「インドの暮らしと経済発展に貢献したい」情熱とチームワークで拓くエネルギーの未来 ~理念ストーリー We are Toshiba~

2023/09/27 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 「三現主義」をベースにエネルギーでインドの暮らしを支え、経済発展に貢献!
  • 地域文化を尊重し、ゴールを共有することが成果につながる!
  • 「情熱と共創」が、ものごとを前に推し進めていく。
「インドの暮らしと経済発展に貢献したい」情熱とチームワークで拓くエネルギーの未来 ~理念ストーリー We are Toshiba~

東芝の経営理念を様々な現場で体現し、新たな価値の創出を目指す仲間たちがいる。ワーク&ライフに向き合う中でそれぞれの価値観を確立し、前を向いて進む志がある。世界で働く仲間の奮闘と想いに迫る、「理念ストーリー」シリーズ。今回は、インド現地法人の駐在を経て、海外営業戦略に携わる大木香奈氏が、グローバルの共創から得た気づき、そして日印の価値観の融合への期待を語る。彼女が信じ、進み続ける道の先には何が広がるのか。

「インドへ恩返しを」という想いから始まった、エネルギー事業への関わり

1960年代にウミアム※1水力発電所に発電機器を導入するなど、東芝のインド事業は半世紀以上に及ぶ。2001年に東芝インド社を設立、2008年には蒸気タービン発電機をインド国内で製造・出荷できる体制を整え、著しい経済成長を遂げるインドのインフラを力強く支えてきた。

※1 インド北東部のメガラヤ州にある湖

 

2012年に入社した大木氏が、東芝インド社に駐在したのは入社4年目のとき、念願叶っての渡印だった。大木氏は営業として、インド火力発電公社から受注したタービン発電機をクドゥギ火力発電所※2に納めるべく、社内外の調整に当たった。経済・社会の発展に欠かせないエネルギー領域で、グローバルに働きたい――大木氏が幼い頃から抱いていた思いが、躍動感あふれるインドの大地で結実した。

 

「幼い頃から母と一緒に海外旅行に行ったり、父が趣味で行っていたバンド活動で様々な国の人たちと触れ合ったり、高校生の時に米国へホームステイしたり、いくつもの積み重ねを経て、国際的な仕事に就きたいと自然と思うようになりました」

※2 インド南部のカルナタカ州クドゥギ地区にある火力発電所。

 

 東芝エネルギーシステムズ株式会社 海外営業統括部 海外営業戦略部 戦略第一グループ  大木 香奈氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社 海外営業統括部 海外営業戦略部 戦略第一グループ
大木 香奈氏

外国語学部で国際関係について学ぶ中、BRICS※3において注目されるインドに関心を持った大木氏。学部時代はインドに1か月ホームステイし、大学院では国際社会でのインドの位置づけを研究。大学院時代に携わっていた日印協会の活動で、モディ首相や駐日インド大使と交流した。こういった現地での接点が、大木氏をインドに引き入れることになる。

※3ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)

 

「インドで感じたのは、人々の情の深さです。ホームステイ先の家族と別れる前日、辛さでついつい泣いてしまった私を見て、ホストファザーが激務で時間のない中、調整を重ねて家族と最後のひとときを作ってくれました。インド大使の公邸でパーティーに参加した時は、大使が『香奈のスピーチには感じ入るものがあった。必ず日印の架け橋になってくれるだろう』と、多くの方々の前で言ってくださいました。

 

ホームステイ先のホストファザーもインド大使も、『まだ若い学生だから』という目線ではなく、人間として向き合ってくださった。心を開けば、すごく親身に接してくれる。インドの方々の情の深さに感じ入る中、数々の印象的な出会いと交流を経て、『日印関係に貢献したい』『いつかインドに恩返しする』という思いが強まったのです

 

卒業後の進路を見定めるとき、大木氏が目を向けたのは人々の暮らしだった。また、経済の観点から、「エネルギーこそ国の発展の根幹である」という思いを抱く。

 

「エネルギーこそ、人々の生活を支えるものだと思いました。そこで注目したのが、東芝のインド事業です。現地法人の設立や工場建設など、腰を据えてエネルギー事業に注力していました。これに携われたら暮らしを支え、インドの経済発展に寄与できる。さらに、日本の国際的な存在感も向上させられる。そう思い、東芝への入社を決めたのです」

営業は人間性と人間性のぶつかり合い。「三現主義」が導いたもの

渡印前は、日本の工場からインドへ機器を出荷する際の調整、採算管理などを支援していた。だが、「自分の業務がインドにどうつながっているか、今ひとつ腹に落ちていなかった」という。現地で現物を見て現実を知る――いわゆる「三現主義」を体感したのは、インドに身を置いて臨んだ海外営業研修だ。以来、業務に向き合う中で「三現主義」を重視する。

 

現地に渡り、発電所の現物を見ながらお客様や仲間とコミュニケーションを取っていくと、事業の中で今の業務がどの位置づけにあるのかを体感することができました。業務の先を読み、日本では見えなかった課題をあぶり出し解決に動くと、やりがいがいっそう強くなります。何事も現地で現物に触れ、感じ、理解していきたい――これが、私の仕事の原点です」

 

転換点になった研修を経て、インド現地法人に駐在。インド火力発電公社のクドゥギ火力発電所で、インド国内最大級の蒸気タービン発電機設備を納入する大きなプロジェクトに携わる。

 

クドゥギ火力発電所現場前にて若手従業員と。一番右が大木氏。

クドゥギ火力発電所現場前にて若手従業員と。一番右が大木氏。

「このプロジェクトでは、タービン発電機設備の設計・製造・調達・据付工事すべてを東芝が受注しました。お客様の承認を得ながら、納期に応じて進めていく必要があります。その中で、タービン発電機を製造するチェンナイ工場を百年に一度の大洪水が襲ったのです。これでは発電機をクドゥギに届けられない……!

 

納期が迫る中、私たちは頭を悩ませました。日本と現地の仲間と連携し、補修した発電機を最短納期で納めるべく奔走します。自分は何ができるだろうか?自問自答の中で、関係者の調整と情報の共有に力を注ぎました」

 

刻々と状況が変化する中、大木氏は調達・輸送・据付・試運転の状況を公社側と毎日共有した。そこで意識したのは、進捗と課題、解決策を合わせて説明し、理解を得ていくことだ。

 

お客様との間で意識したのが、『ゴールの共有』でした。立場や考え方は違っても、発電所を無事に完成させ、電力を安定して供給していきたい。この目標は一致します。日々の報告でゴールに対する現在地を確認し、解決策を探っていく。その先に、『電力供給に向けて一丸となろう』という空気が生まれたのです

 

大木氏の活動はすべて、「お客様にわかってもらいたい」という真摯な想いからだ。想いが届けば、応えてくれる。前述のように、ホームステイや日印協会の活動を通して、大木氏はインドならではの「情の深さ」を肌で感じている。丁寧な情報共有と真摯な対応が文化を越え、プロジェクトは一つの運動体として進んでいった。

 

運開セレモニーでクドゥギ火力発電所の所長および幹部と。

運開セレモニーでクドゥギ火力発電所の所長および幹部と。

「インドの人々は、議論をいとわず、自分の考えをはっきりと主張するのでその激しさに驚くこともあるかもしれません。しかしひとたび心を開けば、驚くほどの一体感で物事にあたってくれます。一時、クドゥギへの発電機の納入が危ぶまれ、お客様から厳しい声をいただきました。でも、最後は笑顔で握手。『我々と東芝にはチームワークがあった』と、お客様の社内報で成功例として掲載いただいたほどです

 

そんな成功を収めた大木氏は、「営業」という仕事の本質についてこう語る。

 

「営業には技術職のような専門性はありません。しかし、技術以外はすべて営業の仕事です。プロジェクトの進め方一つとっても、営業の向き合い方で変わります。契約内容を理解するのは大前提として、お客様の国の文化・言語をよく理解し、密なコミュニケーションを図っていくことが必要です。私が大学院時代にお会いした外交官が、外交の世界のことを『人間性と人間性のぶつかり合い』と言っていて、営業でも同じことが言えると痛感しました

 

クドゥギ火力発電所の所長および幹部との食事会にて、右側一番手前が大木氏。

クドゥギ火力発電所の所長および幹部との食事会にて、右側一番手前が大木氏。

この経験は、大木氏にとって大きな学びになった。異文化に敬意を払い、気づきを得る。その先に、グローバルビジネスならではの価値創出も見える。

 

「インド文化には、ジュガール(Jugaad)という言葉があります。これは、困難な状況でも眼の前にあるもので創造していこう、解決策を探していこう、とする考え方のこと。日本人は緻密に計画して遂行するのが得意ですが、予想外に遭遇したら、その場を乗り切るための柔軟な対応も不可欠です。そこでJugaadが力を発揮します。日本ならではの緻密な計画と遂行、そしてインドならではの臨機応変なJugaad的対応――複雑さを増し、不確実な時代にこそ、日印の融合が大きな推進力になると感じます

 

発電所タービンオペレーションフロアにて出身地・徳島の阿波踊りを披露。
お客様との関係をより良いものにしていくために、自国の文化も積極的に紹介していく。

仕事も家族もチームで前へ進む。出産・育児を経ての気づき

大木氏は2018年にインド駐在を終え、帰国して産休・育休に入る。復職後は海外営業戦略部門でエネルギービジネスを俯瞰しつつ、ドイツのスタートアップとの合弁会社である東芝ネクストクラフトベルケ(TNK)社の設立・運営業務も担当。さらに育児インストラクターの資格を取得し、副業で育児に関する助言も行っている。

 

「生命を授かった喜びを感じる中、出産や育児での休職をキャリアの『制約』と考えたこともありました。しかし育児インストラクターの資格を取得し、知人と家族のあり方、育児との向き合い方に思いを巡らせる中で、仕事と子どもや家族を切り離さずに考えるようになりました。

 

育児には正解がなくマニュアルもない。何がベストかを探り、難しければベターを模索していく。その中で子どもは成長し、私自身も成長できる。それは決して『制約』ではなく、人間としての器を大きくするものだと思いました」

 

そんな時、パリ出張の打診があった。3歳の子どもがいるので海外出張は難しい。そう考えた大木氏だが、夫も子どもも理解し、むしろ後押ししてくれたという。

 

「夫と子どもの協力と理解があって、10日間の出張を乗り切りました。これは、私たちにとって大きな自信になりました。仕事だけでなく、私たち家族もチームです。予想外のこと、思わぬ困難があっても、しっかりコミュニケーションを取って、ゴールを共有しなから解決策を考えていくのは同じです。

 

私が描くキャリアを、夫と子どもに伝えています。それが後に、子どもが仕事を持った時にも役立つはずです。家族というチームで経験値を重ね、少しずつ自信を積み重ねていく。その中で、最適なワークとライフが見えてくると思います」

 

PCに向かう大木氏。

 

これまで様々な経験を培ってきた大木氏が得たもの、信念は、東芝の「私たちの価値観」とどうつながっているのか。

 

『変革への情熱を抱く』が、一番私らしいと思います。現地に行き、現場をこの目で見て、地域の人と現物を一緒に創り上げていきたい情熱があったから、上司を説得してインドに行かせてもらえました。『情熱』という言葉は、大学院時代から大切にしています。情熱があるからこそ『絶対に何とかするんだ』という覚悟を持って進んでいけます。

 

そして『ともに生み出す』ことの重要性もインドでの経験で痛感しました。インド公社の方々や現地法人、日本の組織が一丸となって取り組んだからこそやり遂げられた。情熱と共創――このふたつが、私を前に進めてくれると強く思います

 

そんな彼女が、キャリアの中で成し遂げたいことを語ってくれた。

 

「入社当時に抱いていたエネルギー事業に携わり、人々の暮らしを支えたいという思いは変わりません。カーボンニュートラルが大命題になっている現在、既存事業をどうするかという『HOW TO』だけではなく、グローバル企業として何を事業にしていくのかという『WHAT TO』を考える必要があります。インドでの現地経験や、現在の戦略的な立場で見る業務の経験を生かし、さらに成長した自分になって、またインドで新たな事業を創っていけたらと思います」

 

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