高まるリチウムイオン電池への期待と、東芝の回答[中編]

2020/11/30 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 用途に応じて選べる、リチウムイオン電池SCiB™のラインアップ
  • 船舶や自動車などに広がるSCiB™の採用事例
  • SCiB™が社会実装される3つの理由
高まるリチウムイオン電池への期待と、東芝の回答[中編]

前編では、2019年のノーベル化学賞にも表れる、世界中が期待するリチウムイオン電池の新しい展開と、負極にチタン酸リチウム(LTO)を採用し、高い安全性や急速充電を実現した東芝のリチウムイオン電池SCiB™について紹介した。中編では、すでに始まっているSCiB™の応用について紹介しよう。

未来を拓くSCiB™の製品ラインアップと採用事例

東芝では現在、高容量型と高出力型のSCiB™セルを新潟県の柏崎工場にて生産している。そして、それらのセルを使用した車載用、定置・産業用のモジュールや、鉛電池からの置き換えを容易にする産業用電池パックをラインアップしている。

SCiB™の製品ラインアップ

 

●定置・産業向けの高容量型セルの採用事例

これまで、鉛電池や化石燃料によりまかなわれていた分野において、系統用蓄電池※1のような新しい電池の使われ方が広がり、発電量の変化が大きい再生可能エネルギーと組み合わせることで安定した電力供給が目指されている。また、鉄道、船舶など耐久性と安全性が重要視される公共インフラへのSCiB™の導入が進んでいる。

 

※1 系統用蓄電池:発電所から利用者まで電力を届ける発電・送電システムである、電力系統の安定に利用される蓄電池。

●自動車向けの高容量型、高入出力型セルの採用事例

CO2排出削減を目指し、乗用車、バス、トラックを問わずハイブリッド化や電動化が進められている。こうした自動車向けに、高容量と高入出力の両タイプのSCiB™が採用されている。高容量タイプはトラックやEVバスに採用され、過酷な条件下での使用が想定される大型トラックや、充放電を繰り返す大型バスにおいて、SCiB™の耐久性と安全性が評価されている。また、高入出力タイプはハイブリッド車への採用が進んでおり、減速時の回生エネルギーを効率よく回収・利用することが期待されている。

SCiB™が採用される理由

LTO負極の活用により様々な特長を持つSCiB™が、それぞれの分野でどう貢献しているのか。その長所別に採用される理由を紹介しよう。

SCiB™の導入実績に3つの特徴

 

 

●A. 高入出力を活かした電力効率改善・省エネ化 (例)マイルドハイブリッド車

ブレーキ時の減速エネルギーを回収し、次の加速や停車時の空調などに生かすことに主眼を置いて、マイルドハイブリッドカーでSCiB™が採用されている。これは、SCiB™の急速充電、高い入出力能力により、減速時に発生する大きな回生電力を効率的に回収するためである。回収したエネルギーを発信・加速時のアシストに利用することで、大幅な燃費向上、CO2排出削減に貢献している。

自動車用12Vシステムの例

 

●B.急速充電による装置稼働率向上 (例)電動バス・自動搬送車(AGV)

CO2削減のために、リチウムイオン電池を搭載したEVバスの普及が始まっている。1日1回夜間に充電して1日走りきるのが一般的だが、大きな電池搭載による乗客スペース圧迫やコスト増大が課題となっている。そこで、SCiB™の急速充電を生かすことで、これらを解決できる。SCiB™搭載バスは、停留所でのわずかな停止時間で運行に必要な電力を急速充電できるため、電池搭載量を最小限にできる。その結果、乗客スペースの拡大や車両の軽量化による低燃費など、運用コストの低減を実現している。

急速充電で電池搭載量を減らし、広い乗客スペースとコスト削減を実現

また、工場や大規模な倉庫で利用される自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)でも、SCiB™の採用が進んでいる。これまでの鉛蓄電池を搭載したAGVでは充電に時間がかかるため、大量の予備電池を保有したり、複数のAGVを交替で運用したりすることが必要だった。SCiB™の急速充電機能を自動充電システムと組み合わせることで、搭載されたSCiB™のみでのAGV運用が可能となる。これにより、運用コストや作業負荷が軽減される。

急速充電による自動搬送車(AGV)の稼働率向上例

 

●C. 過酷な環境での高い信頼性が必要な用途

低温や高温など幅広い温度域で、安全に充放電が可能なSCiB™は、北欧やロシアなどの極寒の地域から、タイやマレーシアといった猛暑の地域での採用例が増えいる。また、安全性・信頼性の高さから鉄道、船舶、変電所などの公共インフラでの活用が進んでいる。国内で初めて船舶へのリチウムイオン電池の適用を承認する鑑定書を日本海事協会から取得し(2020年3月31日)、鉄道においてもリチウムイオン電池として世界で初めて鉄道車両向け欧州安全規格を取得した(2018年8月30日)。

安全性・信頼性が高いモビリティ システムを実現

 

このように、SCiB™は、高い安全性、信頼性、長寿命、高出力を必要とする、様々な場所で幅広い用途に採用が広がっているのだ。後編では、LTOに代わる次世代負極材料「ニオブチタン系酸化物(NTO)」や次世代のセパレーター 「Skin-Coated Electrode(SCdE)」など、東芝の最新技術によって進化を続けるSCiB™の将来展望についてご紹介しよう。

 

 

 

Related Contents