な心で行動する東芝。ラグビーに対する熱い情熱を持ち、感動を与えることと、東芝が世界をよりよく変えていくために、変革への情熱を抱くことは重なる。友情、仲間、チームワークを大切にし、垣根を超えるラグビーと、ビジネスで協力し合い、信頼されるパートナーとして新しい未来を創る東芝は、同様に成長を続ける。そこには規律があり、互いを尊重することで、先の世代のことまで見据えた未来を思い描ける。
このように価値観が重なり合う、ラグビーと東芝──。ラグビー日本代表は、今日よりも明日と目線を前に向け、情熱を燃やすからこそ、試合で観客を奮い立たせられる。東芝も、地球規模の社会課題を解くために変革への情熱を抱き、未来を思い描くからこそ、先進技術を開発・実用化し続けられる。ぶれない価値観を組織・チームとメンバーで重ね合わせ、戦略を磨き、メンバーのモチベーションを高める。だから、社会にとって意味のある成果を生んで行けるのだろう。
出典:
内山治樹(2019) チームスポーツにおける協働行為の指針の探求 体育学研究,64:731-747.
歴史と存在意義から紐解き、「Try Next! ~東芝は、なぜラグビー日本代表を応援するのか?」では、ラグビー日本代表と東芝の挑戦を紹介する。