東芝が英ヴィクトリア&アルバート博物館と連携する理由 ~事業展開する地域の発展に貢献~

2023/04/26 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 英国立ヴィクトリア&アルバート博物館と協力し、日本文化への親しみを醸成。
  • 東芝国際交流財団が、日本と英国の共創と地域社会の発展に貢献。
  • 経営理念「人と、地球の、明日のために。」、価値観「ともに生み出す」を実践!
東芝が英ヴィクトリア&アルバート博物館と連携する理由 ~事業展開する地域の発展に貢献~

ロンドンの南西に位置するサウスケンジントン。美しい建物が立ち並ぶこの地にある、荘厳な佇まいのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)。ここは、芸術とデザインの最高傑作を数多く収集し、人々を魅了する芸術文化の発信地だ。V&Aには日本の美術とデザインを常設展示し、日本文化を発信する「東芝日本美術ギャラリー」がある。濃紺と金の美しい色合いをもち、62枚の鉄板を組み合わせて作られた兜をかぶった19世紀中期の鎧(よろい)は、見る人を圧倒する。

このギャラリーは、東芝が英国の人々に日本文化への親しみを感じてもらうために、36年前にV&Aと設立した。多くの人が無料で自由に見学し、日本文化を身近に感じられる。今でこそ、企業の芸術文化支援活動(メセナ)は、地域社会との重要な関係づくりとして広く行われているが、東芝が、企業活動として30年以上前から支援するのには深い理由がある。

東芝とV&Aとのパートナーシップはこうして始まった。

東芝日本美術ギャラリーは、英国初の日本美術常設展示室として、1986年12月にオープンした。東芝ヨーロッパ社 社長兼CEOの熊谷朋昭氏は当時を振り返る。

「1980年代、東芝は英国に重要な製造拠点を持つ多国籍企業として知られていました。一方で多くの英国人は、日本文化についてあまり馴染みがありませんでした。私たちは、世界に事業展開する日本企業として、日本文化や日本美術が持つ、繊細な美意識に親しみを感じてもらいたいと考えていました  (熊谷氏)

V&Aで日本美術を担当する学芸員の山田雅美氏によると、英国における当時の日本文化に対する認識は断片的だったという。日本への旅行経験を持つ人は少なく、芸者や家電と典型的な日本のイメージや製品が知られている程度だった。

V&Aは、1852年の開館以来、アートとデザインの分野において世界で確固たる地位を築いており、価値の高い日本美術作品を数多く所蔵していた。東芝が事業を展開する英国で日本文化を理解してもらうにあたり、V&Aは最適なパートナーであった。東芝は、V&Aの既存の日本美術コレクションを集約し、日本文化に特化した展示室をスポンサーするべく、博物館と共同で準備を進めた。こうして、1986年にオープンした東芝日本美術ギャラリーでは、卓越した職人や芸術家の創造力を伝えている。展示品は、日本刀、甲冑、漆芸(しつげい)、陶磁器、浮世絵(うきよえ)、現代工芸、服飾、電化製品と多岐にわたる。

V&Aは、1852年の開館から170年、その時々の日本美術におけるトレンドを常に反映させながら、6 世紀から現代までの「時空の旅」を来場者に提供し続けている。この流れに東芝が加わったことについて、熊谷氏は次のように言う。

「V&Aは、デザインにおける反復や、ひらめきを得ることの重要性を体現しています。私たち東芝も含めてすべての製品は、何百年もの間、様々な国々で織り成されてきた大きな流れの中で生み出されました。V&Aはこの流れを示すために、何十年にもわたって工芸品やデザインを集め、整理しています」(熊谷氏)

このV&Aとのパートナーシップをきっかけに、東芝はメセナへの取り組みを本格化し、1989年東芝国際交流財団(TIFO)を設立。TIFOは、公益財団法人として現在に至るまで、対日理解を促進し、国際社会・地域社会に広く貢献することを目的として、研究機関、美術館、大学等への助成を世界各国で行っている。

東芝日本美術ギャラリー入口 © Victoria and Albert Museum, London

東芝日本美術ギャラリー入口 © Victoria and Albert Museum, London

美しいコレクションが育む、日本と英国の共創

東芝日本美術ギャラリーは、東芝とV&Aの継続的なパートナーシップにより、設立以来36年間、美しく、素晴らしいコレクションで多くの人々を魅了し続けている。同ギャラリーでは日本の歴史的な工芸品だけでなく、現代のストリートファッションや日本特有の「かわいい文化」の例となる作品などで、日本文化がいかに進化しているかも示している。

歴史的な工芸品の中で眼を惹くものの一つに、「マザラン・チェスト(マザラン家の櫃(ひつ))」がある。マザラン・チェストは、1640年頃に京都で制作された後、ヨーロッパに渡り、フランス貴族のマザラン家が所有した、蒔絵技法によって装飾された家具で、17世紀に輸出された日本の漆器の中で、歴史上最も優れた作品の一つ。日本の古典文学に由来する建築物や風景、人物が精巧に描かれた、大変貴重な作品である。1643年にオランダ東インド会社によってヨーロッパに運ばれたこのチェストは、日本とヨーロッパの関係を語る上でも興味深い。2004年から2008年にかけて、V&AはTIFOの助成を受け、マザラン・チェストの研究・保存に精通した日本の保存修復家、および科学者と共に、大規模な保存修復プロジェクトを実施した。これにより、マザラン・チェストは最善の状態を保ち、今なお私たちを魅了し続けている。

マザラン・チェスト © Victoria and Albert Museum, London

マザラン・チェスト © Victoria and Albert Museum, London

「このような歴史的にも国際的にも貴重な作品を守るには、V&Aや東芝だけでなく、国際的な専門家による大規模なチームワークが必要です。東芝の価値観の一つ『ともに生み出す』は、お互いに協力し、信頼されるパートナーとしてともに成長し、新しい未来を創ることを意味します。V&Aや様々な関係者との共創を通じて、これらの素晴らしい作品を後世に残せることを誇りに思います」 (熊谷氏)

V&A館長のトリストラム・ハント氏は、「東芝の支援により、国際的に重要なコレクションが発展し、充実します。6世紀から現代まで、日本の並外れた職人技と芸術の豊かさを紹介し続けることができるのです」と、V&Aと東芝の共創がもたらす社会的価値を強調する。

ヴィクトリア&アルバート博物館 © Victoria and Albert Museum, London

ヴィクトリア&アルバート博物館 © Victoria and Albert Museum, London

芸術から教育、次世代の人材育成まで

英国では日本文化に関する研究が盛んに行われており、東芝の経営理念や価値観に通ずる活動や組織が数多く存在する。

「TIFOの活動は、個々の助成事業にとどまらず、東芝が活動する地域社会全体への貢献を目指しています。歴史的価値を守るための支援だけでなく、将来の国際的な相互理解と連携につながる活動も応援しています。持続的で意味のある成果を社会に生みたいと考えています」(熊谷氏)

実際にTIFOは、V&Aに加えて、ケンブリッジ大学、セインズベリー日本藝術研究所、ロンドン大学など、様々な機関に総額4億円の助成を行っている。

人と、地球の、明日のために。

日本文化の社会的な認知は、東芝が1980年代に英国で活動を始めて以来、飛躍的に向上した。

「今や、日本は人気の観光地となりました。無印良品やユニクロなど、洗練されたブランドのグローバル展開も、日本文化の認知向上を後押ししています。今、V&A来場者は、日本特有の多面的な魅力を体験するためにギャラリーを訪れています」(山田氏)

ここ40年近くの間、東芝は中核となる企業活動の一つとして、日本文化の継続的な普及、そして日本と英国の共創活動を続けてきた。さらに、V&Aへの投資を2031年まで継続することを決めた。

 

このようなメセナ活動における様々なプロジェクトは、日英の共創を共有する組織や個人に報いるだけでなく、地域社会一般にも価値を提供している。東芝は、「人と、地球の、明日のために。」という言葉を経営理念に掲げる。それは、事業を通じて社会に貢献し、事業展開する地域の発展・成長を支援することを意味する。V&Aと継続するこの取り組みは、まさにこうした経営理念を体現している。

東芝ヨーロッパ社社長兼CEO  熊谷朋昭氏(右) ヴィクトリア&アルバート博物館館長 トリストラム・ハント氏(左)

東芝ヨーロッパ社社長兼CEO  熊谷朋昭氏(左)
ヴィクトリア&アルバート博物館館長 トリストラム・ハント氏(右)

関連サイト

※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。

英国ビクトリア&アルバート博物館「東芝ギャラリー・オブ・ジャパニーズ・アート」 のスポンサー契約を更新し2031年まで延長 | ニュース | 東芝

Related Contents