東芝の若き技術者たち ~すべてを見渡す広い知識が、価値創造の要となる~
2022/04/01 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- 一つひとつの理解、徹底した準備が顧客の信頼につながる王道
- 社会インフラが「当たり前の存在」であり続けるために
- 単なる足し算ではない総合技術で、時代の顧客ニーズに応え世界へ!
いつでも安心して水道の水を飲める。暗くなったら照明が明るくしてくれる。寒いときにスイッチ一つでエアコンが暖めてくれる。欲しいものがあったらネットショッピングで簡単に買い物ができる。どれもこれも、日本では当たり前に実現されている。こうした当たり前の社会インフラが維持される舞台裏では、日々絶えることのない技術者の努力がある。
東芝には、こうした「当たり前」を支え続ける技術者がいる。その形は違えど、彼らの心の奥底にあるのは、社会貢献への使命感と、技術者としてのプライドなのかも知れない。
徹底的な理解と準備 学生時代の失敗がきっかけ
失敗すればするほど、我々は成功に近づいている──。これは、発明王トーマス・エジソンの言葉だ。このほかにもエジソンは、失敗に関する名言を数多く残している。そこから偉大な実績の影に、多くの失敗があったと知ることができる。東芝インフラシステムズでビル用の電源設備のエンジニアリングを担当する峯野勝也氏は、学生時代に高額な実験機器を壊した経験を語ってくれた。
「実験に使う機械を壊してしまいました。原因は、私がしっかりと取扱説明書を読んでいなかったことによるものです。十万円もの機械だったので、先生や他の学生にとても迷惑をかけたことを非常に反省しました」
東芝インフラシステムズ株式会社 社会システム事業部 ファシリティソリューション技術部 施設制御システム技術第一担当 スペシャリスト 峯野 勝也氏
それは、電圧などを測定するテスターの針が溶けるほどの事故だったという。幸いけが人は出なかったが、「電気の失敗ではときに死につながることがある」という教えを実感したという。そして、峯野氏は徹底的に失敗について分析を行った。
「なぜなぜ分析で、一つひとつ考えてみました。なぜ失敗したのか…、なぜ取扱説明書をしっかり読まなかったのか…、なぜ準備不足に気付かなかったのか…」
それ以来、一つひとつの行動に責任を持てるよう、それまで以上に慎重になったという。それが、技術者としての姿勢に大きく影響を与えていると峯野氏は語る。
「とにかく行動を起こす前には、できる限りの準備をしようと考えています。それは、お客様からいただく資料の一つひとつへの深い読み込みであり、お客様の要求への正しい理解でもあります」
こうした峯野氏の姿勢は、プロジェクトへの理解度の高さとして社内外から高い評価を得られているという。その現れとして、プロジェクトが完了した後も、関係者から様々な問い合わせが峯野氏のところへ舞い込んでくる。
細かな資料確認を疎かにしないと峯野氏は語る
学生時代の専攻は、工学分野を広く学べる学科だったという。電気・電子工学の知識だけでなく、機械工学、流体力学、材料力学や化学など様々な分野に広く触れることができたと語る。こうした広い知識が、プロジェクトにかかわる技術全体を理解するために生かされているのだ。
「東芝の持ち味であるグループ全体の技術を結集して、お客様のニーズに応えるためには、個々の製品技術がシステム全体にどのようにかかわっているのかを理解している必要があります。そのために、各設計部門をつなぐことのできる幅広い分野の知識と、お客様の話を聞き説明する力が大切になります。学生時代は、これらの種を自分の中に植え、技術の土地勘を養っていたのだと思います」
一般的にはセールスエンジニアが顧客のニーズを聞き、それを各設計部門に伝えて、それぞれの技術者が集まってシステムを作り上げていく。しかし東芝では、峯野氏のようなシステム設計を担当する技術者が、顧客ニーズを確認する所からシステム設計までを担当する。こうした進め方には、システム全体を見渡すことのできる、技術者がもっと必要なのだ。全体が分かっているからこそ、専門的な知識が必要なときに各領域のスペシャリストに助言を仰ぐことができる。
「当たり前」という価値を届ける
峯野氏は社会インフラの「当たり前」にこだわり、特に電力の安定供給に思いが深い。なぜなら、学生時代、東日本大震災で電気が止まることの社会的インパクトを、身を持って知ったからだ。そして峯野氏は、電力という社会インフラを支える道を選択し、社会実装に近い所に携わりたいと思い東芝を選んだのだ。
「社会インフラは、機能し続けることが『当たり前』です。それはお客様のニーズでもあるので、どのような価値をお届けするべきか、その目標地点は揺らぎません」
システム設計をする際には、コストやスペースなどの顧客の制約が重要となる。峯野氏は提案内容を丁寧に説明し、「何を実現するべきか」を顧客と共有、合意していく。それは、峯野氏のモットーとして、ビル用の電源設備は単なるモノではなく、当たり前の機能を使い続けられる社会インフラというサービス、価値を顧客に届けているからだ。
お客様にとって何が最適解なのかを常に考えているという
「停電でサーバーが止まってしまえば、オンラインショッピングを提供するお客様の当たり前、買い物を楽しむエンドユーザーの当たり前はそこで終わってしまいます」
社会インフラが停止することの社会的影響を考え、システムを設計し提案する。そのためには、新しい知識を身につけないと、技術的に適切なシステムは構築できない。峯野氏は9年経った今も、多くのことを学んでいるという。
「社会インフラの『当たり前』を実現するシステムを作ろうと思えば、学ぶべきことがいくらでも出てきます。たとえば、非常用発電機と変圧器がシステムとして急につながったときに、大きな電流(突入電流)が発生することがあります。このような事象に対して検討を行うには、今まで習得してきた発電機と変圧器それぞれの知識だけではなく、両者を組み合わせたシステムとしての知識が新たに必要でした」
そんな知識も、東芝にはしっかりと蓄積されているという。峯野氏は、システム設計の先達の教えをひもときながら、足りない知識を補い、これからも勉強を続け、必要とされる社会インフラを届けたいと語る。
このように、日々、自分を磨き続ける峯野氏だが、リラックスできるのは気の合う同僚とのひとときだという。学生時代から「応援団」に所属し、新入社員の頃には、東芝応援部で野球の試合でトランペットを吹いていたそうだ。
心許せる仲間とのひとときが、次のプロジェクトへのモチベーションを高めてくれる
「東芝応援部でトランペットを東京ドームで鳴らすことができたのが、とてもいい思い出になっています。応援するものとして、『ドームで吹く』というのは一つの目標でしたから」
さて技術者としての話に戻ろう。今、峯野氏には、東芝を含めて業界全体をもっと高い位置までけん引していきたい思いがある。長らく日本のビル用の電気設備は、東芝をはじめとする国内企業が担ってきた。しかし、ここ数年海外の企業の参入が目立ち、そこには低コスト、開発スピードなど、国内企業とは違う要素が多数あるという。
「ビジネス環境は常に変化しており、海外企業との差別化が必要です。そこでは、『お客様の話を直接聞ける技術者が、製品開発からシステム納入までを一手に担う』という東芝ならではの組織体系が有効だと考えます。
さらに、今の時代には電気設備の環境負荷低減など、新たな価値が求められています。サステナブルな社会実現に向けて、お客様が投資を強化されています。東芝は、このニーズにも応えることで存在感を発揮していきます。このとき、システム全体を考えられる力をもとにした、単なる個々の技術の足し算を超えた、総合的な技術力が強みになります」
海外企業との差別化、サステナブルな価値の創造、いずれにおいても東芝の強みが生かされると峯野氏は考えている。こうした業界全体の未来を見通す力を持ち、けん引役を果たそうとする若き技術者の峯野氏。きっと近い将来、業界全体の応援団長として、世界に漕ぎ出してくれる日がくるのだろう。