停電を防ぐカギ! 電気の仕組みと電力貯蔵入門

2019/02/06 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 電力貯蔵技術は停電を防ぐために欠かせないものの一つ!
  • なぜ大量の電気を貯めることは難しいのか。
  • 電池は電気そのものを貯めていない!?
停電を防ぐカギ! 電気の仕組みと電力貯蔵入門

地震など不慮の災害により、停電が発生するケースは決して珍しいことではない。その理由の一つは発電所の稼働が停止して電力供給量が激減する一方で電力需要は変わらないから、すなわち、需給が一致しなくなることが停電につながるのだ。また、昨今では再生可能エネルギーの活用も切に求められているものの、太陽光や風力による発電は気候などに依存しているため電力供給量が安定せず、この面からもやはり需給の一致が難しく、停電につながる可能性がある。

こうした課題を克服する手段として注目されているのが電力貯蔵技術だ。だが、実は電気は大量に貯められない。なぜ電気は貯めることができないのか。貯められないのならば、スマホの電池などはどのように電気を貯めているのか。今、最も重要視されている技術の秘密に迫ろう。

電気を貯められない理由

大量の電気を貯められないのは、電気の性質上、動きが早く、発電した瞬間に電気使用者の元に届いてしまうから。
ここで電気についての理解を深めるため、おさらいとして、読者の皆さんも中学校で習ったであろう「右ねじの法則」を思い出してほしい。これは電流と磁界(磁気の働く空間)の向きの関係を表した法則だ。物体が帯びている電気の量を電荷といい、この電荷が動くこと、すなわち電流が流れると磁界(※)が発生する。そして電流の大きさや向きが変化すると磁界も変化して電界(※)が生まれ、それによりまた磁界が生まれるというように、これら二つが交互に発生しながら波のように伝わっていくのが電磁波である。そしてこの電磁波が伝わるということが、電気が流れるということでもある。

電流により磁界が発生する関係を示した右ねじの法則(左図)と、電磁波の解説図(右図)

電流により磁界が発生する関係を示した右ねじの法則(左図)と、電磁波の解説図(右図)
※電界とは電圧がかかっている空間の状態のこと、磁界とは磁石の周りなど磁気が働く空間の状態のこと。

反対に、磁界の発生により電荷を動かすこと、つまり、電気を発生させることも可能だ。発電所では、ローターと呼ばれる電磁石を回転させ、ステータと呼ばれるコイルの電荷を動かす。発電所では電磁波を作ることで、電気を発生させ、送り出しているのだ。

発電所では電磁波を生み出すことで電気を発生させる

発電所では電磁波を生み出すことで電気を発生させる

電磁波には様々な種類があり、電力のみならず、光やX線なども挙げられる。真空状態における電磁波の伝播速度はいずれも30万km/秒。光と同じ速さだ。
つまり、発電所で生まれた電磁波は光速で送電線に沿って私たちの元に伝播される。送電線に沿って電磁波が瞬時に伝わることで、送電線中の電荷が一斉に動かされるのである。

発電所で生まれた電磁波が光速で送電線に沿って私たちの元に伝播されるイメージ

貯められない電気をいかにして貯蔵するか――これは、電気が使い始められた時から切実に求められているものなのだ。

貯められない電気の貯蔵方法とは?

電気は性質上、光速で動き、一定の状態でじっとしていることができないため、そのままの状態では貯めておくことはできない。だが、万が一の停電の備えや再生可能エネルギーのさらなる普及に向けて、電力の需給一致の必要性から、電力貯蔵は必須だ。そこで現在では、電気エネルギーを様々なエネルギーに変換して貯蔵する技術が研究・開発されている。それら技術の種類は多様だが、今回、そのうちの2つをご紹介しよう。

電力貯蔵の方法

電力貯蔵の方法には様々なものがある

一つ目は揚水発電。「発電」と聞くと、「電気を貯める」というよりも「電気を作る」ことに目が向かいがちだが、立派な電力貯蔵技術だ。

揚水発電は、余剰電力で発電電動機を回し、その力でポンプ水車をつかって水を低いところから高いところに汲み上げて貯水する。これは、電気エネルギーを水の位置エネルギーへと変えて貯蔵するシステムなのだ。そして電気が不足した際に貯めた水を落下させ、ポンプ水車を回し、その力で発電電動機を回す事で水の位置エネルギーを電気エネルギーへと再変換して利用する。例えば400MW×4台の揚水発電所で8時間の連続運転ができるとすると、一般家庭約160万世帯が一日に使用する電力量(※)に相当する電力を蓄電することが可能となるのだ。

※400MW×4台×8時間=12,800MWhとして、12,800MWh÷(247.8kWh/30.5日)⇒約1,580,000世帯(1世帯あたりの1ヶ月平均電力消費量を2015年電気事業連合会調べの247.8kWhとした場合)

揚水発電の仕組み

揚水発電の仕組み(系統電力の余剰時に電気を貯めて不足時に使う場合)

しかし、通常の揚水発電は一定の回転速度で運転されるため、揚水運転中の電力(充電に相当)の調整が不可能だった。そこで東芝が世界で初めて実用化したのが可変速揚水発電。回転速度をコントロールすることにより、揚水運転時にも需給の調整ができるようになった。
可変速楊水発電は、揚水運転中の周波数の変化に応じて発電電動機の入出力を自動制御することができる上、発電電動機が持つ回転エネルギーを一時的に放出あるいは吸収することで発電時の出力や揚水時の入力を瞬時に変えることができることも特長である。そのため、電力の余剰時と不足時の需給調整だけでなく、再エネなどの瞬時的な出力変動の対策としても利用可能であり、需給バランスの改善にも活躍している。

葛野川発電所 4号機可変速発電電動機

葛野川発電所 4号機可変速発電電動機

二つ目にご紹介するのが二次電池。スマートフォンの充電池などで馴染み深いと感じる方も多いだろう。しかし、二次電池には電気がそのまま貯蔵されているわけではなく、プラス極に位置する正極材とマイナス極に位置する負極材を電解液に浸すことで、電気化学反応を起こして電気エネルギーを取り出す。ここまでは普通の電池も二次電池も同じ。

加えて二次電池は、外部から電気エネルギーを与えることで、先とは逆の反応を起こし、正負極材を放電前の状態に戻して繰り返し使用できる。二次電池では、電気エネルギーを電気化学的に変換して貯蔵しているのだ。

東芝の二次電池 SCiB™

東芝の二次電池 SCiB™

もちろん、他にも、化学的に水素と酸素のエネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池を使った水素電力貯蔵など、様々な電力貯蔵技術の研究開発が進められている。決して電気を止めない。その想いが様々な電力貯蔵技術へと変身し、一瞬でも電気の需給が崩れてそれが停電へと繋がらないように、私たちの生活を支えているのだ。

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