家族のために、社会のために。電池の製造現場での「挑戦」と「誠実さ」の軌跡 ~理念ストーリー We are Toshiba~

2026/07/13 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 高校時代にしていた陸上競技を通じて得た「無駄の排除」や「諦めない姿勢」が仕事の礎
  • 家族との時間を増やすため、「キャリアチャレンジ制度」で柏崎工場へ転籍
  • 仲間とともに製造工程の無駄を省く改善を推進。「誠実であり続ける」を指針とした人づくりと社会貢献を目指す
家族のために、社会のために。電池の製造現場での「挑戦」と「誠実さ」の軌跡 ~理念ストーリー We are Toshiba~

日本海に面した新潟県柏崎市。冬には厳しい潮風が吹きつけるこの地に、東芝の電池事業を支える一大拠点、柏崎工場がある。ここで日々、電池の電極製造に携わる一人の技術者がいる。東芝の栃原直貴氏だ。
栃原氏の歩んできた道は、常に現場とともにあった。東芝入社後、「ものづくり」の最前線を走り続けてきた栃原氏の足跡には、家族への思い、技術者としての責任感、そして大きな決断があった。

蒼穹(そうきゅう)を貫く「やり投げ」に込めた情熱が技術者魂の礎に

栃原氏の原点は、高校時代に打ち込んだ陸上競技の「やり投げ」にあるのかもしれない。
「やり投げは、ただ力任せに投げても飛びません。いかに無駄を省き、感覚を研ぎ澄ますか。そのときに培った集中力や諦めない姿勢は、今の仕事にも通じていると感じます」と栃原氏は語る。

株式会社東芝 電池事業部 柏崎工場 製造部 電極第一製造課 栃原直貴氏
株式会社東芝 電池事業部 柏崎工場 製造部 電極第一製造課 栃原直貴氏

熊本県の工業高校を卒業後、恩師の勧めもあり、ものづくりに今後も携わりたいという思いから東芝に入社。最初に配属された関東の工場では、大型制御機器の組み立てやメンテナンス、納品先での現地指導などを担当した。無駄を排除し、いかに素早く正確に組み立てやメンテナンスを行うか――効率化が求められる現場で、栃原氏は着実に技術を吸収していった。全国各地の現場へと足を運ぶ日々の中で、自分の仕事が社会のインフラを支えているという手応えを実感していた

家族への思いと上司の思い

仕事にやりがいを感じる一方で、私生活では大きな変化が訪れていた。結婚し、子どもを授かったことだ。当時の業務は出張が多く、家を空けることも少なくなかった。子どもを見るたび、少しずつ「家族との時間を、もっと増やしたい。子どもの成長をそばで見守りたい」そんな一人の父親としての切実な願いは、日増しに強まっていく。

そして栃原氏は、社内公募制度である「キャリアチャレンジ制度」を利用し、柏崎工場への転籍を志願する。選んだのは、出身地の熊本県でも、関東でもない、新潟県にある柏崎工場だった。柏崎工場を選んだ理由の一つには、妻の故郷である新潟県で子育てをしたいという思いがあったと語る。

その決意を伝えたとき、当時の上司は、栃原氏を高く評価し、必要としていたからこそ、「行ってほしくない」と引き留めた。その上司の思いを、技術者として嬉しかったと栃原氏は振り返る。
しかし、最後には栃原氏の決断を尊重し、背中を押してくれた。その上司の温かさと期待を胸に、栃原氏は新天地へと向かったのである。

※各部門が優秀な人材を広くグループ内に募集し、募集対象業務に強い意欲を持つ人材からの応募を募る社内制度。応募者は上司を経由せずに自らの意思で応募することができ、募集部門による選考に合格した場合は募集部門へ異動し新たなチャレンジをすることができる。キャリアチャレンジは、社員一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援するとともに、能力と意欲ある人材が必要なポジションで活躍することによる組織活性化を狙いとしている。

観察力とチームワークで実現した「歩留まり改善」

柏崎工場への転籍は、携わる対象が巨大な機器から小さな電池へと変わる大きな変化でもあった。「これまで培ってきた経験が新しい現場でどこまで通用するのか」という不安もあったが、栃原氏は一から技術を学び直すつもりで現場に飛び込んだ

現在の担当は、東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB™」の性能を左右する「電極」の製造だ。目に見えないほどの微細な変化が品質を左右する世界。ここで栃原氏が直面したのが、製造工程における「歩留まり」の課題だった。

東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB™」
東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB™」

着目したのは、それまで作業者のタイミングで行われていた電極の塗布工程だ。具体的には、電極の材料である金属箔に、機械で液体を塗る際の開始操作の自動制御化である。これまでは、人間が目視で開始のスイッチを操作していたため、液体を塗れておらず製品にならない部分が発生していた。これを減らすため、栃原氏はセンサーと連動した塗布制御プログラムによる自動化に取り組んだ。その結果、金属箔のギリギリまで液体を塗ることができ、歩留まりの改善を実現させた。

「みんなで試行錯誤を重ねた結果、これまで無駄になっていた部分を確実に減らせました」と栃原氏は語る。

単に数値を追うのではなく、「良いものを効率的に世に出す」という技術者としての誠実さが、仲間との絆をより深める結果ともなったと栃原氏は続けた。

「誠実であり続ける」という価値観を次世代へ

栃原氏は、東芝グループの理念体系の中の「私たちの価値観」の一つである「誠実であり続ける」という価値観に強く共感していると語る。製造現場におけるわずかな妥協は、製品だけでなく職場の安全性を損なうことにつながりかねない。ものづくりと職場づくりに対する責任を持ち、常に誠実に行動すること。その姿勢は、子どもの健やかな成長を願う親としての思いとも重なっているのである。
現在、栃原氏は30人以上の製造チームを率いる立場となり、個人の技術向上だけでなく、組織全体の力を引き出す役割を担っている。

「風通しのいい職場にするために、チームの人たちと接するときは、普段はできるだけ明るくフランクに話すことを心がけています。そして、危険な行動を見かけた際やトラブルが発生した際は、はっきりと注意や指示をするようにしています」

チームの人たちと一緒に、誠実であり続けられる職場づくりをしているのである。

栃原氏

「人と、地球の、明日のために。」子どもの未来を創る

栃原氏が現在携わるSCiB™は、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する高性能な二次電池だ。

自分の仕事は、世界をクリーンに変えていくことができます。そして何より、自分の子どもが大人になったときの地球を、より良い場所にしていくことにつながります

その実感こそが、冬の厳しい寒風が吹く柏崎の地で、情熱を絶やさずに戦い続ける栃原氏の誇りなのだ。東芝に入って良かったこと。それは、「いろいろな経験をさせてくれること、そしてそれを見守り、背中を押してくれる上司や仲間に巡り合えたこと」だと、栃原氏は言う。
ビジネスパーソンとして、栃原氏が今後目指す姿は明確だ。それは、いろいろな経験で培ってきた知識や経験を次世代へと継承し、より良い製品を造ること。

毎日の誠実な仕事の積み重ねが、少しずつ世界を変えていくと信じています

休日には子どもと思い切り遊び、家族行事には積極的に参加する。家族とともに刻む時間。子どものはじけるような笑顔を見るたび、彼は自らの選択が正しかったことを再確認する。栃原直貴という一人の技術者、そして一人の父としての物語は、これからも柏崎の地で続いていく。やり投げの「やり」が放物線を描いて未来へ飛んでいくように、彼の情熱は「人と、地球の、明日のために。」、これからも高く、遠くへと伸び続けていく。

栃原氏
東芝グループ理念体系(主文)

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